3 改修
王族脱出の通路を通り広場の隅にある井戸の出口は出ずに、手間の壁を押すと小さな部屋が現れその中に入る。
更にその部屋の壁を押すと広いラボが現れる。
ここは一部の者しか知らない最先端の魔導具研究室となっている。
5年くらいは余裕で引きこもれる設備が整っている。
隅にある再生魔法培養液の風呂に胴体と頭だけの姫を漬ける。
傷が塞がったところで目、手足の魔導カラクリを繋ぐ端子を身体に着ける。
これは神経と繋ぐため激痛に襲われる。これでショック死する者もいるぐらいだ。
サザンカの場合は脳を少し食われたので、幸い痛みを感じるのが鈍い。
なので思い切って欠損部全てに端子を着け一度に装着した。
魔導カラクリの義手・義眼・義足は取り付いた。
慣れる為にしばらくこれで生活をする。
3ヶ月ほどで身体も慣れたので義手と義足に武器を取り付けた。
武器を確認していると、地響きが起こった。
御伽衆の1人が外を見に行くと城が崩れて落ちていた。
帝国はサザンカを探しつつ、他の国への侵略を進めたようだ。
王族の血を引く御伽衆の老人2人と今後の事を話し合う。
帝国の皇帝は病気なので長くは無いであろう。だが召喚した4人の存在がまずい。
血統霊化があるにしても、そもそもの身体レベルが高いのだ。これは重力の違いなどが関係しているようだが、単純にこちらの世界の人間の倍の身体能力がある。血統霊化を使うとさらに倍。これほどの身体能力差があるのだ。
そんな力を持った4人は人を食う一種の化け物なのだ。
話し合いの結果、対抗出来る異世界人を連れて来て戦う。と言う事になりワタリを使い地球に渡った。
御伽衆の2人には残った仲間集めと、帝国の動向調査をお願いした。
◾️◾️◾️
「で、こっちに来た?俺にそっちに行ってくれって事?」
「そう」
「ん〜こっちの世界に未練は無いが、財産整理はしておきたいかな」
「力が無いからすぐには渡れない、こっちの時間で最短でも7ヶ月後ぐらい」
翌日から財産整理を始めた。
家の名義は娘にした。
預貯金は全ておろし娘名義の口座を作り入れた。
家の中の物も処分して行く。
サザンカが向こうには無い刃物の日本刀に興味を持っていたが、登録の関係上向こうの世界には持って行きたく無いので処分する。
サザンカに魔導カラクリの仕込んだ武器を外して見せてもらう。
(これは酷いな・・・刃物としてのレベルが低過ぎる)
いわゆるこっちの世界で言うナマクラより劣る)
魔導具の義手義足の骨格の鉄も向こうでは白鉄と言って硬いらしいのだか・・・
「こりゃアルミだな・・・」
(コレで硬い方なのか・・・)
「この骨格は取り替えでも良いのか?」
「構わない。付け根の魔法回路図があれば動く」
手足を外してもらい骨格を採寸する。
昔、ナイフを作っていた時、大量にストックした鋼材からステライト6Kを取り出す。
この鋼材は熱処理が不要なのでそのまま使える。
硬度は低いがコバルトが含有されているので、耐摩耗性と防錆ではピカイチだ。
化学薬品工場のプラントにも使われる特殊素材だ。
仕込みの槍や剣だが、足先の12センチほどの分厚いナイフは、防錆から安全剃刀用に開発された鋼材クロモセブンにした。
左手の打ち出し式の30センチのゴツい槍と右手の45センチのナイフは、藤江が好きな鋼材のD2使った。
左手の打ち出し槍は某ロボットアニメのパイルバンカーっぽいギミックだったので、ステライトで長細い盾を作り仕込んだ。
右手と両脛にも簡単な盾を組みつけた。
表情に現れ無いが、サザンカはパイルバンカーを気に入ったようで何度も打ち出していた。
2ヶ月ほどで向こうの骨格からステライト6Kに全て入れ替えは終わり、稼働部にはベアリングを入れた。
「動かして見てくれ」
「わかった」
サザンカはキックボクシングのような体術のシャドウをはじめた。
20分ほど身体を確認しながら動いた。
「どうだ?」
「軽く、静か。ブレ・ガタが無い」
「気になるところはあるか?」
「無い。スピードも武器の威力も上がった」
とりあえず合格らしい。