12 試刀術
またもや城を吹っ飛ばしてしまった。
(ここまで吹っ飛ばすつもりは無かったのだが・・・)
粉塵爆発は思った以上の恐ろしい破壊力だ。
とにかくコントロールが効かない。
(危険すぎだ、もう使うのはやめよう・・・)
城はほぼ瓦礫となったが、守りのストラクチャーとして少し手を入れレイアウトした。
こちらにも簡単な兵舎を配置した。コレでここの砦はそう簡単には落とされないであろう。
「さて、2人で新しい帝国の帝都に挨拶に行くか?」
「うん」
バラバラでボロボロの首都カイザーから占拠した隣りの都市に移ったらしい。
市民は生活があるのでまだ旧都市に居るらしい。
向こうの世界の感覚だと基地の引っ越しというところだろう。
ここは湧水の山上湖があり川となり山の下の町、村に流れている。新しい首都カイザーはちょうど窪地になっているのだ。
こっちの世界では無い戦法が取れる。これはグリとグラにも確認したが無いそうだ。
水攻めだ。川を堰き止め窪地に行くように水路を作る。
村人は川の水位が突然下がり騒いでいるが、新都は川から離れているので気にしていないようだ。
生活水は地下水の井戸と湧水を使っているから関係無い。
本当に能天気だなこっちは。コイツらもあと数日の運命だ。
水に沈む都市を想像していると、遠くに人影が見えた。こっちに10人ほど登って来ているようだ。
「いた」
横で木の枝に立ち見ていたサザンカが、人影に向けて走り出した。
ショートソードを抜いている。
俺はかじっていた干し肉を捨て、日本刀風の感応鉄の剣を抜きサザンカを追いかけた。
追いつくと戦闘が始まっていた。
1人の30過ぎの女が、倒れた仲間の腹を裂き臓物を取り出して小さいオケに入れている。
(何だコイツ?)
女を観察する。日本人のようだ。という事は召喚者か?
サザンカが頭を貫いて蹴り飛ばした兵士が倒れ、臓物を入れたオケにぶつかり中身がぶちまけられる。
女の表情が変わりサザンカに斬りかかった。
剣は太腿にあたり脚の義足が歪みサザンカは地面に転がった。
「これは貴重な薬になるんだよ!何してくれたんだこのバカ女!」
(薬?人胆?浅右衛門丸か?)
「おい!山田浅右衛門か!」
「ほう!我を知るとは向こうの世界の者だな。いかにも山田浅右衛門だ!かかってくるが良い」
(首斬り浅右衛門か・・・また何ともニッチな・・・)
サザンカが起き上がり斬りかかるが、大上段からの一撃が速く間合の外に飛び下がら転がる。
一撃目で脚が歪んでいたようで何か動きが悪い。
山田浅右衛門の刀を見ると刃こぼれか?凹んでいる。たぶんステライト6Kに当たった跡であろう。
「ところでその剣の硬さは何がイメージだ?」
答えるかもしれないので聞いてみた。
「この女は刀剣好きだったらしく無銘の備前を1振り所有していてそれがイメージだな。備前ナカゴじゃ無いがな、たぶん美濃関物だな」
(厄介だな、無銘とは言え日本刀か。それを山田浅右衛門が使うとは嫌だな。まぁ、かなり使い手がデチューンされているのが救いか。)
何かが俺のズボンの裾を引っ張っている。
「大丈夫?」
サザンカが身体を引きずっている。先ほどの斬撃で片足が外れたらしい。
「大丈夫だ」
サザンカを抱き上げ木の下に座らせた。
仁の全身から白い煙が立つと力が溢れだす。
(これが血統霊化か!)
危険を察知した山田浅右衛門は剣を大上段に振りかぶる。
俺も大上段に構え徐々に間合を詰めて行く。
浅右衛門が憑依した女の目が血走っている。
気のせいか震えているように見える。
いゃぁぁーーー!
浅右衛門の裂帛の気合いが響き剣が仁の頭に斬り込まれた。それに合わせて仁も振り下ろした。
ガッ!
鈍い音がした。
浅右衛門が刀を落とし驚きの顔でこっちを見ている。
「お主、谷殿の試刀術!試剣術の血筋の者かぁ!」
浅右衛門の剣のハンドガードは真っ二つに切れている。仁の一刀が浅右衛門のハンドガード日本刀で言う鍔の部分と、その下の右指を全て斬り落としたのだ。
仁が大上段から真っ向に斬り下ろす。
浅右衛門の額に線が出る。
「谷殿に引導を渡されるのなら本望、試刀術の真髄を拝見した、良きかな道を極める者・・・」
真っ二つに割れ血が吹き出るが、徐々に透明になり消えた。
木に寄りかかっているサザンカがむせている。急いで駆け寄ると口から何か出ている。息が出来無いようだ。
急いで口の異物を引っ張りだす。
「それ魔導内臓、中身が帰って来たみたい」
内臓も食われていたのか・・・サザンカはどれほどの恐怖を受けたのであろう。考えると怒りが湧いてくる。
「良かったな、もう少しだな」
脚をはめてやり、頭を撫でる。
「うん、がんばる」
サザンカが無表情で抱きついて来た。
それにしても試刀術の祖、谷一族の血を引いていたとは驚きだ。なるほど確かに剣術・剣道・居合より、試し斬りが得意だ。コレも血筋が関係していそうな気がする。
サザンカと山上の湖まで行き水路の結界を外してもらう。
貯めた水が山の麓の窪地に出来た新都カイザーに流れ込む。すぐに腰まで水が流れその後もどんどん流れこみ新都市は水没した。




