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リアルゲーム・オンライン  作者: 百ノ条アヤメ


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2/10

第2話 鬼の少女


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」


暗い世界の中、ただひたすらに落ちていく光景。フルダイブとはこういうものなのか?体感ではもう数分は落ちている感じはする。ぴきんと音が鳴ったと同時に微細な電子が威久の周りに集まり出だす。

その微細な電子は無数に集まりだし、ひとつの世界となり威久の目の前に広がり始める。その感覚はまさに異質なものである。

所々に痺れる感覚があり、その電撃は指から全身までにいきわたる。静電気みたいなものを永遠と繰り返す感じがする。

次第に慣れていき、その数秒後には何も感じなくなる。適応したのだろうか?その瞬間、落ちていく感覚も消える。地面に足がついているわけでもない。浮いている感覚だ。


「何とも不思議な感覚だ。普通の生活では味わえない体験だね」


宇宙飛行士もこんな間隔を毎日のように味わっているのかな?目の前に大きなテキストウィンドウが現れる。どうやら見た目や種族を選べるらしい。


「選べる種族は......人間族、エルフ、鬼、獣人、吸血鬼、竜人......結構色々いるんだね」


王道を行くなら普通に人間族なんだけど......せっかくゲームするならこういった特別な種族もありだよね~

MMOのキャラクターデザインを決めるのは割と悩んでしまう。どれも種族ごとに特性などがありから変に適当に決めてしまうと後々後悔してしまうこともあるからちゃんと決めないと。

頭を抱えながら悩んでいるとテキストの端っこにモヤがかった物を発見する。


【幻獣族:??? 特性:???】


「これ絶対リセマラ必須のやつだよね......」


レアな種族の書き方をしているが中身は選べない完全ランダムの種族。気にはなるけど選ぶ勇気が出ない。

種族の他に地震の見た目を選ぶことができるみたいだ。先にそこを決めてから最後に決めよう。

髪型は......私が黒髪だったからゲームでも鏡花みたいに金髪にしてみようかな?髪色を金髪にし、髪型は現実と同じロングにする。

装備は普通の初期セット。武器はこの画面では選べないらしい。まあ最初は街とかでリスポーンするとは聞いてるしそこで買うのだろう。順序にキャラクリが進み最後の種族選びまで来た。

ここが一番難しい所ではある。ゲームによってはその種族しかゲットできないスキルやクエストもあったりもする。普通のゲーマーなら選ぶものであろう。だがカジュアル勢でもある威久にはあまり刺さらない。


「でもリセマラできないゲームだったらもったいない気もするんだよな~」


よくある1アカウントに1個までのセーブデータしか持てないのであればこれを見捨てるのは流石にもったいない気もする。


「この手のゲームには絶対当たり外れがあるし、外れだった場合がこの先のプレイがしんどそう......」


長い間悩んでいると、急に他の選択肢の枠にもモヤがかかり始める。嘘、もしかして時間制限とかあるの!?

急いで画面を触るが時すでに遅く、すべてが謎の幻獣族だけが残ってしまう。もうこれしか選択できず、頭を抱える。優柔不断が出てしまった......


「もうしょうがない。この種族しか選べないしこれにしよう。あたりの種族こい!!」


しばらくロード画面が流れ、数秒後に種族が決まる。


【幻獣族:妖狐九尾 特性:変化】


「狐......の種族かな?」


どっちかって言うと獣人族に近い分類だろうから当たりとは言えないだろう。ゲームによっては進化したらこの種族になる物もある。

隣に鏡花が居たら当たりとか外れとか分かるんだけどまあゲームが始まれば分かるか。


『ようこそ冒険者』

「うわ!?なんか出てきた!!」


威久の前に出てきたのは巨大な女神の姿をした映像が現れる。翼が4つほど背中から生えており、誰がどう見ても女神だと思わせるほど美しい。だがこの女神は電子の形で形成されてるのだろう所々で電子の乱れがある。

この世界の神様的な存在なのだろうか?ゲームのガイドでもありそうだから一応覚えておくか。


『我々データアーカイブは、あなたを歓迎します』

「あ、それはどうも。この世界について聞きたいんですけど、チュートリアル的な物って......」


女神的な存在は威久の問い掛けに答えず、淡々と説明を始める。後ろに星々の明かりが照らされ、その光景はとても美しく綺麗だ。


『この星明かりが、あなたの旅路の導べとならんことを』


こちら側に理解をさせないまま話は進んでいき、気付いたらもう説明も終盤に入った。結局何もここでは教えてはくれないようだな。


「ええ。旅路の導べとならんことを」


その掛け声と同時に威久の身体は光りだす。それにつられ周りも輝きだす。そろそろ転送の時間か?

