縁あれば千里を隔てても、五千里隔ててやるわぁ!!!
私の祖父(母方)はちょっと、いや、かなり凄い人だ。
私が生まれる前に死んだので、会った事も話した事もないが、その偉業は聞き飽きている。
母さん曰く、月読様に目をもらったんよ。
伯母さん(母方)曰く、音痴なのに祝詞はピカイチだったよ。
二十四~五歳まで盲目だっただの、夢枕に月読様が立っただの、二十を過ぎても我を信仰したら目をやろうと言われただの、祖父をよく知る人に訊けば、この手の話に暇がない。
ある日、入浴中に月読尊に闖入され、生まれて初めて魂消るという心境を味わった。
オギャア!と泣いて約二十年、驚愕する事も喫驚する事もそれなりにあったし、唖然とした事も呆然とした事もあるが、魂消た事は終ぞなかった。
男神だったら、痴漢、変態、変質者である。
私が惚けていると、彼女は訊こうとした事から聞きたくもない事までペラペラと喋り倒した。
曰く、弘喜(祖父)は我の最も大切な友じゃった。
曰く、そなたの霊力は弘喜に勝るとも劣らぬ。
曰く、そなたを弘喜の跡継ぎと認め、約定により、加護を与える。
友とは友人であり、断じてメイドでもバトラーでもない。
そもそも跡を継げない。
ないが、神の常識は人の非常識である。
傲岸不遜、傍若無人、天上天下唯我独尊、それが神ってもんなのだ。
常識のじょの字も知らない我が儘女神を宥め、諭し、怒鳴り付け、殴り付け、締め上げ、吊るし上げた、我が半生………。
涙がちょちょぎれそうだ。
そろそろ毛根の心配をしなければいけないかも知れない。
主人公紹介
東雲 神虹夜
二十九歳。
独身。
父親と絶縁し、他の家族と死別し、今はほぼ天涯孤独
黒と黒檀色が混ざったような髪と目。
ぽっちゃり体型。
十二月三日生まれ。
射手座。
古い神社の神主。
霊力
魂の力。
万物に宿る。
強弱はアカシックレコードとの繋がり、アカシックレコードを動かしていた時間に比例する。
霊力が強い者は霊感、予知、サイコキネシス等、常人には有り得ない力を持つ。