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2.種明かせば風読みの加護



「お嬢様はなぜこのようなことが出来たのでありんすか?」


 先日大娼館の仲間入りをした獣人娘、カエデが問うた。

 瞬く間に一夜で金貨の袋が飛ぶほどの大物に上り詰めた強者である。


 お嬢様アリスはくすりと笑う。


「それは我が家の女性が代々持つ、風読みの加護によるものよ。

 ああ、ちょっと」


 路端の露店へと向けられた青碧の瞳がきらりと輝く。

 そしてお嬢様アリスは、側付きメイドのミアを呼び止めた。


「その青い壺、幾らで売ってくれるかしら。

 ええ、そこの貴方よ」


 藁で編まれた筵の上に品物を並べて煙草をの煙を呑んでいた店主が、呆けてお嬢様アリスの方を見る。


 立てられた指は3本、店主から示された値は銀貨3枚であった。

 お嬢様アリスは値切りもせずに、メイドのミアから受け取った財布から金貨を3枚取り出して店主に握らせる。


「お嬢、いいんでありんすか?」

「ええ、もちろん」


 翌日、アクエリア家の家宝である玉水の壺が盗み出されたという大ニュースが帝都を駆け巡った。

 新聞にはアクエリア家から、盗まれた玉水の壺に金貨300枚もの懸賞が掲載された。


 お嬢様アリスは、アクエリア家にシルフィードの名前で手紙を送る。

 すぐにアクエリア家から馬車が飛び、お嬢様アリスの住む邸宅の門が叩かれた。


「オーッホッホッホッ!!

 家宝を盗み出されるなんてお笑い草ね!」

「くっ!」


 アクエリア家から交渉役として来ていた令嬢、エミリア・アクエリアが屈辱そうな表情を浮かべる。


 お嬢様アリスは真偽鑑定官の立ち会いのもと、昨日買った壺を高値で売った。

 売値を釣り上げて、最終的には金貨3000枚で壺を売り渡した。


「オーッホッホッホッ!!

 次は盗まれないようにきちんと管理しておくことよ!!」

「くっ!」


 お嬢様アリスは、高笑いしながらアクエリア家の娘エミリアを煽った。

 そして金貨の袋を従者に運ばせながら、連れてきていたカエデに言う。


「こんなふうに、私には物の価値の行く末が見えるの」

「……っ!」


 袋から取り出した金貨が窓から差し込む光でピカピカと光る。


「すごいでありんす!

 一瞬で金貨がいっぱいに!」

「ふふっ、そうね。

 さ、このお金で美味しいものでも食べに行きましょうか!」


 お嬢様アリスたち一行は、馬車を出してスイーツの美味しい喫茶店へと乗りつけた。


 カエデは儲けた金で買ってもらったクレープなる甘味を頬張りながら、お嬢様アリスを尊敬の眼差しで見る。


「とっても美味しいでありんすね!

 わっちは幸せでありんす!」

「そのクレープも私が流行らせたものなのよ。

 これから先、時代の風はどんどん吹いてゆくわ」


 お嬢様はフリフリのお嬢様ファッションで同じく苺のクレープを食べながら、クスクスと笑う。


「このくらいで満足してちゃ、風に置いていかれるわよ?」

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