ついに夢のゲームの世界に入り込める。よくよく考えてみればこれって凄い技術なのではないのか?今までゲームの世界に入り込めることなんて不可能なんて言われていたのに。

でも今それが現実になってあと少しでその空間に行ける。


「すごく、ワクワクしてきた!!」


最後にこの女神様の名前を知りたかったけど、それはこの世界にいるプレイヤーに聞けばわかるか。まあ最悪鏡花に聞けばいいし。


『アル...ノ...メトリア......」

「え?」


急に女神が喋ったことに驚く。アルノメトリア......この女神はそういう名前なのか。


「私は...この世界の...記憶......私は...たをいつでも...見てる...」

「いつでも見てるって...何を当たり前なことを」


行ってる意味が全く理解が出来ない。それに何故こうも音声が途切れ途切れなのだろうか?ゲームの不具合か?

徐々に威久の身体は薄くなっていく。完全にゲームの世界に飛ばされるのには時間がかかるのだろう。でもなんだ。この異常なまでの違和感は?

このアルノメトリアの行ってる意味が全く理解できない。バグなのか仕様なのか全くわからない。これも演出の1つならこのゲームの運営は良い性格をしているな。でも所々に人間の...いや、何かの意思が感じ取れる......

聞いても無駄と分かっているが威久は聞かずにはいられなかった。


「最後に答えてアルノメトリア。貴方は何者なの!?」

「ワタシ......ハ...』


アルノメトリアの最後の問い掛けを聞く前に威久はゲームの世界に飛ばされてしまう。それを見届けたアルノメトリアはどこか悲しげな表情をするも、一瞬にしてまたいつもの機械的な笑顔に戻る。威久が飛ばされた数秒後にまた新しいプレイヤーが目の前に現れる。

そしてまたいつものようにプレイヤーに問いかける。




『ようこそ冒険者』




威久は完全に転送される際、一瞬だけ家族の思い出が頭の中で再生される。それは幼い時の記憶だ。母親と二人でお花見をしていた。


『ねえ、威久......ーーーーーー』


母親が何かを言い出そうとした瞬間、急激に目を突き刺すような光が威久を襲う。あまりにもリアルな感覚なんだな。


「これホントにゲームの世界なの?」


触覚、嗅覚、視覚はもちろん、五感のほとんどが現実世界で感じるものと変わらない。鏡花も言っていたリアルな体験ができるってこのことを言っていたのか。


「にしても......この草原、この世界観はやばいよね......!!」


広大な草原に威久は今目の前に広がっている現実に興奮と衝撃のあまり脳が処理できず、案山子かかしみたいに立っている。

雲の動き、太陽の輝き、そして全身で受けているこの風。 


「音は......凄い、あっちの世界と変わんない。ちゃんと違和感がないように作りこまれてる」


土の感触、これも私達が普段踏んでいる物と変わんない。大きく深呼吸をし、目の前に広がる世界に目を向ける。

全てが新鮮な世界。この待ち続けた世界に今、私は立っている!!


「これが......メタバース!!可能性の…世界!!」


とは言ったものの、特に草むらしか見えず、最初は興奮しはすれど見飽きてしまう。殺風景にも程があるぞ。


「なんか街とか建物みたいな場所はないのかな?流石に草むらばっか歩くのにも飽きて来たな」


マップを見たいのだがそういったUIも出てこない。バグなのかまだチュートリアルの最中なのか、いずれにしても出てこないのはおかしい。

最初は街とかに飛ばされるって鏡花が言ってたけどこれもバグなのかな?それにさっきの女神の件も気になる。ホロノメトリア......彼女は確かにそう言った。


「この世界の神様......でもそういうゲームでもなさそうだしな。建築系とは聞いたけど......もしかして創作の神様だったりして?」


よくあるゲームオリジナルの神様の分類だろう。今度NPCがいた時に聞いてみようかな。


「それはそうとして、いつになったら人気のある場所に付くの?」


もう2時間近くはこの道を歩いている(気がする)が、代わり映えのしない風景。正直、この手のゲームならモンスターとか草むらから出てくるのが定石でしょ。

そんなことを思っていると、急に目の前の草むらが揺れ始める。これは、もしかしてモンスターかなんかが飛び出してくるのでは!?

