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28.責任をとれ(ナタニエル)

「そういえば、令嬢たちの様子がおかしい気がするんだが、知らないか?」


「……噂なら知っていますが」


「噂とは?」


「ナタニエル様のお気に入りだった子爵令嬢。

 身ごもったことが父親に知られて勘当されたそうですよ」


「勘当?」


「はい。すぐさま王都の外れの修道院に入れられたとかで。

 それを聞いた令嬢たちは同情していたようです」


「そういうことか」


あれからレイラを見なくなったと思ったが、

父親には認めてもらえなかったのか。


「……ナタニエル様、どうして側妃にしてやらなかったんです?」


「あいつは子爵令嬢だろう。高位貴族でなければ側妃にもできないぞ」


「なら、どうして身ごもらせたんです?

 ちゃんと避妊すればよかったじゃないですか」


「そんなの向こうが当然していると思ってたんだよ。

 子ができたって王族として認められないのに欲しがるわけないと思っていた。

 だが、側妃にもなれないことを知らなかったらしい」


「はぁぁ。まぁ、子ができれば愛情ももらえるのではないかと、

 普通ならそう思ってつきあっていたんでしょうね。

 特例で王族として認めてあげたらいいじゃないですか」


「国王になれないとわかっているのに王族にしておくのか?

 自分より後から生まれた弟が王太子になるのを黙って見ていろと?

 そんな惨めな思いをするなら、最初から王族になんてならないほうがいい」


「……王族の血を引く子なのに、平民になるのはみじめじゃないんですかね」


「王族ではない者に、この思いはわからないだろうな」


そういえばこいつも真面目だけがとりえのような奴で、

いつもリンネアを庇うような発言をしていた。

だが、これではまるで俺を批判しているように聞こえて腹立たしい。


「では、誰を妃にするのですか?」


「リンネアが戻って来る予定だが……戻ってこない場合は、

 バランド公爵家の末娘になるだろうな」


「バランド公爵家……?ああ、まだ五歳くらいの」


「成長するまで待たなきゃいけないのがつらいところだ。

 まぁ、他に側妃を持てばいいのだがな」


「そうですね……」


本当にリンネアが戻ってこなかった場合を考えて、

バランド公爵家に打診しておくべきだろうか。


いや、まだ五歳なんだ。

リンネアが戻ってこないと確定した後でも間に合う。


そう思っていた十日後。


父上に謁見室に来るように呼び出されたと思えば、

バランド公爵家の末娘が婚約したと知らされた。


「どういうことですか!?」


「……お前が見限られたということだ。

 バランド公爵家の末娘はセレスタンかクリストフに嫁ぐことが決まった」


「は?……なぜ?」


側妃が産んだ第二王子と第三王子の名前をあげられ、理解できない。

まだ七歳と四歳の王子に婚約者が必要なわけがない。


「まだわからないのか?三公爵家が話し合ってそう決めたんだ。

 お前、オードラン家とドノン家に脅しをかけたな?」


「それは!呼び出しに応じないから制裁をと!」


「その前にダニエル夫妻に別れるように命じたそうじゃないか。

 お前にそんな権限を与えたことはないはずだが」


「……いえ、それは……」


アンジェラの策でと言えば、それ以上怒られるだけだと思い黙る。


「お前のせいで私が三公爵家から責められたじゃないか!

 次の王太子はセレスタンとクリストフの成長を待って、

 できのいいほうを選びバランド公爵家の末娘と婚約させる!」


「待ってください!それでは俺はどうなるんですか!」


「あと三年。それまでの間に三公爵家を納得させなければ交代だ。

 王太子でなくなった後は、婿入り先は自分で探すように」


「婿入り先?そんなところあるわけが……。

 それにリンネアはきっと戻ってきます!」


「そんなわけはないだろう。お前のせいでオードラン家が……」


「他にも何かあったのですか?」


「……出ていけ。今は顔も見たくない」


拒絶するような父上に、仕方なく謁見室から出る。

近衛騎士たちにも聞こえていたのか、そっと視線を外される。


部屋に戻ったら、何も知らないアンジェラがのんきな声を出した。


「お父様の用事はなんだったの?」


「……なんでもない」


「なんでもないって、お兄様の顔色悪いわよ?」


「……少し一人になりたい。出て行ってくれ」


「……変なお兄様」


物分かりがいいアンジェラはすぐさま部屋から出て行った。


そうだ。アンジェラが悪いわけじゃない。

俺の命令に従わなかったダニエルが悪い。


そもそも、リンネアが戻って来ていれば、こんな問題は起きなかった。


まさか皇太子がリンネアを気に入るとは思わなかった。

あんな馬鹿真面目で他にとりえもないような女を気に入るとは。


冷酷王子だという評判だから、高位貴族令嬢なら誰でも良かったのかもしれない。


俺の相手は誰でもいいわけではないというのに。

リンネアもバランド公爵家の末娘も奪われてしまった以上、

あらたにこの国で相手を探すことは無理だ。


「どこで間違ってしまったんだ。リンネアを行かせなければよかったのか?

 いや、皇太子がアンジェラを素直に受け入れていればよかった。

 こうなったのは全部皇太子のせいだ……」


皇太子が予定通りアンジェラを娶っていれば、こんなことにはならなかった。

そうすればリンネアがいなくなることも、俺が父上に叱られることもなかった。


このままでは俺は王太子でいられなくなってしまう。

この責任は皇太子に取らせなくてはならない。


俺は書簡を用意して、帝国まで使者を送ることにした。






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