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国王襲撃

 『ポーン』

 

 コトの脳内視野にカナからの通話リクエストが表示された。

 最近スクロール魔法さんに搭載された脳内通信機能である。将来的には『念話』としてステータス魔法やステータスオープン魔法にも搭載予定である。

 

『カナ、どしたん?』

『多分、囲まれた。うちの近衛が気がついてないから、地下かな。魔法使う気配が有ればそこはピンポイントに判るけど、男の人主体だとマイクロマシン経由の知覚が難しいのよ』

『襲撃かな?おじいさま来てるし。了解、魔法使いがいたらそれはもうイグナイトで無力化しちゃって良いでしょ。あとは見かけ次第片っ端から倒すしかないかな。しおりん聞こえる? おじいさまの側は任せて良いかしら?』

『はい、しおり了解です。席移動します』

 しおりんが目立たないように姿勢を低くしながら移動する。コトは周辺の魔力の流れ、イコールマイクロマシンの活動状況を確認していく。

 確かに地下にいくつか微妙な動きをしているものが有る気配だ。徐々にこちら、講堂の下へと寄ってきている。

 この建物の上にも二つ反応がある。このうち片方はとても小さな反応なので、男性かもしれない。

『カナ。地下だけじゃなくて、この上にも誰かいる。二人は確認、あと何人いるのかは不明。そちらの警戒もお願い』

『りょ。こっちでも確認取れた。他にも外に何人かいる模様。ちょっと動いてディートリッドに伝えて貰えるかな?わたしよりコトの方がディートリッドに近い』

 王女近衛団長のディートリッドもこの講堂内に控えている。コトはディートリッドに接触するために斜め後ろに動き出す。

 カナは全力で索敵中。現在、地下に七名、上に二名、外に五名の怪しい反応を見つけている。地下の七名はすでに国王の真下まで辿り着いていた。

 と、地下の魔法使いに動きがある。魔法の詠唱を始めたようだ。少なくとも詠唱省略を出来るような手練れではないらしい。

 カナが魔力の動き始めた場所の二十五センチ上にイグナイトを放り込む。見えていないので人体構造を考えながらの勘である。なので生死の状況は判らない。ただ、呪文の詠唱は止まった。魔力が霧散していく。

 何が起きたのかはコトとしおりんの脳内にも同時に再生されていく。この感じだと魔法で床を破ろうとしていたんだと思われる。阻止されたことでどう動くのか、予断は許さない。

 

 コトがディートリッドの元に辿り着く。

「ディートリッド、敵襲です。床下に七名、屋根の上に二名、外に五名、あるいはそれ以上の敵に囲まれています。対応お願いします」

「コト様、それは……御意でございます」

 ディートリッドが部下にハンドサインを送り、続いて国王護衛の第一騎士団近衛部隊にもサインを出す。

 近衛本体は即座に反応、国王の周りを取り囲み、移動を開始しようとした。講堂内が騒然としはじめる。

 天井を破って人が顔を出した。

 魔力の流れを感じたカナが国王の上にリフレクトマジックを張り、詠唱開始した敵にイグナイト。天井の人影がぐったり動かなくなる。

 外から剣戟が聞こえてきた。近衛と敵が接触したようだ。息を潜めるのをやめた敵が、次々と探索魔法に引っかかり始める。当初感知した人数より数倍多い様だ。外だけで十五人以上。屋根の上にもあと五、六人はいる。

 

「何者かの襲撃を受けている。全員姿勢をさげ、その場に待機。不審な動きをするものは拘束する。注意せよ」

 カナが拡声魔法で全員に声をとどかせる。

 急にそんな事を言われても言われた通りに動ける人は、そうはいない。無駄に逃げ回った挙句扉を開けて外に出ようとする父兄が出た。

「あ、バカっ、開けるなっ」

 叫ぶも間に合わず、扉を開けた瞬間に外から数名の黒ずくめが飛び込んできた。開けた本人は蹴り倒されたようでうめいているが、命に別状はなさそうだ。

 飛び込んできた黒ずくめは三人組に目視された瞬間には、後ろに吹き飛ばされている。手加減バージョンのウインドショットが、超音速の空気の塊を叩きつけていく。音速の壁を突き破る時の衝撃波が、銃声のように響き渡った。

 四人めを倒したところで室内側の戦闘はひとまず収束したようだ。ただ、屋上と地下の不審者はまだ残っているし外の掃討も終わったかどうか確認できていない。


 まずやることは国王陛下と王妃陛下の安全確保。陛下にはしおりんが付いてくれているのでまず問題ないだろう。

 ケイにはリンダが付いているはずだ。リンダには双方向は無理だが、視界に情報ウインドウを出して指示することは出来る。敵の位置情報も送れるだろう。リフレクトマジックもウインドショットも使えるからおそらく心配ないだろう。

