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その天女、重度の男性恐怖症につき  作者: 青蓮華
第一章 事実は小説よりも奇なり
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ファントムペイン

その後、(やぶ)から棒に出やがった駄女神をキュッ!とシメ(精神的に)、魔術について洗い(ざら)い吐かせた。

曰く、魔術とは魔力を介して世界の記憶を書き変える技術じゃ。

曰く、魔力持ちの体内には魔力回路という疑似神経があってな、それが霊力を圧縮して魔力に変える故、魔力の強弱は魔力回路の本数に比例する。

ここまではいい、問題は―


「魔力回路って神経の一種なの?

魔盲は神経の一部がないって事?」


これである。

魔盲が先天性の障害なら、いずれ専門家のサポートが必要だ。

情報は早く、安く、正確に集めるべきだ。


「魔力回路は神経に似ておるが、神経ではない。

疑似神経と言うたじゃろう?

なくても問題ない、寧ろない方が良い。

人体のぱぁつの数はこちらもあちらも同じ、魔力持ちは余計な物、それも神経という爆弾を抱えとる。

その代価として、魔術は余りに安い」


思わず手を止め、次いでセレーネを見る。

救急箱の捜索は後にしよう。


「安いの?」


意外だ。

アカシックレコードに干渉出来る技術が安いとは思えない。

世界の記憶を書き換える事は世界の理を変える事に等しい。

時間も空間も関係なく、あらゆる可能性を創る。


「魔術の基本は等価交換、大きな結果を望むなら大量の魔力が必要じゃ。

数百人集めても過去すら変えられぬ技術に命を懸ける気かぇ?

魔力回路は制御を誤れば惨事を招くし、使う度に他の神経を圧迫する」


「痛くないの?」


「痛い故、魔術師・魔導師を志す者は痛覚を潰すのじゃ。

痛みに振り回されぬかわり、病にも傷にも鈍感になる。

魔力持ちが短命と言われる所以じゃ」


「あぁ、それなら安いかもね」


命あっての物種である。


「人は魔力がなくとも生きてゆけるが、痛みがなくては生きてゆけない。

痛みは生存本能の一部、蔑ろにして良い物ではないのじゃ」


こういう時、駄女神は神らしくなる。

何を考えているのか、誰を見ているのか、訊いた事も分かった事もない。

それが、ずっと悔しかった。


『普段遠慮のえの字もしないくせに、大事な事は何にも言わないんだから』


人は痛くなくても痛みを感じる時と痛くても痛みを感じない時がある。

神も同じなのだろう。


「ねぇ、アンタ人が好き?」


ふと、訊いてみたくなった。

私を助けてくれたのだから、嫌いではないだろう。

しかし、たまに仄暗(ほのぐら)い視線を向けている。

憎しみ、悲しみ、恨み、妬み、どれも合わない気がするが、どれも合う気がする。


セレネは私の右足に擦り寄り、


「好きではない、愛しておるのじゃ。

愚か(狂おしい)しい程にな」


冷たい声でそう言った。


駄女神曰く、神の死とは信仰が絶えた時じゃ。

彼女がいつ生まれ、何を見て、何を思い、どれだけ生きてきたのか、私は知らない。

知らないが、知らないからこそ、見える物もある。


『アンタは人が好きだけど、愛してるけど、嫌いなんだ。

そんな自分も嫌いで、愚かだと思ってる。

でもさぁ………』


私はセレネを抱き上げ、右胸にそっと乗せる。


「アンタは凄いよ。

矛盾だらけで、自分勝手で、傍迷惑なトラブルメーカー、でも、いつも人を信じてる。

愛してるも、好きも、嫌いも、信じてなきゃ生まれない。

それを何百年も何千年も続けられるアンタは、誰が何て言ったって世界最高の神様だ。

私が保証する」




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