第7話 おさがり
「……持ってるか分かんない」
「いやアイテム欄の表示わかんないだけですよね?」
「いや、本当に持ってない!!けど!!万が一って事もあるから出し方だけ教えて貰えると助かります!!」
「やっぱり知らないんじゃないですか……簡単なので別に良いですけど。それじゃあ説明しますよ。これも本当はチュートリアルで習う筈ですけどね」
「面目ねぇ〜」
「まず、このゲームは基本的に手に持てるものはアイテムボックスに収納が可能です」
「手に持てるものって……土とかも行けるの?」
「はい。石から土、草から小枝まで。生き物以外は基本的にアイテムボックスに収納出来ます」
「それは便利。でも石とか小枝とか使うのかな?」
「意外とキャンプクエストとか日常系のクエストあるんで割と拾ったり使いますよ」
「なるほど〜じゃあ手頃な小石とか無いかな〜あ、あった」
「私も見つけました。では、【インポート】」
その言葉を放った瞬間チリエッタの手にあった小石が綺麗に消え去る。これはさっきチリエッタが言っていたアイテムボックスに移動したという事なのか。
続いて威久も同じ事を試してみる。
「【インポート】」
その瞬間、手に持っていた小石は見事に消える。消えたという事はアイテムボックスに移動出来たらしい。結構便利なシステムだね。
「そして移動させたアイテムを見る為には、ルックインって言うとアイテムボックスの中身が見れます」
「なるほど〜じゃあ【ルックイン】!!」
『アイテムボックス 収納数 4/9999
小石×1
帝国への入国証×1
アルノメトリアの聖典×1』
なんか変な物もあるけど……とりあえず帝国への入国証はあった。気になる物も中にはあるけどそれは後で聞いて見るか。
「見れたよ。後ついでに入国証もありました……」
「でしょうね。じゃあついでに取り出し方も教えときますよ。とりあえず小石を出しましょうか。小石の文字を選択して【エクスポート】」
そう言うとチリエッタの頭上から小石が落ちて来る。なるほどね。取り込む時はインポートで、取り出す時はエクスポートか。なんだかパソコンのシステムに似てるな。
「とまあ〜これがアイテムボックスの一通りの使い方です。チュートリアルをまともに聞かないタイプですか?」
「まあ人の説明はあまり聞かない方かな?」
「それじゃあ大半は聞いてない感じですね。まあ、必要な時は誰かに聞いてくださいよね。その場に私が居るとは限りませんし」
「本当に面目ねぇ〜あ、それはそうなんだけど……さっきアイテムボックスの中にアルノメトリアの聖典?ってやつがあったんだけどこれは何?入信した記憶無いけど」
「あ〜たまに起動時に所持してる人もいるらしいですね。元々アルノメトリアって女神様は魔法の始祖的な感じでそれ持ってる人は魔法使いの素質があるとかないとかって言われてますね」
「それは果たしてどっちなんだか……」
「まあガセとは言えないのがなんとも言えないんですよね。本当に魔法の基礎値が高い人もいれば、逆に魔法適性が全くなかったりと結構ばらつきあるんですよね」
「個人差が激しいと?」
「ぶっちゃけ運要素全開のゲームなんでみんな特に気にしてないですよそれ。だから売っても良いし、魔法適性があるなら持ってても損じゃ無いですよ?アイテムボックスに眠らせておくだけでも効果あるらしいですし」
それは初耳な情報。普通のゲームでは装備または持っていないと効果が発動しない事が多いが、このゲームに関しては少しだけシステムが違うのかな?
「普通の装備品とはまた違う感じなの?」
「神様の加護的な感じっすね。限られた装備枠ですし、ぶっちゃけそういう系のやつこのゲームにわんさかあるんで割と気にしなくて良いですよ。発動するかはさておきですが」
「するやつとしないやつあるんだ……」
「重複出来ないし、効果を打ち消しあったりするんで。割と考えられてますよねそこらへん」
確かに。ゲームの公平差を考えた時にアイツだけおかしいとか問題になってゲームの人口が減ってしまうと売り上げやサーバーの維持が難しくなってしまうしね。
そういった意味ではバランスは取れてる方なのか。まあボスの強さももう少しだけ優しくして貰えると嬉しいけどね。
「で、威久さんは何の武器を使うんですか?」
「武器?」
「当たり前じゃ無いですか。なかったら戦闘出来ませんよ?」
「そうか武器かぁ〜……」
よくよく考えてみたら私、武器何も持ってなかった!?
