第9話 心通わせて
『気合い入れて行くんだよ〜!!!!それじゃあ特別マッチ、試合始め!!』
開始のゴングが鳴り響き、それと同時にキングゴーレムは動き出す。敵を威久とチリエッタの2人と認識し、殴りかかる。動きが遅い為、簡単に避ける。
予備動作も遅いし、殴った後の隙も大きい。攻撃を貰わなければ全然行ける!!それにチリエッタもいるし大丈夫だね!!
「威久さん!!攻撃を合わせてください!!【風の矢】」
風を纏った弓矢が放たれ、キングゴーレムに直撃する。それに合わせて威久も足の部位を斬りつける。が、全く刃が通らない。
「かった!?なんで通んないの!?」
武器の説明では相手の防御力が高ければ高いほど切れ味や攻撃力が上がるって書いてあったのに!!
その瞬間、ガリアに言われたある事を思い出す。
『その刀はナマクラ以下になるよ。木の枝すら切らないポンコツ。逆に気に入られれば一振りで山すら斬れる』
「あの言葉が本当だったら……」
「虎徹はまだいぐの事を認めていない……か」
(やはり試し斬りをさせてから次の試練に行かせた方が良かったかもしれんな……)
だか不思議とまずいと思わない。ガリアの頭の中には何処かで威久ならどうにかするだろうと考えがある。だからまずいとも思わない。むしろどう切り抜けるかワクワクしているまである。
「ソイツを倒すにはまず虎徹に認められる必要があるぞ。どうするいぐ?」
「やばいやばいやばい!!!!斬れないと話になんないじゃん!!」
キングゴーレムの攻撃を避けながら反撃をしているがことごとく弾かれてしまう。刃が通らない現状、まともに戦えるのはチリエッタのみ。だか魔法を使う関係上MPにも限りはある。
「自動回復もついてるからまともなダメージも入らない……これじゃあイタチごっこですね」
「どうしよう全然斬れない!!何か作戦はないの!?」
「パリィをしてください!!ダメージ倍率も上がるので勝つにはパリィをし続けるしか無いです!!私の矢とMPにも限界がありますので!!」
「そう言われてもタイミングがわかんないよ!!」
「攻撃が遅いから大丈夫ですって!!一回直で殴られてください!!フォローはいつでも出来ますから!!」
「そんな事を言われても……」
「つべこべ言うな!!このまま負けてデスペナ食らっても良いんですか!?私はごめんですよ!!ステータス盛り直すのどんだけ時間掛かると思ってんすか!!」
「わかったよ!!やりますよ!!失敗しても責任押し付けないでよね!?」
威久は逃げるのを辞め、キングゴーレムの前に仁王立ちする。正直出来るか分からないが覚悟を決める。このまま逃げ続けても絶対に勝てない。チリエッタも言ってた。パリィは攻撃の起点にもなるって。大きく深呼吸をし、刀を構える。
この時、隣に鏡花がいたらどんな言葉を掛けてくれるかな?いや、隣に鏡花はいない。いつまでも隣にいる事を考えるな!!今度は私が鏡花に背中を見せる番だ!!
「いつでもかかってこい!!」
キングゴーレムは大きく拳を振り上げ、威久に目掛けて振り下ろす。その拳を先程の攻撃とは比べのもにならないぐらい早かった。
たとえゲームであってもこの圧力は怖い。今だって足は震えてる。それでもやらないと行けない!!だから!!
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
刀でしっかりと拳を受け止める。が、勢いが止まらずそのまま押し切られそうになる。しっかりと踏み込め!!このままじゃ殴り飛ばされる!!弾け!!弾けよ!!
「そのまま踏み込んで!!上に思いっきり弾いてください!!」
「こ〜〜〜!!れ〜〜〜!!がぁ〜〜〜!!パリィ!!!!」
脚をしっかりと踏み込め、キングゴーレムの拳を思い切り上に弾く。出来た!!これがパリィ!!
その瞬間、何処からか心臓が鼓動する。え?何か聴こえたんだけど?
