忘れ物
今日も二人は会話を始める。
忘れていたよ。
何をですか。
何もかもだ。
それは悲しいですね。
全くだよ。
我々の関係性も忘れましたか。
無論だよ。日本語でさえも現在習得中なのだ。
ここがどこかも思い出しませんか。
その表現はまるで責められている様だがね、まあ、しかし思い出さないよ。
辛いですよ、本当に。
人間誰しもこういう折があるものだよ。
空も泣いていますよ。
大量の塵が降ってきている、ということだ。
涙のあまりのチリガミですか。
詩的とは言い難いようだ。
詩人でもありませんから。
まあ、失われたものはまた手に入れればいい。作りでもして。
不可逆的に失われることがほとんどです。
まあ、代用品でも構わなかろう。
代用品はあくまで代わりに用いているだけの品です。
代わりがいるのなら良いだろう。
それに失われた記憶の代わりになる記憶なんてありませんよ。
まあ、仕方がなかったということだ。切り替えていこう。
残すものと残されるもの、どちらが辛いかということです。
僕に想像力がないとでも言いたいのかい。
そういうわけでもありませんが。
まあ、切り替えていかざるを得まい。
感情はそう簡単にはいきませんよ。
ロボトミー的なことでどうにかならないかい。
不可逆的なのでちょっと。
時間がほぼ不可逆なのだから仕方ない。これもまた運命だよ。
まあ、あまりお変わりはないようで少しは安心でしょうか。
僕自身を見てくれないのは少し寂しいでしょうか。
人は今では無く過去に縛られています。
全くもって不自由極まりないね。
平等ではありそうですが。
そのくせ公正ではないがね。
二人の会話は続いていく。