ガリアと戦ったあの時も刀を借りたぐらいでどんな武器を使うかは全く決めていない。
そもそもチュートリアル受けてないから武器とか貰ってないのに……まあ適当に答えて置こう。
「刀……とか?」
「珍しいですね刀使うって」
「珍しい?ゲームじゃ割と一般的な武器じゃないの?」
「あ〜この普通のゲームはそうですね。でも、このゲームは少し特殊で刀自体の当たり外れが凄いんですよ」
なんか業物とかあるんだっけ?ガリアもそんな事言ってた気がする。
「だからあまり使われないと?」
「まあ市販のでも使えなくは無いけどそれを使うぐらいならって感じです」
「なるほどね〜持ってないから参考になる」
「は?」
「ん?」
「持っていない?武器を?今はもしかして素手!?」
迫真の顔でチリエッタは威久に詰め寄る。まあ普通はそうなるよね。
泣き崩れるかの様にその場に倒れ、ブツブツと小言を言い放つ。
「あ〜またデスペナがぁ……今月のステータスカツカツなのにぃ……」
「なんかごめんなさい」
「ていうか、何で武器もってないのにこの場にいられるんですか?敵も結構強いですよここ?」
「ん〜なんというかその……人に連れて来られた?」
「初心者をここに連れて来る物好きいませんよ。誰ですかその人は」
「それは……」
「余が此処に連れて来たぞチリエッタ門下生」
「!?!?」
「あ、ガリア」
「よっす!精進しているかね?その感じだと良い感じに育ってて嬉しいぞぉ〜」
ニコニコしながら威久の肩を叩くが、その強さは尋常じゃなく強い。バシバシ叩かれて痛い。
それを横にチリエッタは凄くビビりながらガリアの方を見ている。普通のプレイヤーからしたらこういう感じなのかガリアの印象って。
チリエッタの怯えようからしてガリアは元々はこのエリアには絶対に出現しないボスモンスターの分類なのだろう。現に戦ったら絶対に負けてしまう。
「なんでここにいるの?試験は多分終わってないと思うけど?」
「あ、忘れておった。これを渡して置こうと思ってな。余が前まで使っていた刀だ。まあ刃こぼれがある程度だが、無いよりはマシの物じゃ」
「ありがとうガリア!!武器持ってなかったから助かったよ」
「だろうな。余と戦った時から持っておらんかったじゃろ?まあこの試練程度ならそれ1本あれば楽勝だ。それじゃあ余は残りの仕事を片付けて来るからそれまでにはクリアしろよ〜」
そう言ってガリアは手を振りながら奥底のジャングルへと消えていく。正直武器が無かったからこれは嬉しい誤算だ。
モンスターが出て来るフィールドでずっと素手ではいつかやられちゃうからね。刃こぼれしてるって言ってたけど刀身はそんな事ないけどなぁ〜
鞘から抜き、刀身を眺める。刃文は沸が強く、数珠のような刃文をしており、本当に刃こぼれしているのか怪しい程だ。
ガリアがいなくなってから数秒後にようやくチリエッタが動き出し、威久の身体を掴みブンブン強く振る。
「な、な、な、な、な、な、な!!なんで!!あのユニークボスのガリア=童子と仲が良いんですかぁ!?しかも刀まで貰ってるし!!」
「あ〜なんでだろ?成り行き的な?」
「そんなんで仲良くなれたらこんな場所にいないでしょ!!??しかもそれ超レア物の刀ですよ!?!?ユニーク武器ですよ!!!!」
「そなの?じゃあ早速装備してみますか。って持つだけで装備してるになる?」
「身体の一部、つまり腰や背中に持っていれば基本的に装備したことになります。まあアイテムボックスに入れたりとかですね……なんでそれすらも知らないんですか!!宝の持ち腐れですよ!!」
「そう言われましても〜じゃあ腰に付けときますか」
『装備完了。武器のステータスを確認しますか?』
アナウンスが聞こえ、威久は迷いなくはいと答える。すると、目の前にステータス画面が表示される。
【ガリアの刀:大業物 虎徹】
【詳細:極めて切れ味がよく、偽物が多く出回っている】
【装備効果:自身の攻撃力+45%
相手の防御力が高ければ高いほど攻撃力が上がる(攻撃力の重ねがけ不可)
魔法貫通
物理防御貫通】
「おっふ……」
「まあ妥当な反応ですね。そりゃあユニークボスのおさがり武器ですからそりゃあ大層チート級の武器でしょうよ」
そりゃああの馬鹿みたいに強いガリアが使っていた武器だから弱いわけ無いって思っていたけどこれは流石に強すぎない?ていうかこの装備効果のこれってどういう事だろう?
