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いと愛しき君たちへ  作者: おおよそもやし
二章:Re:Re:Re:start
61/79

学園

陰陽寮星辰(せいしん)支部付属、彌栄(いやさか)異能学園。

東都結界の中央に位置するこの学園は、全国各地に点在する異能者のための学園のうちで最も規模が大きい学園だ。

初等部から高等部まであり、中等部からは異能者は魔導科と陰陽科、そして異能を持たない者は剣士科、というように分けられる。

初等部は義務でないからか、人数も比較的少なく、魔導師も陰陽師も関係なく『総合異能科』にまとめられている。


つまり。


「なんだよ!『おんみょーじ』のくせにー!」

「はー!?そっちこそ『まどーし』のくせに!」


学科が分かれていないため、陰陽師と魔導師間の対立が激しいのだ。

なんかもう、お馴染みの光景すぎて懐かしい。俺も一周目の時は派閥率いて突っかかったりしてたな・・・もうやらないが。みっともなさすぎて、思い出すのもキツい。


特性ごときで対立してもなにも良いことなどないのだ。ただどうしようもないところまで堕ちていくだけである。・・・一周目の俺みたいに。

とはいえ、『宍戸』の名を背負ってしまった以上、中立でいるのもなかなかに難しいのではなかろうか。六大家門のひとつであるが故に、魔導師派閥の旗印とするには今の俺はあまりにも都合が良すぎる。


・・・どうすべきだろうか。下手に口を挟めば巻き込まれることは必然だ。


止める方法を考えながら、教室の前方でわあわあと諍う様子に目を向ける。

手は出ていないとはいえ、まだ六歳児。殴り合いのケンカに発展するのも時間の問題だ。


教員呼んでくるか___そう思い廊下へ向かおうとした、その時。

同じように遠巻きに眺めていたうちの一人が、声を上げた。


「そんなくだんないことで、けんかするのはやめなさい!」


その女の子は金に近い茶髪と大きなリボンを揺らして、騒いでいるクラスメイトたちにビシッと人差し指を突きつけた。


「なんだとー!?おまえにはかんけーないだろー!?」

「かんけーあるわよ!わたしだって、おんみょーじだもの!」

「うるせーよ!」


騒いでいたうちの一人が、女の子を突き飛ばそうと手を伸ばし___


「・・・えいっ」

「う、わーー!?」


制圧されていた。それはもう見事な大外刈りで。


「ふん。よわっちいくせに、こえだけはおおきいのね。」


女の子___六歳の西園寺は冷たい声でそう言い放った。


***


西園寺家。

六大家門である総角(あげまき)家と親戚関係にある陰陽師の権門。

六大家門でこそないものの、数多くの陰陽師、そして戦力補助を担う部隊『八咫烏(やたがらす)』の巫女を輩出してきた有力家門だ。

そしてその現当主の長女こそが前回軸で俺を叱り飛ばし、今目の前にいる彼女だ。


彼女は一周目から前回までのいずれの時間軸でも『八咫烏』の筆頭巫女にまで上り詰めているほどの戦闘補助の実力者であるが、それと同時にとんでもない程の武闘派だった。


だから___


「うわー!」

「わー!」

「ふざけやがっ・・・うわああああ!」


西園寺は涼しい顔で次々と襲いかかってくる六歳児たちを軽々とあしらって制圧していく。

第二次性徴期前でまださほど体格に差がないとはいえ、ここまで鮮やかに無力化していくのは相当の技術があってこそだろう。


あまりの手際の良さに思わず見入っていると、ふと彼女の灰色の瞳と目が合った。


「・・・なにかよう?」

「いや。ただすごいなーとおもって。」

「そう。」


「ならいいわ」、と言って西園寺は興味なさげに倒れ伏している同級生を一瞥(いちべつ)した。

そしていつまでも立ち上がらずに(うずくま)っている彼らに嫌気がさしたのか、やがて廊下へと去っていった。


・・・そういえば、前回までで西園寺と同じクラスになったことなんてあっただろうか。

俺が『平里』ではなく『宍戸』であることで、流れが変わったのだろうか。


この変化が良い流れであることを願って、俺は教員を呼ぶべく廊下へと飛び出した。

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