「よくやりましたよ!!スイッチします!!これで少しぐらいはダメージ貰ってくださいよ!?【豪雷の矢・3連】」
稲妻の矢が3本放たれ、キングゴーレムの腕、胸、顔に直撃する。体勢がヨロけた後の攻撃のためかさっきよりもダメージが通っている気がした。
が、すぐに体勢を持ち直しそのままチリエッタに攻撃を行う。間一髪で避けるが傷もすぐに治っていく。
「割とそこそこいい攻撃したんですけど……これじゃあ凹みますよ」
「ごめんなさい!!私も追撃しないといけなかったのに動けなかった!!」
「いや、それはシステム上おかしくは無いので大丈夫ですよ。ただやっぱり自動回復が厄介ですね。長期戦は避けたいのですが……」
「ごめん、私が弱いばっかりに……」
「とんでもない!!そもそも初心者をこんな場所に飛ばす運営の所為ですから!!ただ、ある程度のデスペナは覚悟しといてくださいね。多分、私達負けると思うので」
「だよね。でも足掻けるだけ足掻いては見るよ。もう、誰かの背中は見るつもりもないし!!」
「……さっきまでの弱腰とは見違えましたよ。正直驚きです。さっきまでの貴方だったら負けても仕方ないと思いましたけど、今の貴方ならこの状況もどうにかできそうですね!!」
「じゃあ作戦はどうする?」
「そんなもん、決まってんですよ。こっちが限界になるまでパリィしまくって攻撃するんですよ!!」
「乗った!!って私がずっとパリィし続けるの!?」
チリエッタ曰く、私がパリィし続ける限り攻撃は必ず通るのでHPとMPが続く限り、パリィをし続ける作戦らしい。私の負担デカくない?
「ほら、来るよパリィして!!」
「はい!!」
攻撃を弾き、その隙にチリエッタが前に出て攻撃を放つ。
「スイッチ!!【風の矢】」
ダメージはあるものの回復がすぐに追い付いてしまうため、また1からやり直しだ。
何処かで必ず崩れるはず!!そんな事を思いながら威久はひたすらにパリィを続ける。がそんな攻防もすぐに終わりを迎える。
チリエッタのMPが無くなってしまったのだ。攻撃手段である矢も残り少なく、これが無くなってしまえばもう威久達に攻撃する手段はもう残っていない。
キングゴーレムはピンピンしており、会場もほぼ諦めムードになっていた。最初はあれだけ観戦盛り上がっていたのに。勝てないとわかった瞬間にこれだ。本当嫌になる。
「虎徹抜きでここまでよくやれたな。面白くはあったぞいぐ、チリエッタ門下生」
「一応、最後まで描いてみましたが……これまで見たいですね。あれはレイドクラスのボスですよほんと」
「ですね……」
私がこの武器をちゃんと扱えていたらきっとチリエッタの負担はもっと軽かったはず。もう鏡花に遅れを取らないって意気込んでこれだよ。つくづく自分が嫌いになる。せめて、一矢報いたい。金童子やガリア達に目に物を見せたい!!
「私、最後まで戦ってみます。やれるだけやってからデスペナを貰います!!」
「じゃあ私は応援してますから。思う存分に挑んでください。一緒にレベリング付き合いますから」
「ありがとうございます!!」
それだけを言い残し、威久はキングゴーレムの元まで走り出す。勝ち目はゼロに近い。だけどこのまま負けるのだけは絶対に嫌だ。
走ってくる威久に狙いを合わせ、キングゴーレムは渾身の一撃を放つ。きっとあのゴーレムもこの攻撃で終わらせるつもりだろう。だったら勝負だ!!
渾身の攻撃を刀で受け止める。さっきまでとは違う確実に殺す為の拳。勢いが全然止まらない。威力も殺し斬れない。
「ま〜〜〜!!け〜〜〜!!る〜〜〜!!かぁ〜〜〜!!!!」
こんな時でも虎徹はうんとも寸とも言わない。お願いだからさ、一度でいいから……一度でも良いから私に力を貸せよ!!せっかく強い武器なのにいつまでも燻ってんなよ!!このポンコツ鈍刀!!
「あんたと共に生きてやるからいい加減に私を認めろよ!!!!」
『言ったわね?』
「は?」
その瞬間、また心臓の鼓動が聴こえた。それも一回でもない。何度も何度も何度も何度も聴こえてくる。これはゲームのはずなのになんで?
『その言葉に嘘偽りがないわよね?』
「え?誰!?誰!?」
周りには人はいない。だけど声だけは聴こえる。女の人の声だ。何処から聴こえてくるんだろう?
『誰って……私は虎徹。貴方が力を貸せって言うからこうやって出てきたんじゃない?』
「虎徹!?」
あまりの事に衝撃が隠せない。虎徹って言うし出てくるとしてももっとごっつい漢って感じの声をイメージしてたけどこんなセクシーな感じの声なの虎徹って!?
