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異世界を救えハムサンド 〜無双の秋 女神の事情も色々大変〜  作者: 一星
第二章 冒険者ギルドで一目置かれましょう
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勝ったのにっ!

◯前話のあらすじ

ギルドAランカーのギルギガントさんと決闘になったよ!

 結果から言うと、月影の圧勝だった。


 ギルド裏の訓練場を借りて行われた私闘。

 制限なし、魔法も武器も何でもアリの、殺し合い未満の模擬戦闘。

 ギルギガントは炎の魔法を多用し、多彩な手段で攻撃を仕掛けてきたが、その全てを正面から粉砕してみせた。



「〝月影流〟――――〝燃焼・砲拳〟」



 避けるでも、受け流すでもなく、魔法エネルギーを纏った自身の肉体をもって、撃破。

 それも、同じ〝炎〟でだ。魔法の力量差でさえ、目に見えて明確に。

 これではもう、ギルギガントはどうあがいても月影には勝てない。先程の格闘よりも、文字通り、火を見るよりも明らかなギルギガントの敗北となった。


 全ての魔法を打ち破りながら、脇から飛びかかってきた子分二人を沈めながら、ギルギガントのみぞおちに回し蹴りをヒットさせKO。残心を取る月影の目の前に、意識を失った三人分の屍が転がっている光景が出来上がったのだった。


 野次馬集団の中に混じり、おろおろと見守っていたマロンの心配が滑稽なほどに。


 秒殺、という言葉があまりにも正しい。時間にして、ものの数秒。しかし、



「少し、時間がかかりすぎですね。無駄な動きが多すぎます。有効打も3つ貰ってます。減点なのです。総合評価……Dですかね」


「ぐ……、勝ったのにっ! ちょっと厳しすぎませんか銀杏さん!」


「相手が邪竜さんだったときとは話が違うです。この程度の戦闘、勝敗なんてハナから評価基準ですらありませんよ。勝利は大前提とした、月影さんの立ち回りの評価なのです」



 ここまで叩きのめしてようやく溜飲が下がったのか、平常運転で厳しい言葉を投げる銀杏。対し、不憫な低評価に涙を呑む月影もまた平常運転だ。

 三人分の骸を前にして、日常通りの掛け合いを繰り広げる二人。


 その光景に、唖然としているのは周囲の野次馬だった。先程と違い、もはや称賛の一つも飛んでこない。

 言葉を失う、という言葉を全力で体現していた。


 そんな、野次馬たちを掻き分けて。

 一人の、初老の男が顔を覗かせた。



「――――少々、いいかなお主達?」



 誰だろう。フォーマルな服装に身を包んだ、白髪の初老男性。

 体つきや眼力、雰囲気が若々しく健康的であり、実際年齢は見た目よりもっとずっと上なのかもしれない。その程度の印象しか月影は抱かなかったが、



「ここのギルドマスターですか? それとも、S級冒険者か何かで?」



 男が問いかけるや否や、そんな質問で返す銀杏。

 気を悪くした様子もなく、「ほう」と男は感嘆とも驚愕ともつかない相槌を漏らす。



「いかにも、儂はこのギルド〝夕暮れ紅葉(メイプルフォール)〟のマスターだ。何故そう思ったのかね?」



「いやまあ普通に、そろそろ出てくるかなーと。経験則というか、テンプレというか。この異質な状況にも構わず一歩前に出て声をかけてくる程度には、発言権の強い人物なのでしょう?」



 それに、と銀杏はさらに続ける。



「あなた一人だけ、実力があまりにも、図抜けているように見受けられたので」


「……一目見ただけで実力を把握できたと?」


「サーチ系の魔法は私にも使えるので。そうじゃなくても、歩き方や姿勢、体捌きに戦闘術のレベルは表れるでしょう? 伊達じゃない戦闘力に加えて、尋常じゃない魔法の実力。……よくぞ、そのレベルまで至れたものです。この世界の粗まみれな理論体系で、よくぞ。並の人間では到底不可能。天才と呼んで差し支えないですね」


