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異世界を救えハムサンド 〜無双の秋 女神の事情も色々大変〜  作者: 一星
第三章 秘密結社〝青藍〟に迫りましょう
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なんてヴァイオレンスな幼女だろう

〇前話のあらすじ

マロンの身代わりに銀杏が攫われたよ!

 月影が目を覚ますと、そこには知らない天井が広がっていた。



「……っ、一体、」



 ここはどこだ? 何がどうなった? 何故ここに? 徐々に、しかし速やかに、月影の脳は気絶直前までの記憶を取り戻していく。



「そうだ……街はっ⁉ ドラゴンは……っ⁉」


「ドラゴンは街の外でギルマス直々に相手してるよ。安心しろ、〝滅竜伝説〟の名は伊達じゃねぇ。……いや、俺だって、この目で見ても信じらんねーけどな」


「ギル……ビビンバさん」


「ギルギガント! どんどんかけ離れていくな、いい加減覚えろ!」



 月影が寝ているベッドの傍ら、起きぬけの声に返答したのはギルギガントだった。何やら書類の山と向き合っている。


 聞けば、ここはどうやら、秋時雨町の外れにある衛兵駐屯地だという。

 住民はみんな王国の方へと避難して行ったが、月影は一刻も早く安静にすべきというギルギガントの判断で、ここで一時的に寝かしていたようだ。ギルギガント含め、いくらかのベテラン冒険者達は街に残り、取り残された住民がいないかのチェックなどに奔走している。


 外はもう真っ暗だ。

 遠くの方、街の外のさらに向こうで、生物同士の喧嘩だとは思えない火花・閃光・大爆発の数々が見て取れた。



「〝滅竜伝説〟……ぶっちゃけ半信半疑だったが、あの調子じゃ、昔ドラゴンを討伐したことがあるっつーのもマジ話かもな」


「……ドラゴン三体、一人で相手してるんですか。とんでもないですね、ジルさん」



 照山上空を通り過ぎて行ったあの三体は、月影の肌感、邪竜よりは数段格下だった。

 とはいえ、それにしても。


 アイアンベアなんかより、どう考えても圧倒的に強い。〝凶暴化〟無限組手を乗り切った月影をして、あの三体を同時に相手取れる自信は無かった。



「ああ。一体どう戦ってんのか知らねえが、人気の無い平野におびき寄せて、ずっと引き付けてくれてる。実際、街には一回も、目もくれねぇ様子だぜ奴らは」


「もしかしたら、銀杏さんが何か特殊な魔法でも使ってるのかもしれないですね……ああ、そういえば銀杏さんは?」


「ん? そういや見てねぇな。お前の代わりに街にすっ飛んで行って、それ以来だ。つーかあいつ、『三日は寝てると思うので』って完全に嘘じゃねぇか。お前を投げ飛ばして気絶させてからまだ五時間とかだぞ。いや、そんだけ月影の強靭さが異常ってことかもだが」



 銀杏に投げ飛ばされて気絶されたらしい。

 なんてヴァイオレンスな幼女だろう。身を慮ってくれたのは分かるが。


 意識を失う寸前の記憶は曖昧な月影だったが、一つ謎が解けた。



「まあ、ああ見えてバカ強ぇ少女だ、お前の方がよく知ってんだろ。最悪、空だって飛べる。そこまで心配することもねーだろ。今頃きっと、他の住民と一緒に王国の方に避難してるさ」



 と、軽い声音で言い放つギルギガントに、



「――――いいえ……っ」



 否定の返答が、部屋の外から飛んできた。


 正確には、部屋の入り口。

 今まさに来たところらしい。開けっ放しのドアの前、今にも崩れ落ちそうなほどボロボロに泣き腫らしている一人の女の子がそこにいた。


 マロンが、震える声で、止まらぬ涙越しに、月影を見つめている。



「銀杏さんは……わたしの代わりに……っ、うぅ、ギルさん、月影さん……っ!」


「マロンちゃん? どーしたってんだ、こんな場所まで」


「ごめんなさい……っ、わたし、怖くて……っ。ほんとは、目を覚まして、ずっと起きてて……。でも怖くて、何もできなくて、寝たフリしてて……銀杏さんが、わたしのせいで……っ」


「? とりあえず、落ち着いて……どうしたの? 銀杏さんが何だって?」



 縋るような、悔やむような声でたどたどしく喋るマロン。

 最後の月影の問いに、言い淀みながらマロンは、端的に答えた。


「わたしの身代わりに……誰かに、どこかに、攫われました……っ」


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