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異世界を救えハムサンド 〜無双の秋 女神の事情も色々大変〜  作者: 一星
第三章 秘密結社〝青藍〟に迫りましょう
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〝滅竜伝説〟vs ドラゴン群

◯前話のあらすじ

月影を気絶させて銀杏が街に向かったよ!

 考えてみれば、違和感の残る話なのだ。

 昨日の〝凶暴化〟アイアンベアはそもそも、何故あのとき、あの場所にいたのだろうか?


(研究所で見たメールには『作戦失敗』とあったのです。『実験』ではなく『作戦』。彼らは、アイアンベアを使って何かの作戦を実行中だった……では、それは一体?)


 竹箒に乗った銀杏は猛スピードで空を滑空し、瞬く間に照山を越え、街へと到達する。


 蹂躙、という言葉がピッタリだった。


 秋時雨町の上空。

 三体のドラゴンが大空を支配し、大暴れしている様はさながら暴風雨だ。


 いや、

 正確には、三体と、一人。



「ジルさん……っ! 状況は?」


「……っ、銀杏か。空も飛べるのかお主は」



 住宅街の一角、赤い三角屋根の上。

 戦闘は最初からピークのようだ。限界まで研ぎ澄ませた殺気全開の、ジルの眼光が三体のドラゴンを見据えていた。


 すぐ傍にホバリングした銀杏に、ジルは短く答える。



「街に被害を出さないようにするので手一杯。少なくとも避難が完了するまで、討伐はちと厳しいの」



 言われて、銀杏も気付く。

 地上に広がる光景。死体が一つも転がっていない。どころか、見える限り、血が流れている様子が無い。


 どころか。

 住宅、道路、木の一本に至るまで……街の景観に、欠損一つ無い。



「……、ドラゴン三体相手に、流れ弾一つ出さずに戦っていたというのです?」


「これでも〝滅竜伝説〟と呼ばれた儂だ。竜との戦闘くらい心得ておるわ。老いたとて、英雄を引退したつもりはない」



 そう簡単に言えることじゃない。

 強ければできることでもない。

 自身の実力、敵の能力、展開の把握と戦闘の掌握……あらゆる要素を正確に理解してコントロールして、初めて可能な芸当だろう。曲芸とさえ言っていい。


 ましてや。


 銀杏の見立てでは、ジルの実力はせいぜい、三体の中で一番弱いドラゴンと同程度。


 およそ絶望的な戦力差にも関わらず、そしておそらくジル自身もそれは分かっていながら、一番難易度の高いゲームに挑もうとする心にまず、脱帽だった。



「……一つ、訂正するのです。月影さんはまだまだ、ジルさんには敵いそうにないですね」


「ふむ、その様子だと、そっちは間に合ったようだな。月影は無事か」


「まあ、無事とは言えませんが」


「生きているなら結構。死線を越えて男は強くなる。――――ときに銀杏。儂が全力でドラゴン退治できるよう、協力してくれるな? さしあたって頼みたいことが二つ」


「心得ました」



 問答無用。分かり切った要求をいちいち聞いてる無駄な時間は今は無い。

 最速最短、最適を求めて銀杏は動く。


 ジルの背中に押し付けられた銀杏の手。直後、ジルの全身が仄かな光を放ち始める。



「これは?」


「とある魔法のエネルギーをあなたに〝エンチャント〟しました。――――〝カリスマ〟。生物の本能に呼びかけ、引き寄せる魔法です。理性無き魔獣……あの三体のドラゴン程度ならあなたに釘付けでしょう。どれだけ逃げても執拗に追ってくるです」


「なるほど、住民の避難よりフィールド変更の方が容易いか」


「それともう一つ」



〝住民の安全〟ともう一つ、ジルの『頼み』の二つ目。

 ジルが心置きなく全力で戦うために。



「マロンさんはお任せください」


「……。すまんな、頼む」



 ジルはドラゴンへと向き直る。

 その寸前に一瞬見せた表情には、意外の二文字が表れていた。


 暗黙のうちに全てを察していたことへの、意外。

 街への被害はともかく……マロンのことが不安で全力を出せないというのは、個人的な心の機微だ。



「失礼ながら、お主はもっと、人の心に不得手なものと思っていたよ。軽視しているとまでは言わんがの」


「……軽視など、できませんよ」



 心の強さを、その力を、銀杏は目の当たりにしたばかりだ。



「では、武運を祈る」


「お互いに」



 ダンッ、と力強く地を蹴ったジルは、次の瞬間にはその背中が遥か遠くに。三体のドラゴンもまた彼を追って飛んでいった。


 それを見届け、銀杏は目を閉じて集中する。


 ――――〝魔力サーチ〟。


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