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1 無表情の女

残酷な描写ありなので、苦手な方はご遠慮下さい。

ぼちぼち書いていきます。

オークションで落札した刀が届き梱包を開けると安っぽい白鞘が現れた。

白鞘(しろざや)からゆっくり刀身を抜く。

白銀(しろがね)の刀身がLED照明に反射し、壁の光が刀身と共に動く。


白鞘は朴の木で出来ており休鞘(やすめさや)油鞘(あぶらさや)とも呼ばれる。

拵えの劣化を防ぐ為に、拵と刀身を別に保管する為の物だ。


こだわる人は採取した季節も気にする。季節によっては塩分量が多く、刀身に錆を発生させてしまうからだ。近年では外国産の朴も入ってくるが、塩漬け輸送の関係で使わない人もいる。


ベンジンで刀油を丁寧に拭き取り、全体の姿をみる。

電球のスイッチを入れ刀身をかざし焼き刃と肌をみる。


新人の現代刀で無難に上手くまとまっているのだが・・・

「いまひとつ(さえ)が無いな・・・」

新しい油を引き刀身を鞘に入れ刀箪笥に入れ、刀剣名義変更の届け出に記入し切手を貼る。


2ヶ月前60歳で定年を迎えた。3年前に妻に先立たれ1人娘もとっくに結婚して家を出ているので、1人暮らしの気楽さから定年延長はせず退職した。


会社勤めとは、就業時間中は会社に魂を売り渡し、ブタ野郎の社畜に成り下がる事である。

それからやっと解放され、精神的にも良い状態になったので昼間から、長年稽古してきた日本陸軍戸山学校の軍刀操作を基にした形を8本と、家伝の流派名も無い据物斬りの技8本を繰り返し稽古に没頭している。


夜は家の周りを2時間ほど散歩をして風呂に入って寝る。ここのところはその繰り返しだ。周りから見ればつまらない一日かも知れないが、この全てが自分の時間であるので結構充実している。


(さて、もうそろそろ散歩に出るか)

adidasのフード付きジャージに着替え名義変更の封書をウエストバックに入れ外に出た。


近所の酒屋の前のポストインし、今晩は星空がきれいなので山の公園へ足を向ける。

1時間ほど歩き公園駐車場に着く。周りを見ると星を見に来ているのかカップルの車が多い。


そのままさらに30分ほど進み登山道の方へ足を向ける。登山道入り口の自販機でスポーツドリンクを買い半分ほど飲み、ペットボトルを片手に少し登山道を進む。 


カサッ…


左から何かが動いた音がする。

(鹿か?)

警戒し左側を睨んでいると、杉の木の陰から長いローブを羽織った女が現れた。


「!?、どうかしたのか?」


女は正面に立ちこっちを見た。


左目が赤く光る。

『チェック』

右目が緑に光る。

『適合・劣化あり』


「何だ?!」


女が口を開いた。

「オマエの家に行く」

「なぜ?」

「説明するから」

(ドッキリか?これ本当なら人じゃ無いだろ・・・)


とりあえず?

このよくわからない女を家に連れて行く事にした。


(よわい)も60を過ぎると未知に対して驚くが別段恐怖は無い。

それどころが少し浮ついているぐらいだ。

と言うのもこの女の風貌が他界した妻の椿(つばき)の若い頃に似ていたからだ。


この女は無表情だが、妻の椿はよく笑いコロコロと表情が変わる女だったが…


名前などを訪ねたが全く答え無いので、家までの1時間30分を無言で歩いた。

話は家でと言う事なのだろう…


それにしてもこのカシャカシャ音は?

この女鎧でも着てるのか?




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