ウキウキしながら待ち構えていると目の前から飛び出してきたのはモンスターと呼ぶにはあまりにも可愛すぎる生物、威久たちの世界で言うと事の猫だった。その愛くるしい姿に一瞬気が緩んでしまう。

嘘、まさかのにゃんこか。てかこの世界にも猫とかの生物がいるんだ。そこんとこもリアルだな。威久はゆっくりと猫に近づいていく。


「やっぱり猫は可愛いな~警戒心があんまりないから人馴れしてるのかな?」


普通なら近づいていくだけですぐに逃げられてしまうが、この猫は逃げる素振りをしない。この世界でも猫と人間は共存しているのか。そのまま頭をなでようとした瞬間、先ほどまで愛くるしい姿をしていた猫が姿を変え、一気にバケモノに変化する。


「嘘でしょ?」


この時、威久はすべてを悟った。ああ、死んだわ私。

ゲームオーバーかと覚悟してリスポーンしようと決めようとした瞬間、突然草むらから新しいモンスターが飛び出してくる。


「むきゅ~!!」

「うえ!?」


新しいモンスター!?

見た面は化け猫よりも小さく、角とおまけ程度の牙がを付けている愛くるしい姿をしたドラゴンのモンスターだ。白いドラゴンは飛び出してくるなり、化け猫に体当たりを食らわせる。

ふいの出来事に化け猫は避けることができず、そのまま倒れてしまう。


「助けてくれたの!?」

「むきゅ!!」


敵意はない。むしろ友好的な雰囲気すらある。とりあえず、この化け猫が起きる前にこの場所から逃げないと!!

威久は自分を助けてくれたモンスターを抱きかかえ、その場から急いで逃走をする。正直、あの程度じゃ猫だまし程度にしかならないだろうし、1秒でも早くここから逃げ出さないと!!


「てか、私ここに来てからずっと走ってばっかなんですけど!?」

「むきゅ~!!」


がむしゃらに走ること数時間、元いた場所よりも大分離れた森の奥までやってくる。


「つ、疲れた~」


ほぼ全力で走っていた+この白いドラゴンを抱えて走っていたので余計に疲れた。だがこのモンスターがいなかったらあの時すでにやられていたと考えると何とも言えないな。


「ねえ、貴方名前は?」

「むきゅ?」

「鳴き声なのかな?こういう時にステータスとか確認出来たら最高なんだけど......」


というかモンスターの詳細とかもロクに出てこないし、ゲームとしてどうなってるの?明らかに不具合の域を超えている。もしかしてクソゲーをやらされている?


「いや、ハードモードに設定されているのか?どちらにせよ、君の名前がわからないな」


種族......的にはドラゴンに分類されるであろう見た目をしているがどうなのだろう。

一生懸命白いドラゴンを観察していると、それに気づいたのか白いドラゴンは落ちてある木の枝を口に咥え、地面に何かしら文字を書き始める。

完成した文字を確認するが、それは日本語ではなく、かといって英語などでもない。明らかに威久の知らない世界の文字であった。

この世界独特の文字なのかな?解読したいけど参考の資料とかがないから手の付けようがないな。

古代文字など見るのは好きだが、理解して解読するのは流石に威久でもできない。寧ろ見る専門である。


「ごめんね......せっかく書いてくれたのに。私じゃ読めないんだ」


こういうのもゲーム的にやってくれるはずだが、そういったのも全くない。流石に異常だ。文字などは絶対に読めないとゲーム進行に多大なる影響を与える要素であるし、ましてやNPCの会話面もどうなんだ?まだこの世界の住民と会話していないからなんとも言えないが流石に配慮してくれるであろう。


