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第3話 出陣

── S級クエスト。


 それは国家の存亡すら左右するほどの危険な任務。


 そんなクエストを俺は、今から俺は、やる事になる。


 てか、初めてのクエストがS級って…。大丈夫なのか?


 不安に()られながらも、もう一度、支給(しきゅう)されたクエストの書状(しょじょう)に目を落とす。


 [上級魔物によって制圧された地区の奪還を目的とし、当該地域に生息する魔物を完全に駆逐すること。]


 不安になるなと言う方が無理だ。


 魔物には大きく分けて「上級」と「下級」が存在する。


 下級魔物の強さはピンキリだが、冒険者ランクで言えばG〜B級の冒険者一人分の強さ。対処可能な範囲だろう。


 しかし、上級魔物は次元が違う。


 A級冒険者10人が(たば)になっても敵わないレベル。基本的に遭遇したら「戦うな、逃げろ」が鉄則だ。


 俺はまだ魔物と対峙したことがない。教科書や映像資料で見たことはあるが、実際に向き合うとなると話は別だ。


「大丈夫カネ? 初めてのクエストで緊張しているのカナ?」


 突然の声に、俺は思わずビクッと肩を跳ね上げた。


「えッッあ、はい。」


 声が裏返るほど驚いた俺に対し、アールは、豪快に笑いながら胸を叩いた。


「HAHAHA!大丈夫ダヨ!何たって、私がいるかラネ!!!」


 そう言いながら、アールはポージングを決めた。


 彼の鍛え上げられた肉体が服越しに浮かび上がる。まるで(よろい)のように分厚い筋肉。


「では、さっそく行こウカ!」


「え?」


 唐突な宣言に思考が追いつかない。


 次の瞬間、アールは迷いもなく窓を開け放った。


 窓を開けると心地の良い風が吹き、カーテンを揺らす。


「アア!そう言えば、戦闘用の服に変えなくテハ!」


 そう言うと、彼はパチンと指を鳴らした。


 直後、アールの身体が光に包まれ──そして、変わった。

 

 赤黒いスキンスーツ。


 彼の筋肉を強調するかのように密着し、肩には漆黒(しっこく)のマントが翻る。


「……!!!」


 俺は息を呑んだ。


──アールの戦闘スーツ!


 アールのスキンスーツだ!!!ヤバい、本物だ!凄げぇ!


興奮で言葉を失っている俺を見て、アールが首を傾げた,


「ダレンクン?どうしたのカネ?こっちにおイデ!」


「あ、あ、はい!」



 俺は慌ててアールの元へ駆け寄った。


 アールの元へと駆け寄ると、彼は何故か俺の前で膝を折った。


「どうしたんですか?」


 不思議に思って尋ねると、アールは振り返りながらニカッと笑った。


「おんぶダヨ!今から僕と一緒にクエストの場所まで向かうだロウ?馬車とかでとろとろと行くより、僕が運んだ方が速いと思っテネ!」


 一瞬、思考が停止する。


 アールにおんぶしてもらえる……だと?


 いや、まさかこんな日が来るとは。俺、前世でどんだけ徳を積んだんだろうか。


「失礼します。」


 俺は、アールの背中恐る恐る乗った。

 触れてみて改めて感じる筋肉の圧倒的大きさッッッ!圧倒的な筋肉量ッッッ!!(はがね)のように鍛え上げられた背中は、安心感という言葉では片付けられないほどの頼もしさを持っている。


「サァ!行クヨ!」


 アールが叫ぶと同時に、俺の身体がふわっと浮いた。


── 浮遊感。


 間違いない。浮いているのだ!アールのレアスキル、【空中浮遊(くうちゅうふゆう)】で!!!


そして次の瞬間、


 俺たちは、空へと弾丸のように飛び出した。


「しっかり掴まっているんダヨ!」


「──────────────!!!!」


 体験した事の無い浮遊感。下を見ると王城がどんどんと小さくなっていく。風が頬を切るように駆け抜ける。


── 分かったことがある。


 アールが空を飛んでいる姿はめちゃくちゃカッコいい。


 だが、実際に乗る側になるとめちゃくちゃ怖い。


「スピード上げルヨ!」


「ちょっ、待っ──ウワアアアアアアアアアアアアア!!!」


 ヤバい。俺、死にそう。


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