 少し落ち着いたあたりで、カナが地下のマイクロマシンを掌握。地下に潜んでいる敵の数と場所が判明した。今まで見えなかった者も含めて十名。うち一名は昏睡してると思われる。

 残りも無力化するために、地下空間に手加減なしのフラッシュバンを叩き込む。回復する前、三十秒後にもう一つ。一分後にもう一つ。

 いくらなんでも、もう意識残してる人はいないだろう。目や耳はもう使えないかもしれないが、あとは騎士団に任せれば良いだろう。

 屋上はどうするか。フラッシュバンを入れたら外で戦っている味方騎士まで麻痺しそうである。

 それでは都合が悪いので、騎士団に頼んで屋上にも人を送ってもらう。できれば一人も逃したくない。全員捕縛の上、背後を吐かせられれば良いのだが。


 外での剣戟も聞こえなくなってきた。それからしばらくして第一騎士団の近衛隊長が戦闘の終了を宣言した。

 国王陛下と王妃陛下はすでに城に向かって退避中である。流石にもう卒業式という状況ではなくなっていた。

 講堂では怪我をした貴族の手当てや捕縛した賊の回送などに追われ、その他来場者への指示などが何も出ていない状況が発生した。

 

「あー、これは良くないね。ちょっと行ってくるわ」

 カナがそう言うと演台に上がり、拡声魔法を流す。

「こちらは王室預かり所属、キャナリィ・カッシーニである。襲撃犯は全員捕縛したが本日の卒業式の続行は不可能である。よって本日は解散とする。なお、怪我をしたもの、損害を受けたものは最寄りの騎士に申し出よ。特に問題のないものはそのまま帰宅することを許可する。それと、六年生諸君。卒業、おめでとうございます」

「お兄ちゃんおめでとうっ。リンダさんもっ」

 コトが便乗しやがった。

 

「だって、お祝いしたかったんだもん……せっかくのお兄ちゃんのハレの日を台無しにされてさ、わたし、怒ってるんだから」


 さて、ここからは騎士団のおしごとである。とは言ってもイグナイトで気絶させた賊の蘇生確認はコトとカナの仕事だが。

 しおりんは国王に付いてそのまま城へと戻っていった。しおりん一人いれば大抵の脅威は排除できる。安心感が違う。

 

「おっけおっけ。死者は出てない」

「ふぅ。死んでも仕方ないって思いながら撃ってるからねぇ。それでもやっぱり後味悪いし、かといって手加減していてこちらに被害出すわけにもいかないしね。戦闘って難しいわ」

 そう。不殺を貫いて大切な人をなくすとか、前世で読んだ物語に沢山出てきていた。だからいざ戦闘となったら躊躇わずに撃つようにはした。

 でも実際に死なれてたら、やっぱり少し落ち込むと思う。少しかもしれないけど。

 ファイヤーボールを使わなかったのは、ただ単に二次被害を嫌っただけである。

「ウインドショットとファイヤーボールの間の魔法が欲しいな」

「辺りを壊さず確殺的な?」

「そそ、うーん、実体弾かなぁ。リフレクトマジックの実験した時の矢みたいにさ」

「じゃ、弾だけ持っておけば? アイテムボックスあるんだからいくらでも持てるでしょ?」

「…………さすがコト。さすが天才。そこに痺れて憧れた」

 

 そう、いくらでも荷物が持てるのだ。彼女たちは。どれだけ持ち歩いても負担にならない。そして、弾なんてロマーノの家に頼めばいくらでも生産出来る。

「今日からわたしは超電磁砲(レールガン)

「いや、それはアウトっ! 確かにローレンツ力で飛ばすのが一番威力出たけどさ」

 あのあとの実験で、空気を使った加速以外も色々試した結果、周囲の空気分子の配列を変えた上で高電圧を加え、ローレンツ力で射出するのがもっとも初速が上がることが確認できた。

 対象との距離が取れる時は、作用長を長大に取れば更に高速になる。長すぎると途中でプラズマ化して、これもヤバい威力になるので加減は必要だが、手加減しやすいかもしれないので後で検証してみよう。


 捕縛した全員を護送馬車に乗せ、牢屋へと送り出す。この後の尋問はお国の仕事だ、お姫様がやることではない。

 もっとも、今回無力化した襲撃犯のうち、実に半数ちかくの十六名がお姫様に倒されていたと言う事実。

 騎士団との実力差がつきすぎるのも問題なので、少しずつ騎士団にもステータスオープンを使わせる準備も必要かもしれない。

 軍部まで広めると、また他国にちょっかい出そうとする者が出てくるかもしれないが、軍人は女性率が低いのでそこまで脅威ではないか?