「まあ文字はしょうがない、頑張って読むか。とりあえず、お前は...白いドラゴンだからシドだ!!よろしくねシド~」

「むきゅ!!むきゅ!!」


名前を付けられたことを喜んでいるのかシドは飛び跳ねる。流石私、ネーミングセンスがあるね。まあ頭文字を取っただけだけど。シドは飛び跳ねたと思ったら急に威久の袖に嚙みつきぴっぱり始める。


「あ、あれ?どうしたの?」


何処かに案内しようとしているのか。妙に落ち着きがないように感じる。もしかしてこの子のほかにも別の仲間がいるのかな?そこに案内しようとしているのかな?


「分かったから!!付いて行くから!!そんなにぴっぱらないの!!」


こちらの意思をくみ取ったのか、シドは目を輝かせながら威久を自分の連れていきたい場所に案内する。

そんなに興奮してまでも私を連れていきたい場所ってどこなんだろう?

シドにつれられ、歩くこと数分。いかにもお化けなどおっかないモンスターが出てくる雰囲気が出ている山の廃寺に連れてこられる。


「こ、ここ?」


ぽよの顔を確認するがどうやらこの場所で間違いないらしい。ここで何すんの?あきらかに人がいる場所ではない。寧ろバケモノの巣窟だろどう見ても。


「縺薙%縺ァ菴輔@縺ヲ繧九??」


周りを見渡し、振り返って帰ろうとした瞬間、目の前に鬼の角を生やした小さい女の子が威久の前に立っていた。威久は大きな悲鳴を上げ急いで逃げる。

どう考えてもやばい!!鬼!?てか後ろにデカい刀があったんだけど!!鎧などを纏っている姿から察するに武士?がモチーフのキャラなのだろう。だとしても丸腰の初期装備で戦う相手ではない!!明らかに分が悪すぎる。


「縺ェ繧薙〒騾?£繧九s縺?繧茨シ?シ」


「追いかけて来た!?」


全力で走っているのにその差を物の数秒で縮められ、目の前を見てさらに加速しようとするがその時にはすでに鬼の少女は威久の目の前に立っていた。


「速すぎでしょ......」


立ち振る舞いで分かる。明らかに強い。化け猫の比にならないぐらいの威圧感。こんな小さな女のから出ていい雰囲気じゃない。まだあの少女がこちらに敵意を噴き出していないのが唯一の救いである。

もしかしたらあの少女の住処だったのかな?だとしたら土足で入り込んだ私が悪いが......いやシドに案内されてきたから私は悪くないか。


「蛻・縺ォ謌ヲ縺?ー励?縺ェ縺?h?溘◎繧後h繧翫b菴吶?險?闡牙?縺九k?」


「やばい...なんて言ってるか全くわかんね~」


やはり文字の時もそうだが日本語ではない。かといって海外の言葉でもない。完全にこの世界の言語。翻訳機能が機能していないのか、それも学べって運営の糸なのか。だとしたら鬼畜ゲームだけどな!?とりあえずはあの子にこちらの意思を伝えるか。

威久は一生懸命にジェスチャーなどをして鬼の少女に意思を伝えるが、全く伝わらない。寧ろ首を斜めに傾けだした。


「縺ェ繧薙°繧医¥繧上°繧薙↑縺?°繧画脈繧九h??シ」


その発言と同時に少女は黒い太刀を鞘から取り出し、威久に向かって構える。え、嘘。今から斬られるの?

何かを察した威久は逃げようとするも途中で躓き尻もちをついてしまう。その間に少女は一気に威久との間合いを詰めそのまま斬りかかる。

あ、これ本当に死んだ。そう確信し、目をつむるが何も来ない。いつまでたっても痛みやゲームオーバーの音楽も流れない。もしかしてバグ?それともそういう仕様?


「本当に斬ったわけじゃないから安心していいぞ」

「え、あ。はい?てかちゃんと聞こえてる!?」

「やっぱり伝わってなかったか。じゃあ余の話もな~んも聞こえてなかったね」

「そうみたいですね?いや~ちゃんと話せるようになってよかっ......」


「で、どうやって余に殺されたい?」


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