かきくけこSF
「か」どうした。
光を放って、ディスプレイが点滅している。
まさか本当に復旧するとは。
遭難した宇宙船が動くぞ!
「き」ぼうは紡がれたのだ。
よかった。
このまま宇宙の真空を、漂流し続けるのかと思った。
「故郷にかえれるぞ!」
「ばんざい!」
「家族にまた会えるんだ!」
「く」なんばかりの旅だったけれど、終わってみればいい思い出だ。
たくさんの心強い仲間達がいてくれて良かった。
この記憶はぜひ、母星の者達に語らなければ。
きっとみんな、目を丸くしておどろくぞ。
「け」はいがした。
目を覚ました。
ああ、夢だったか。
もう帰還したんだった。
いまでもあの時の事を夢に見てしまう。
それほど強烈な出来事だったもんな。
「こ」うしちゃいられない。
テレビにでるために、支度しなければ。
でも、あれ?
そういえばなんの気配で目が覚めたんだっけ。
眠っていたベッドの上に目を向ける。
そこには、遭難の原因となった「それ」がーー
宇宙船に穴をあけた「それ」がーー
衝突後にいなくなったはずの「それ」がーー
天井にはりついていた。