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17.ポスニルアの王族

「私だって、その娘が悪いのではないとわかっています!

 ですが、あんな王女を妃にするくらいならディアナのほうがいいと、

 期待してしまった私が悪いって言うのですか!」


「そんなことはありえないと俺ははっきり言いましたよね?

 母上が勝手に暴走していただけです」


「暴走だなんて!ひどいわ!」


ディアナ様……ああ、正妃様の姪だという。

もう一人の婚約者候補という噂は正妃様のせいなのね。


アンジェラ様の評判の悪さを考えたら、

可愛い姪を息子の妃にしたいと願っても仕方ないとも思うけれど。


マティアス様はおそらく何度も断っているのだろう。

うんざりしたように大きくため息をついた。


「もうその話は二度としないでください。

 こうしてリンネアに正式に決まったのですから、

 ポスニルアの王族はすぐさま帰してください。

 王女はともかく、王太子がいつまでも国を空けていてはまずいでしょう」


「……あの子たちは国に帰れない理由があるのよ」


「そう言っても、ずっとここにいさせるわけにもいきませんよ。

 国を放棄するつもりなのかと思われます」


「……それは、そうだけど」


ふぅと皇帝陛下とマティアス様が同時にため息をついた。


マティアス様の顔立ちは正妃様に似たようだけど、

性格は皇帝陛下に似たようだ。


聞き分けのない正妃様に止めるように、皇帝陛下は無理やり会話を終わらせた。


「まぁ、正式に婚約したのはめでたいことだ。

 お披露目の夜会を開くことを貴族たちに通達させよう。

 ああ、リンネアは学園に編入させるのだろう?」


「はい。学園が始まれば」


「そうか。せっかくの機会だ。学園生活を楽しむといい」


「はい、ありがとうございます」


「うんうん。まだここの生活に慣れていないだろうから、

 慣れたらまたゆっくりと話を聞かせてくれ」


「はい」


これで謁見は終わりなのか、マティアス様に手を引かれて退室する。


中途半端な体勢のまま礼をして去ろうとすると、

皇帝陛下はにこやかに手を振って見送ってくれた。


最後まで不機嫌そうだった正妃様は気になるけれど。




謁見室からまた東の宮に戻ろうとすると、

廊下に騎士ではない男性がいるのが見えた。


貴族服を着ている令息のようだが、黒髪に黒目。


騎士たちに紛れていると、少年のように見えるけれど、

それは身体を鍛えていないからかもしれない。


あの方がポスニルアの王族だろうか。

私たちに気づくと、すぐに駆け寄って来る。


「マティアス殿下!」


「どうしてこんな場所にいるんだ?客室は方向が反対だろう」


「今日、謁見すると聞いて会いに来たんだ。

 その娘がマティアス殿下の婚約者候補か?」


私の方へ声をかけられたのに、マティアス様がさっと背に隠す。


「少しくらい話をさせてくれてもいいだろう」


「用があるのなら、このままで言え」


「わかった。じゃあ、途中で止めるなよ?」


「言うだけなら許してやろう」


ずいぶんとマティアス様に気安く話すのだなと思ったけれど、

考えてみれば二人は従兄弟になる。


それなりに昔から関わることがあったのかもしれない。


「なぁ、本当は婚約者候補は別の者だったのだろう?

 王女が婚約者候補だったのに逃げ出したと聞いた。

 お前は身代わりになっただけなんじゃないか?」


「……」


肯定しにくいことを聞いてくる。

ここでそうだと言ってしまえば、アンジェラ様の失態を認めることになる。


帝国へは謝罪したけれど、他国に知られて良いことではない。

どうしたものかと思っていたら、返事を待たずに話は続いた。


「お前は公爵令嬢だと聞いた。しかも王太子妃になる予定だったと。

 自国に帰りたいと思っているのではないか?

 もしそうならば、ディアナがその代わりを果たそう」


「え?」


「もし、もう自国に居場所がないというのであれば、

 ポスニルアの王太子妃として迎え入れてやってもいい」


「……何を言っているのですか?」


「公爵令嬢のお前では皇太子妃の重圧に耐えきれないだろうと言っているのだ」


見れば、まっすぐに私を見つめている。

悪意はなく、本気で申し出ているらしい。


「それは……ずいぶんと失礼なことを言っていると理解していますか?」


「え?」


「たとえ、私の身分が公爵令嬢だとしても、

 他国の王族から見下されるいわれはありません。

 そして、その申し出はエルドレドを侮辱していると気づいてますか?」


「いや……侮辱だなど」


「エルドレドの公爵令嬢では皇帝の正妃にはなれないだろう、

 そう侮辱しているのです。

 私はエルドレドから推薦を受けてここに来ています。

 国を代表して来ているということです。それを否定しますか?」


「……そんなつもりではなかったのだが。身代わりでは大変だと……」


私がはっきりと言い返したからか、小声で言い訳を始めた。


顔立ちだけならマティアス様に似ているけれど、

性格などは似ていないらしい。


何も考えずにこんな申し出をしたのだろうか。

ここが公式の場なら大きな問題となっていただろうに。


ふと、すぐ近くから威圧のようなものを感じた。

見たこともないほど怖い表情をしたマティアス様が口を開く。


「アーロン、お前は勘違いしている」






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