「て……てめぇ、ギルマス相手に、なんて上から……無礼だろ!」



 倒れ込んでいるギルギガントが声を絞り出し、銀杏を諫める。

 が、そんなギルギガントにギルドマスターが「よい」と制す。



「純粋に褒め言葉と受け取ろう。『サーチ系の魔法』のう……お主も〝異能(オリジン)〟の使い手か。興味本位で聞くが、お嬢さん。儂の強さはお主の尺度で言えばどの程度かね?」


「そうですね。今の月影さんでは、勝つのは少々厳しいかと」


「……ほっほっほ。お主の相棒によほどの信頼を置いていると見える」



 男は愉快そうに笑う。



「ただの事実です。理論に基づくデータ分析に信頼も何もないのです」


「それを信頼と呼ぶのだよお嬢さん。現実は理論と違ってなかなか期待に応えてくれぬもの。疑いようのない事実として軸とする程度には、彼が強いということだ」


「…………」


「儂などまだまだ修行中の身。かつて冒険者を極めた末、引退した今でも求めてやまぬのが強さというものよ。未知の強者を前に心躍るというのは、何年ぶりの経験かの。――――どれ、少々試してみようか」



 彼の眼光、がとんでもない勢いで膨れ上がった感覚。



 ぞわり、と。月影の背筋に、どこか覚えのある死の恐怖が這いずり回った。




 ――――BBBooOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOォォオオッッッ‼‼‼‼





 咆哮が、空間を支配した。


 気がした。

 気がしただけだ。現実として、そこには初老の男が一人、ただ突っ立っているだけにすぎない。ドラゴンなんてどこにもいないし、咆哮なんてどこからも聞こえない。


 食い殺されたかと錯覚するほどの、魂に響く重圧。


 言葉で説明できない究極の危機感だけが月影を襲う。聞こえてくるのは、次々と泡を吹いて気絶していく周囲の冒険者達が、地面に倒れ込む音だけだ。


 やがて、



「〝竜圧〟――――かつて儂が死闘の末に倒したドラゴンが使っていた魔法の一つだ。まともな神経では意識を保つことすらままならんほどの、精神干渉系の〝異能(オリジン)〟だな。儂がこれを習得してから、さらに修行を重ねて段違いに強化しておる。はずなんだがな。……見事。そこまで涼しい顔で耐えられるとは思わなんだ。竜種との戦闘経験でもあるというのかね?」



 彼は指一本動かさぬまま。月影と銀杏、そしてマロンを除く、野次馬に集まっていた全冒険者が地面に伏していた。


 死屍累々。そんな光景を目撃したのは、月影の人生で二度目だった。


 それも、両方、たった一人の蹂躙によって。



 ――――『ひとまず俺と同じくらい強くなれば、誰にも負けねーよ。もう人助けに迷うな。後悔しない道を選べる、強い男になるとここで誓え』



 最強、の二文字が相応しい男というのはどの世界にもいるものだ。


 非戦闘員ということで意図的に攻撃対象から外されたのであろう、何事もなく立っているマロンが溜息混じりに声を漏らす。



「お祖父ちゃん……やりすぎです」


「修行不足。ただそれに尽きるわい。全快のギルギガントなら耐えられたかもしれんがの」



 マロンはギルドマスターの孫だったらしい。孫の苦言をばっさりと一蹴し、彼は改めて月影達に顔を向けた。



「改めて、儂はここのギルドマスター、ジルと言う。この騒動の一部始終は把握している。遅くなったが、ギルギガント達の非礼を詫びよう。うちの者が失礼したな。……ところで、マロンが話していた流浪人とはお主達のことだろう? 何でも、冒険者になりたいとか。――――応接間に来い。少々話をしよう」


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