16 偽皇子
夜、病院の緊急搬入口を出た。
周りの建物を見渡すと、すぐにどこの病院にいるのか分かった。
近くに停めてある自転車を拝借してゴルフ場方面に向かった。
少し先に進み寺が見えた。
自転車を停め駐車場の方から妻の椿の墓に向かう。
奥にある墓に着き線香の台をどかし、その下の石の板をずらすと壺が見えた。
妻の骨壺に挨拶し、もう一つの壺を引っ張りだし中身を確認する。
「ん?何だ?」
入れた覚えの無いナップサックが入っている。
引っ張り出し中身を確認する。
スマホと充電器と形見の宝石と200万ぐらいの現金が入っている。重いな?あとは金か?
墓を元に戻して自転車に乗り病院へ向かった。
自転車を拝借した場所に戻し、緊急搬入口から入り病室に戻る。
荷物の中をもう一度確認しスマホを充電する。
他の荷物は棚に入れナースコールを押す。
「どうされました?」
「申し訳ないです。点滴が外れてしまいました」
「あらあら、すぐやりますね」
看護師は慣れた手つきで点滴を付けた。
「あら?スマホ持っていたんですか?明日にでも入院の手続きをお願いできますか?」
「わかりました、保険証はマイナ保険証でいいですか?」
スマホカバーからマイナンバーカードを引き出す。
「大丈夫ですよ、では明日お願いします」
翌日、病室の手続きと支払いをし2日後に退院した。
マイナ保険証が若返った顔を認証出来たのは笑った。
家に帰ろうかと思ったが、見つかると色々と面倒なのでやめ、小田急線に乗り鶴巻温泉駅で降りた。
駅蕎麦の人気メニューのコロッケ蕎麦を食べた。
カレーコロッケというところがなかなか良い。
蕎麦湯を入れて汁を飲みながら考える。
(壺に入れた物が違う、入れ替えたような感じでは無かったたな)
スマホを取り出し入っているアプリや電話番号、各種登録などを確認する。
(特におかしなところは無いな)
とりあえず温泉街に行き小ぢんまりした宿に2週間部屋を取った。料金は前払いし追加分は2週間後請求にしてもらった。
さて、サザンカの元にはどう戻るか・・・
◾️◾️◾️
「ヒャッハァー!おもいしれぇぇぇーー!王国の犬たちめぇぇーー!」
モナ公国の砦に3メートルほどの木の人形が現れ蹂躙している。
「犬どもこの帝国の魔導皇子ラメンシンが相手だ!吠えてみろ!ほれワンころ吠えてみろ!」
これは先日モナ公国の砦に現れた巨人の撮影動画だ。
「あれは古代の魔装具か?」
サザンカは怒り気味にグリとグラにたずねる。
「のようですな、資料から装着出来る木人と言うタイプだと思われますな、貴重な古代魔法王国の魔導具がよく残っていましたな、と言うより修理したような感じですな。なかなか素晴らしい技師ですな」
「こやつ、帝国の皇子っと名乗っているが本物か?」
「帝国のムチキ皇子の死亡は間違いなく確認しています。帝国に魔導回路の神童と呼ばれる男が居たようですが、その者と名前と風貌は一致します」
「その者は庶子なのか?」
「いえ全く関係なく町食堂の息子だそうで、帝国学園試験で魔導回路図に異様な才能を発揮したらしいです。おだてるとよく働くらしく、周りが魔導皇子と呼んでいたそうです。本人はからかわれていると思っていなかったようですが・・・」
帝国では12歳になった子供は全員、学園の試験を受けなくてはならない。
その中で広く才能を掘り起こし教育をしているのだ。
これが帝国が発展した点でもある。
これは見習うべき制度であるが、諸国では貴族の反対から実現していない。
「何か勘違いしている奴か・・・やっかいな・・・」
「「さすが皇子!」などホメ倒していたそうで、本人もそのつもりになったようですな」
「もう一度確認するが本当に血はひいていないのだな?」
「魔導の流れの魔紋も違うので間違いなく他人ですな」
「わかった、もうこれ以上犠牲者は出させない!私が出ます」
「姫様!いけません!」
「無茶をしないでください!」
「いいからパイルバンカーを持ってきてちょうだい!」
「姫!では我々も行きます!」
「そうね、グリ・グラあんたたちも王族だから付きあいなさい!落城の笛一族は暗部の訓練も受けているしね」
「はっ!」
「じゃあ仁の作った仕込み杖2本あるからそれ使って」
(あの変な木の人形ぶっ壊してやるわ!)




