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20.お茶会

二人で座って話をしていると、残りの二人が遅れてやってきた。


すらりと背の高い赤茶色の髪の令嬢が私たちを見てにやりと笑う。


アデリナ様は席を立って二人を迎え入れた。

どうやらアデリナ様のほうが身分が下のようだ。


だが、私が席を立つわけにはいかない。

それを見て、赤茶色の髪の令嬢は笑顔を消した。


「お待たせしたかしら」


「いえ……」


「そうね、もう時間は過ぎているようね」


アデリナ様が否定しようとしたのをさえぎり、本当のことを言う。


本来ならば、私が話しかけるまで礼をしてその場で待つのが礼儀だ。

なのに、この令嬢たちは礼をしないばかりか、先に話し出した。


こういうことを最初に許してしまうと、それでいいのだと思われてしまう。

嫌われてしまうかもしれないけれど、どちらにせよもう嫌われているような気がする。


私の態度に腹を立てたのは赤茶色の髪の令嬢ではなく、

その隣にいたこげ茶色の髪の令嬢だった。


「あなた、その態度は失礼じゃない?この方はフレゴリ公爵家のサンドラ様よ!」


「セシリア様!?」


「な、なによ……」


「もしや、知らなかったのですか?リンネア様は皇太子殿下の婚約者ですよ?」


「え?こ、婚約者??そ、そんな」


こげ茶色の髪の令嬢はセシリア様、赤茶色の髪の令嬢はサンドラ様というのか。


どうやらセシリア様は私のことを知らなかったらしい。

アデリナ様に言われて動揺しているのがわかる。


だが、サンドラ様は知っていたと思う。

何か含みがありそうな笑みを浮かべ、それでも私へ礼をすることはなかった。


「まぁ、アデリナ様ったら怖い顔。

 それほど待たせてしまったのかしら?ごめんなさいね。

 さぁ、セシリア様、座りましょう?」


「え、ええ」


ここでそれ以上もめるのもよくないかと何も言わずにいたら、二人は席についた。

控えていた者がお茶を配りだしたが、私のお茶は別にリーアが淹れたものだ。


リーアは私の目の前にお茶を置くと、壁際に控えた。

その隣にはラランも立って警備している。


「それでは、あらためまして。

 編入してきたリンネアよ。エルドレドのオードラン公爵家長女です。

 これから一年、よろしくね」


「フレゴリ公爵家のサンドラですわ」


「ガッダ侯爵家のセシリアです。

 よ、よろしくお願いいたします」


「私は先ほどもご挨拶させていただきましたが、

 ジルロン侯爵家のアデリナです。

 リンネア様にお会いできて光栄です」


にっこり笑ってくれるのはアデリナ様だけ。


サンドラ様は微笑んでいるけれど、目が笑っていない。

……こんな表情は、どこかで見た覚えが……。


ああ、そうだ。

エルドレドの学園でナタニエル様のお気にいりだった子爵家の令嬢がこんな目をしていた。


子爵家の令嬢では正妃はおろか、側妃にすらなれないというのに、

ナタニエル様の婚約者である私に敵対してどうするのだろうと不思議に思っていた。


エルドレドでのできごとを懐かしく思っていたら、

サンドラ様がおもむろに口を開いた。


「リンネア様にはお会いしたいと思っていましたの。

 マティアス様の婚約者になったのがリンネア様でよかったですわ」


「あら、どうしてかしら?」


「エルドレドでは側妃制度があるそうですね?」


「ええ、あるわ」


帝国にはない側妃制度だが、属国の五国のうち四国は側妃制度がある。

なので、それほどめずらしい制度ではない。


「側妃制度がある国で生まれ育ったのなら、

 側妃を持つことにも寛容なのでしょう?」


「寛容というか、必要な時もあると理解しているわね」


エルドレドの国王が側妃を娶ったのは、

ナタニエル様とアンジェラ様の産みの母である正妃が亡くなったからだ。


国王には姉君しかなく、王子はナタニエル様のみ。

それではナタニエル様に何かあった時に困ると、側妃を娶ることになった。


側妃様はその後、第二王子と第三王子を産んでいるが、

ナタニエル様とアンジェラ様に遠慮して公の場には姿を現さない。


王家の血を継ぐためだけの結婚。

それが本当にいいことなのかは少し疑問ではある。


サンドラ様が何を言いたいのかと思っていたら、

隣でセシリア様がはしゃいだように喜んでいる。


「まぁ、よかったですね、サンドラ様!

 では、皇太子殿下が側妃を娶っても問題はないのでしょう?」


「マティアス様が側妃を?」


そんな話は聞いていないけれど、どういうことだろう?

アデリナ様を見れば同じように怪訝そうな顔をしている。


「そのままの意味よ」


「マティアス様が側妃を娶るという話があるというの?」


「ええ、現に正妃様はマティアス様の側妃にするためにポスニルアの王族を呼んだとか」


「それは……」


おそらくそれは誤解だと思ったけれど、

正妃様はまだあきらめていないかもしれないと思い直した。


私がマティアス様と正式に婚約してしまったから、

正妃ではなく側妃にしようと考えていてもおかしくない。


「ですが、私はせめて側妃は帝国の令嬢にするべきだと思うの

 正妃だけでなく、側妃まで他国の者を選ぶなど、マティアス様が可哀想ですわ」


「可哀想とは?」


「だって、好きな令嬢を娶れないのは可哀想でしょう?

 皇帝はこの世界で一番の権力者なのに、好きな女も手に入れられないなんて」


「……?」


言っている意味がわからなくてアデリナ様を見てしまうが、

アデリナ様もわからないのか首をかしげている。


サンドラ様に確認しようと口を開きかけたら、

その前にセシリア様が説明してくれた。


「サンドラ様は皇太子殿下と幼いころから想い合っているのです!

 ですが、正妃は他国のものでなくてはならないという決まりのせいで、

 婚約者に選ぶことができなかっただけで!」


「まぁ……」



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