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22.ディアナ様からの呼び出し

「リンネア!!」


「は、はい!?」


「絶対にありえないから!」


「はい?」


急に何を言い出すのかと思えば、後からマッケート様も駆け込んできた。


「マティアス、落ち着け!」


「いや、でも」


「リンネア嬢、悪かったな。驚いただろう」


「あ、はい。どうしたんですか?お二人とも」


「護衛騎士から報告を受けてすぐにマティアスが飛び出して行ったんだ」


「まぁ」


リーアとラランは報告すると思っていたけれど、そのせいで?


「リンネアが誤解したら困ると思って……。

 側妃制度など採用する気はまったくないし、俺とサンドラが恋仲というのも嘘だ」


「あ、はい。アデリナ様からも話を聞いたのでそうかと思ってました」


「……誤解はしていない?」


「後でマティアス様に確認しようとは思っていました」


「そうか。誤解していないのならいいんだ。

 驚かせて悪かった」


「いえ、はっきりして良かったです。ありがとうございます」


正妃になる予定の私にとって、側妃がいるかどうかは重要な問題になる。

王宮内で妃の勢力争いが起きてしまえば、国が荒れる元になるからだ。


だから、晩餐の時にでも確認しておこうと考えていたのだが、

マティアス様が急いで駆け込んでくるほど重要だとは思っていなかった。


「リンネア嬢、マティアス、サンドラが悪かったな。

 おそらく俺の母と叔母が暴走した結果だと思う。

 叔父上はまともなんだ。聞いたらサンドラを叱るだろう」


「マッケート様は従姉妹ですものね」


「ああ、小さい時は遊んでやるのも年上の責任だと思ったんだがな。

 母上たちが何か企んでいると気づいてから遊ぶのをやめたんだ。

 マティアスはもう八年以上会っていないはずだ」


「ああ、俺が学園に入学してから会っていないからそのくらいになる。

 まさかそんなことを考えているとは思わなかった。

 フレゴリ公爵には俺から注意しておく。

 夜会でおかしなことを言われたら取り返しがつかないから」


「そうですね、それがいいと思います。

 夜会には各国から使者が来るでしょうし」


婚約のお披露目の夜会で側妃のことなど出されたら、

他の国も黙っていないだろう。


正妃になれば税が二十年免除される。

側妃も同じ条件かもしれないと思えば狙う国は出て来る。


「騒がせて悪かったよ。ほら、マティアス戻ろう。

 急に出てきたからアランとケニーもびっくりしているはずだ」


「だが……」


「後でゆっくり話せばいいだろう」


「わかった……では、リンネア、また後で」


「はい。お仕事頑張ってくださいませ」


「ああ」


飛び込んできた時は、いつも優しいマティアス様がめずらしく怖い顔をしていた。

戻る時に軽く手を振って見送ったら、ほっとしたように笑ってくれた。


もしかして私のことを心配して来てくれたのだろうか。

そんな風に思いあがりそうで、もっとしっかりしなきゃと思い直す。




次の日、サンドラ様たちに何か言われるかと思っていたけれど、

二人は私を無視することに決めたようだ。


だが、アデリナ様がいるので二人と話さなくても問題はない。


むしろアデリナ様と二人でいるのが心地よくて、

このままのほうがいいのではないかと思うほどだった。




そんな風に過ごしているうちに一か月が過ぎたが、

気になっているのはエルドレドから返事が来ないことだった。


お父様宛に事情を説明する手紙を送ったのは三週間前。

もうとっくに返事が来てもいい頃なのに。


もしかしてエルドレドで何か起きたのだろうか。

そんな不安があっても、誰に聞けばいいのかわからない。


こんなことで忙しいマティアス様の手をわずらわせていいのかと思うと、

確認してもらうこともできなかった。


そんなある日、私宛の手紙を届けに本宮から女官が来た。


差出人はポスニルアの王族ディアナ様だった。

ゆっくり話したいと書かれたそれは、お茶会の招待状のようだ。


その場で返事はできず、とりあえず女官には本宮に戻ってもらう。

他の侍女がいない時を見計らって、カルラに相談することにした。


「ねぇ、カルラ。どう思う?」


「会いに行く必要なんてないと思うわよ」


「会う必要はないんだけど、気になるじゃない。

 国に帰れないって言ってたのも聞いてみたいし」


「でも、本宮に行くなんて。私がついていけないじゃない!」


「カルラは連れて行けないけど、だからといって東の宮に呼ぶのは難しいわ。

 ほら、ディアナ様は正妃様がマティアス様の婚約者にしたがっていた人だし、

 まだ側妃になるかもしれないという噂が消えていないのよね」


東の宮にディアナ様が出入りしていた、なんて噂になってしまえば、

側妃にするつもりなのだろうと思う貴族が出て来るかもしれない。


もしかしてそれが狙いなのかもと思ったけれど、

あの日会った印象はそのような企みをするような人には見えなかった。


「本宮に行ってみるわ」


「えぇ……行くなら皇太子殿下に許可取らないと」


「そうね。お願いしてみる」


その日の晩餐の時に言い出してみると、マティアス様の表情が曇る。


「ディアナとお茶会か……行きたいのだろうか?」


「はい。皇太子妃になれば各国の王族ともつきあっていかなくてはなりません。

 まずはディアナ様と仲良くなれたらと考えています」


「そうか……そうだよな。皇太子妃になればそれも必要になるか」


前回のことがあるから断られるかもと覚悟したけれど、

マティアス様は少し悩んだ後でうなずいた。


「わかった。行ってもいいよ。だけど、護衛騎士の二人だけじゃなく、

 マリアも連れて行ってくれ」


「マリアも連れて行っていいのですか?」


「リンネアにはまだ専属侍女がいないだろう。

 お茶会に行くのに侍女の一人もいないのはおかしいんじゃないか?」


「そうですね……ありがとうございます」


エルドレドにいた時はカルラを連れて行けない時も多かった。


私の味方を一人でも減らしたかったのかもしれないけれど、

ナタニエル様もアンジェラ様も許可してくれなかったからだ。


ここでは当たり前のように侍女を連れていける。

マリアがいてくれることが心強くて、マティアス様に礼を言う。


その次の日にディアナ様に返事を出すと、お茶会の日時は三日後に決まった。


その日はカルラを中心に朝から磨かれ、お茶会用の新品のドレスに着替える。

東の宮に来てから身体も髪も肌もしっかり手入れしてもらえるからか、

こんな私でも少しは綺麗に見えるようになった気がする。


「それじゃあ、行って来るわね」



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