 男性としては格別の魔法適性を持つと思われるケイですら、ステータスオープンのサポートを受けてもいまだにファイヤーボールも発動することができないでいる。

 軍人が使おうと思っても、女性魔導士を前線に投入しなければ意味がないのだ。

 そして、彼らはそれを職域の侵略だと忌避するだろう。男尊女卑がうまい具合にハマれば余計な軋轢なしに騎士団に導入できるだろうか。

 しかし、そうなると今度は男性騎士と女性騎士の間で余計なトラブルを生むかもしれない。

 ただでさえ女性騎士団の中に数名いるファイヤーボール使いは、男性騎士に人気が出ないとか嘆いていた気もする。

 いっそのこと、コトぐらい使いこなせれば第一騎士団長みたいなのを捕まえられるかも。

「いや、あれは嫌」

 お、おう……哀れ第一騎士団長……イケメンなのに……


 その後、襲撃犯の尋問が進み、数名の口から帝国情報部の名前が出てきた。

 どうやら今回の襲撃は帝国の差し金のようだ。指揮はアルフレッド・バーグマン上級大佐。帝国諜報部の中でもかなり高位の存在らしい。

 今回は最近王国で話題になりつつ有る、空を飛ぶとかいう機械と、急激に発展しつつ有る王国宮廷魔導士部隊の成長についての調査が主体であった。

 帝国としては空飛ぶ機械については半信半疑のようである。それは当然だろう。人が空を飛ぶなど、本当にレア中のレアな事例なのだ。王国の宮廷魔導士アンガスが空を飛べることは割と知られているが、それすらもトリックであるとか、偽情報であるとか言われて信じていない国も多いぐらいである。

 それが『機械に乗れば誰でも飛べるようになる』なんて戯れ事を誰が信じると言うのか。


 全部あいつらがらみだよ、おい。いや、わかってたよ? あのキャナリィのお披露目誕生パーティの日から、きっと将来大変なことになるってわかってたさ。

 でもね、それでもね、やっぱり平穏を期待しちゃうだろ、人間だもの。

 きっと、また仕掛けてくるよなぁ。

 今回のことも外交経由で苦情は入れるが、きっと知らぬ存ぜぬ其方で処分しろだよなぁ。困ったなぁ。

 いっそ適当に情報渡して帰ってもらうか。あいつらも王都に潜伏してたなら、飛行機見たことぐらいあるだろ。飛ぶたんびに騒ぎになってるしさ。


 後日。結局、帝国に苦情を入れ、知らぬ存ぜぬ其方で処分しろ宣言をもらった後で、全員を国外追放として帝国領に逃した。

 あとはあちらがカッシーニの実力をどう見るかだ。

 放置すると脅威になると、攻め込んでくるのか。

 すでに脅威であると、手を結ぼうとするのか。

 飛行機、そして魔法使いの拉致を命じるのか。

 その、三つめの選択肢を敵が選ばないことを祈る。おそらく、それが一番敵国の被害が大きくなるであろうから。

 コトの逆鱗に不用意に触れたりしない事を祈るしかない。


「とか、会議で言ってたらしいよ。おじいちゃんたち」

「わ、わたしをなんだと思ってるんですかっ! プンスカ!」

 コトがプップクプーっと膨れている。

「何もそんな、歩く世界大戦(アルマゲドン)みたいに言わなくても良いじゃないの」

「いや、誰もそこまでは言ってないだろ」

「お兄ちゃんに仇なす敵はデストロイするだけなのに、何でもかんでも壊すと思われるとは心外ですっ」

 コトの怒りは収まらない。

 

「今回だって、お兄ちゃんの晴れの日を邪魔するとか、本当だったらファイヤーボールの雨が降るところよ。お兄ちゃんに当たるとまずいから撃たなかったけど」

「やっぱり歩く終末大戦(アルマゲドン)であってるべ」

「余計酷くなってるっ!」

 お読みいただきありがとうございます。

 国王陛下襲撃とか、普通は間違いなく死罪ですけどねぇ。外交って難しいです……


 もしもお気に召しましたら、ぜひご意見ご感想をいただけたらなと思います。よろしくお願いします。

 それではまた、お会いいたしましょう。

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