禿げしい妄想
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やぁー!
掛け声と共に竹刀がパンパンと、乾いた音を立てている。
高校の剣道部ともなれば、日常の稽古でさえ力強く、そこらじゅうで踏み込むたびにドンと重い足音も聞こえている。
「ありがとうございました」
集合し正座のまま黙祷をささげ、頭を下げたら、今日の稽古は終了だ。
誠は、自分の防具の元へ行き、正座をして防具を順番に整えていたら、友人の正道は、疲れた顔をして自分の頭を撫でながらやってきた。
「なんだよ、今日は随分疲れてるな?」
いつもは元気な奴なのに、何だか今日は凹んでいる。
「そう見えるなら、そうなんだろうな……」
正道は投げやりな感じで、誠の隣でドカッと胡坐をかくと
「はあぁー」
あからさまに大きなため息をついた。
「おい、本当にどうしたんだ? 後で聞くから、一旦帰る支度するぞ」
試合ですら、こんなに落ち込んでいる姿を見てこなかったので、誠はちょっと心配になり、ちゃんと話を聞こうと思った。
「「ありがとうございました」」
荷物をかたづけた後は、二人で先生に挨拶をし、少し暗くなってきた道を並んで歩き、駅に向かう途中のコンビニに立ち寄ると、二人ともコーラを買う。
口数も少なく、正道の頭の中は、悩みに支配されているように見えた。
「ベンチに座るか?」
コンビニの斜向かいに、ベンチのある公園がある。今の時間は人がいないようなので、話を聞くのにちょうど良さそうだ。
「……ああ」
消え入りそうな声で返事をすると、正道はベンチに腰かけた。誠が話しかけると同時に、正道も同時に言葉を吐き出した。
「おい、本当にどうしたんだよ?」
「俺、剣道、辞めるかもしれない」
え? どうして……? あんなにも毎日頑張っているのに……
誠は、正道の気持ちが理解出来なかった。
「何でだよ? 怪我か病気か?」
誠は慌てて理由を尋ねた。
正道は、ゆっくり首を横に振っている。
「怖いんだ……」
正道は両手で頭を抱え、絞り出すように誠に伝えてきた。
「怖い? いったい何が怖いんだ?」
幼少期から剣道を続けているのに、今更怖いってどうしてだ?
誠は、納得出来なくて理由を尋ねた。
「絶対笑うなよ? ……今日、彼女が友達たちと『正道って、将来禿げそうだよね』って話していたんだ……」
正道は、声を震わせながら独白を続ける。
「『剣道って頭蒸れるしヤバそう』だって」
正道は、恐ろしいものに出会ったかのようにブルブルと震えて、両手を合わせた。
「最初は気にしていなかったんだ。でも今日の練習中にぼんやりして、手ぬぐい巻いたら、途中で外れて……」
正道は、手をギュッと握り締めている。
「ああ、だから、珍しく途中で直したんだな」
誠は、理由がくだらないと感じてしまい、少し気が抜けたが、正道はまだ話している。
「その時、頭のてっぺんが面に擦れて……急に不安になったんだ」
そう言って正道は、自分の頭を撫でている。
「……正道ごめん」
誠は一言謝ると、我慢出来ずに
爆笑した
「おい、笑わないって約束じゃないのか? 俺は真剣なんだぞ!」
誠の肩を掴んで、ゆすってくるが、正道が真剣であれば真剣であるほど、誠は笑いがこみあげてくる。
「あは、だからごめんって、でも、笑わないのは無理だ。正道も逆の立場で考えてみろよ!」
正道は、誠から手を放し、少し考えるそぶりをした。
「大事かと思って真剣に心配していたら、まだふさふさの友人が、禿げることに対して真剣に悩んでんだぞ? 笑わないとか、無理くね?」
誠は、自分の気持ちも追加で説明してみた。
「ふふ、ふふふ、ご、ごめん誠の禿げた姿想像したら……ふふふ、あはは!」
こいつ……まあ元気になったならいいや。
正道も笑い出したので、誠はほっとして、肩の力を抜いた。
「正道、お前、いい性格してるよな。もう大丈夫だな?」
誠は、心配して損した気分になった。
「でもさ、俺、マジで禿げたくないんだよ」
正道は、まだ頭が気になるのか触っている。
「わざわざ禿げたい奴なんて、いないだろ?」
大人にならなきゃわからねえよ……ん? そういえば?
誠は、ふと何かを思い出した。
「あぁ、侍はうらやましいよなぁ。だって禿げても分からないだろう?」
そうだ、侍って……
誠は、記憶の中にある昔話を思い出した。
「正道、俺、前に侍はどうして剃るのか、母ちゃんから聞いたんだけどさ……」
諸説あるけど、真実はきっと——
誠は、昔話を政道に話し始めた。
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