5 異世界
(ここは?)
目が覚めて辺りを見回す。
紺色のキャソックスのような服を着た老人2人とサザンカが食事をしている。
「目覚めたようですな?」
老人の1人が話しかける。
「ここは?」
「隠し部屋ですよ」
上半身を起そうとしたが持ち上がらない。
「無理をしないで下さい。ワタリの恩恵を受けている最中なので、あと2ヶ月ぐらいゆっくりしていて下さい」
「恩恵?」
「ワタリの魔力による身体の再構築」
サザンカの言っている意味がよく分からない。
「一番力があった頃の身体に作り替えられるんですよ、そして姫さまのワタリの魔力が練り合わさり血統霊化が使えます」
そう聞いて鏡を持って来てもらい自分の身体を見ると、骨と皮のガリガリのミイラがそこにいた。
これは怖すぎる・・・
ホラーだ・・・
「骨と皮になるまでの工程がきついそうです。ここからは太っていくだけなので痛みもありませんよ」
体を作り変えられているとは・・・全くたまらない
「そう言うのは先に言っといてくれないか?」
サザンカに文句を言う。
「なぜ?」
「痛いからだ!」
「痛みは変わらない」
それはそうだが納得がいかない・・・
「全く感情が無いのは・・・なんとも腹が立つ!」
「少しある」
「そうなのか?」
「ごく少し、何となく」
「ところで帝国の4人もこんな風になったのか?」
「なりません。身体はそう言う風に改造されませんが、痛みだけは受けるようです。正規に姫さまのサポートで渡った藤江様の何倍もの痛みのようで、それで気が狂ったらしいですな」
(あれの数倍の痛みか!?絶対にお断りだ!この正規ルートも2回目があるなら絶対にお断りだ!)
「武器は何を使っているんだ?」
「剣ですな十字形のを使っていますな」
「4人ともか?」
「そうです」
(西洋人はわかるが、日本人2人は日本刀かと思ったな)
「材料はあの魔導具カラクリに使われてた金属か?」
「いえ違います、希少金属の折張混を元に魔力を練って作った感応鉄ですな。使用者のイメージで硬さが変わります」
「それは便利だな!欲しいぐらいだ」
「ここにありますよ、作りますか?デザインを決めてくれれば、いかようにも加工しますが?」
「それは素晴らしい!もう少し動けるようになったらお願いするよ」
それから一か月ほどで急激に筋肉が盛り上がってきた。とにかく食う。血となり肉となる物を身体が求めた。
その間、サザンカ達は帝国の動向を色々調べていた。この9ヶ月で周りの国はほぼ壊滅的な状態になっており、反乱軍としてまとまり帝国に単発の戦いを仕掛けている状態だ。
4人の召喚者がそれぞれ軍をつくり、残虐の限りを尽くしているらしい。
捕えられ反乱分子は生きたまま串刺しにされたり、まとめて火あぶりされ食われたりしているらしい。
とても人間の行為とは思えない。
(早めに叩き潰す方がいいな・・・)
「あたしの身体も返して欲しい」
「?・・・何?」
「姫さまの全身は王族の強力な魔法陣が何年もかけて組まれています。本来なら欠損しても修復されるのですが、食われたとにより発動していないようなのです」
「それで?」
「身体を食べた者を屠れば術が発動されるはずです」
「詳しくはよくわからないが、戻るといいな」
サザンカは頷いた。
サザンカの名前はアスカ・サザンカ
王になるとアスカからアマテラスになるとのこと。
王族の御伽衆の2人名前はアスカ・グリとアスカ・グラだそうだ。グリとグラ!思わず笑った。