『まあなんでも良いけどさ、さっきの言葉には嘘偽りは無いのよね?』
「さっきのって……」
『共に生きるってことよ!!あれ、本当なんでしょうね?あの鬼のクソガキみたいに私を簡単に捨てたりしないわよね?』
「しないと思います……だって貴方結構強い性能らしいので」
『まあ、貴方みたいな子は割と初めてだし、本当だったらかっこいい殿方に使って欲しいけど……貴方よく見ると可愛い顔してるから特別に力を貸してあげるわ〜』
「本当!?じゃああのゴーレムにも勝てるの!?」
『いや、それは無理ね。私が強くても貴方自身が弱すぎるから』
突然ナイフを刺された。いや本当の事なんだけどそんなにガッツリと言わなくても良くない?
「じゃあ力貸す以前じゃん……」
『冗談よ。力を貸すって何も私の性能を解放するだけじゃないのよ?』
「それ以外にもあるの?」
『そりゃあ勿論あるわよ。今回はその1つを貴方に貸してあげるわ。私が知ってる中でのお気に入りの剣術流派【独我一刀流】よ』
「独我……一刀流!!」
『これと私を使ってあんな雑魚を倒しなさい。出来なかったらもう2度と貴方に力は貸さないわよ〜』
【スキル取得しました。【独我一刀流】それに伴い【武士の心得】のレベルが上がりました】
システムの音声が流れ、急に力が漲る。その瞬間、声は消え止まっていた時が動き始める。
さっきまでなら吹っ飛ばされる拳も簡単に弾けるようになった。これが虎徹本来の力!!
「これなら行ける!!」
まずは動きを止めるために足を斬る!!
地面を思い切り蹴り飛ばし、一気にキングゴーレムの足元まで辿り着く。そしてそのまま力任せにキングゴーレムの足を斬る。さっきまでなら簡単に弾かれていただろうが今回は違う。豆腐のように簡単に斬れてしまった。
この光景に誰しもが驚きの声を上げ、会場が一気に盛り上がる。
「何したんですか威久さん!?もしかしてこれが虎徹本来の力ですか!?」
「それでこそいぐだ!!番狂せだな!!」
「むきゅむきゅ!!」
「次はその腕を貰うかな!!独我一刀流壱ノ型『時雨』」
刀を鞘にしまった瞬間、キングゴーレムの腕を一瞬にしてバラバラに切り裂く。正直、3枚に下ろそうかなって感じでやったけどこれはやりすぎた。初めて使う技だから全く加減とかがわからない。
「あれは今はなき流派の独我一刀流!?いぐ……そこまで虎徹と心を通わせたのか」
「よし、最後は真っ二つにして綺麗に終わらせてようかな!!独我一刀流弍ノ型『昇』」
鞘から刀を抜き、その勢いのまま刀を振り上げる。その数秒後にはキングゴーレムが綺麗に真っ二つになりそのまま機能を停止する。終わった?
「勝っちゃいますかこれに……!!」
『やばっそこから勝つんだ……じゃなくて、勝者はいぐ&チリエッタ!!魔改造されたキングゴーレム倒すとかマジで激ヤバなんだけど!!!!』
一気に緊張感が抜け、威久はそのまま地面に倒れ込む。あそこから逆転するとは思ってもいなかった。流石はユニーク武器の虎徹……それにしても、何で虎徹の声が聞こえたんだろう?
最初の時は全く声など聞こえなかった筈なのに先程は虎徹の声が威久の頭の中を駆け巡りそして力となった。原理は分からないが、あれのおかげで勝てたのだから今はそう深く考えなくても良いかな。
「よくやったぞ!!チリエッタ門下生にいぐ!!実に興が乗る試合だったぞ」
いつの間にかリングの中に移動するガリア。全く移動した形跡も気配もない。いつもなら付き合っているのだが、今はそんな気分ではない。今はこんなにも疲れ切っているのだから。
「ありがとう。でもちょっと休ませて〜もう無理動けない〜」
「む?そうか……なら、これで少しは動くか?」
「!?」
異質な殺気と共に刃が威久の喉元まで迫る。ギリギリで起き上がり躱わす。が、そもそもガリアは先程から移動もしていなければ武器も持っていない。
あれは完全に殺気だけで威久を殺そうした。それにまんまと引っかかってしまった。
「いぐ、あの時の勝負がまだ着いておらんかったからなぁ〜今のいぐなら余を満足させてくれるじゃろ?」
「全く……勘弁してもらいたけどね!!」