「この重ねがけ不可って何?」
「あ、それはそのままの意味ですよ」
「攻撃力の重ねがけは出来ないって魔法で攻撃力上げる系のやつあるからそれも無効なの?」
「そうですね〜結構説明が難しいんですけどそもそも基礎値の能力を上げる魔法自体がそうそう無いです。だからその重ねがけ不可はそうそう気にしなくて良いです」
「そうなんだ。じゃあこの武器に付いてる攻撃力を上げるやつも珍しい分類かな?」
「そりゃあユニークボスの武器ですからね。で、どれだけ攻撃力を上げてくれるんですか?せいぜい20%ぐらいですかね〜私の予想的には」
「え〜っとね45%って書いてあるね攻撃力」
その数値を聞いた瞬間、チリエッタは絶句する。急いで武器の鑑定し始め、その内容に更に絶句してしまう。
それもそのはずだ。何せこの武器は初心者の威久からしても結構なぶっ壊れ性能をしている。このゲームに詳しいチリエッタが見たら絶句してしまうのは当たり前だ。
「……威久さん」
「は、はい……」
「この武器の事を誰にも言ってはいけませんよ……」
ですよね〜まあやっぱりこの武器の装備効果は上級者から見てもぶっ壊れなのだろう。
「ていうか!!あのユニークボス倒せるとか運営言ってたけどこの装備効果の時点で無理じゃん!!絶対倒せないじゃねーかよ!!!!」
「レイドを意識してるとかじゃない?確かに1人なら絶対倒せないよあいつは」
「レイドでも倒せるか怪しいですよ。それがお古なら今はそれ以上に強い武器を持ってるはずですし……」
チリエッタはブツブツと1人で話していると急に茂みの方からガサガサと物音が鳴る。
誰だろう?もしかしてガリアかな?まだ何か用があるのかな?
茂みの方に向かって歩いていく。茂みを掻き分け確認するとそこにはガリアと共にいたはずのシドがスライムらしきモンスターと遊んでいた。
「シド!?」
「むきゅ?むきゅむきゅ〜!!!!」
威久の姿を見た途端、シドはスライムと遊ぶのをやめ、すぐさま威久に飛びつく。
まさかこんな所でシドに合うとは思わなかった。ていうかシドって割と何処にでもいるんだ。
「ガリアと一緒に来たの?ガリアはもう帰ったよ」
「むきゅむきゅ!!」
シドは首を大きく横に振る。どうやらガリアとは別に来たみたいだ。最初に会った時もガリアとは別に行動していたし割と自由に行動をしているかもしれない。
そういえばガリアはシドの事を白ドラ様って言っていたけどもしかしたらシドもユニーク系のモンスターなのかな?
ただでさえガリアと仲良くしているだけでも驚かれていたのにこんなのまで見られたらまずい気が……まあ〜いっか!!もう驚くほどの情報は出切ったしね!!
そんな事を思っていると後ろでチリエッタが威久を大声で呼ぶ。そろそろ本格的に移動するのだろうか。急いでチリエッタの元へと向かう。
「威久さ〜ん。そろそろ移動しますよ〜」
「は〜い。シドもついて来る?」
「むきゅむきゅ!!」
「よしきた。じゃ、行こっか!!」
「遅いですよ……ってそのドラゴン何処で拾って来たんですか?」
「拾ったっていうか……友達だよ?名前はシドって言うの」
「むきゅむきゅ〜」
「……終焉の劉の子供を友達と?」
「名前が物騒だなぁ……シドはそんなドラゴンじゃないよね〜」
「むきゅ〜!!」
「成長したらマジのバケモンになりますよそいつ。多分ガリア=童子でも倒すの無理じゃないですかね?分かんないですけど」
そんなドラゴンに成長するのシドって!?
「でもこのエリアには絶対に存在しないモンスターなんですけど……迷い込んだんですかね?」
「元々はガリアの隣にいたけど子らしいけどなんか付いてきたの」
「待ってください。それは話が違います今すぐに返して来てください。それユニークボスのペットじゃないですか!!!!あのバケモノボスが戻って来るじゃないですか!!??」
「余がどうした?」
「うぎゃああああああああああああ!!??」
タイミングが良いな。
「また会ったねどしたの?」
「白ドラ様が居なくなったから戻って来たぞ」
「そうなんだ。ここにいるよシドは」
「やはりいぐの元にいたか!!白ドラ様は普段は人には懐かないがいぐには懐くようだな!!それはそうと、その刀使ったか?どうだったか!?強くなったか!?!?」
グイグイ来るガリアを横にずっと震えているチリエッタ。そしてそれをオモチャの様にして遊ぶシド。あ〜なんと言うか……なんか地獄絵図だなここ。




