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いと愛しき君たちへ  作者: おおよそもやし
前日譚:不揃いな式盤
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淵瀬に変わるとも③

___それから十五分後。


なんとか魔力操作のコツを掴んで及第点をもらった神原と私は、例の新種に見つからないように墓石を利用しながら墓地を進んでいた。このまま見つからずに抜けられたら良いんだけど。


「久山さん大丈夫?・・・平里さんも一緒に来られたら良かったんだけど・・・」

「ほんとにね。でも本人があそこまで頑なに動かないんじゃ仕方ないもの。」


平里さんは、私と神原が魔力操作を問題なくできるようになったことを確認すると、その場に残ることにしたようだった。神原が説得しようとしてたけど、結局は平里さんの気迫に押されて言い負かされていた。

護身用のナイフがあるとは言ってたけど、ただのナイフ一本であの場に留まるだなんて危険すぎる。急いで脱出して助けを呼ばないと。

それにしても、平里さんはどれほどの修羅場を潜ってきたんだろう。確実に死線を越えてきた人間の目をしてた。無事に帰れたら教えてくれるだろうか。


・・・とにかく、今は早くこの霊域から抜け出すことが第一だ。いくら平里さんが実戦慣れしてるとしても、魔力切れの状態で長時間持ちこたえられる訳ないもの。


「・・・あ、久山さん止まって。枯木霊(トレント)だ。」

「距離は?」

「二十メートルくらい。・・・大丈夫、気付かれてないみたい。」

「そう。じゃあなんとかやり過ごして・・・」


先に進もう、と言いかけたところで、後ろから大きな雄叫びのような、あるいは悲鳴のような声がした。ハッとして振り向くと、あの新種がこちらに向かって来ているのが小さく見えた。


「やば!来てる!」

「こっちも気づかれた!」


このままだと挟み撃ちにされる。でもまだ距離は開いてる。なら___!


「神原、交代!」


前にいた神原を押しのけて弓を構える。新種はともかく、こちらの枯木霊の弱点はわかってる。普通のより足が速いとはいえ、基本系統が樹木系なら燃やせばいいだけだ。

魔力を込めて矢をつがえる。切り替え機能がない以上、属性付与は自力でやるしかないけど私はその方法を知らない。だから。


「・・・久山さん!?嘘でしょ!?」


焦る神原をよそに、私は魔力の上からさらに霊力を乗せる。薄く、無駄にリソースを割かないように、慎重に。


「・・・ッ!」


残り十メートルほどのところまで引き付けたところで矢を放つ。私の雷を載せた魔力の矢は、バチバチと火花を散らせながら、トレントの空っぽの洞に吸い込まれていった。

バンッ、と大きな音を立てて、枯木霊は思ったよりもよく燃えた。そのまま倒れ込むと、しばらくジタジタとしていたが、やがて動かなくなった。倒せて気が緩みそうになるのを押さえて、ぐるりと後方へ向き直った。

問題はまだ解決していない。

そのまま弓を構え直すと、同じく新種の来る方向へ銃を構えている神原が見えた。神原は何か言いたげにこちらをちらりと見ると、そのまま何も言わずに照準を合わせることに集中しだした。


残り三十、二十五、二十メートル・・・のところまで新種が近づいたところで急に


ドンッ


と新種の足元で何かが爆発した。何が起こったのか分からなくて、新手の怪異が現れたのかと焦っていると、墓石の隙間から白金色の髪が見えた。


「平里さん!?」

「あっ!バカ!声出すな!」


思わず私が叫ぶと平里さんは焦ったようにそう返した。しまった、と思った時にはもう遅かった。新種は平里さんに気付くとそのまま目標を平里さんに変えた。とても見た目からは想像できないスピードで平里さんに襲いかかる。今から矢を放っても、神原が銃を撃っても間に合わない。このままじゃ平里さんは・・・!

私のせいだ・・・!


「・・・仕方ねぇな。これでも喰らえ!!!」

「え?」


平里さんが何かを投げつけるとまた新種の足元が爆発した。でももう魔力なかったはずじゃ?まさか手榴弾でも持ってたのだろうか。


でもあの怪異相手にそれだけじゃ、平里さんが危険だ。


そう思って、援護をするべく脆そうな首目掛けて矢を放つ。しかし新種はグルンっとこちらを向いて、そのまま首をしならせ矢を叩き落とした。しまった、と思った。しかも、今のを外したせいで私に狙いが向いてしまった。


怪物は唸り声をあげて私を見据えると一瞬動きを止めてニタリ、と口角を上げて笑った。まるでずうっと捜し求めていた獲物を見つけた捕食者のようだった。新種はそのまま首をもたげると、こちらに一直線に向かってきた。


「・・・このッ!」

「ギャァァァァァァァ!!!」


神原が新種の足元を撃ち抜いた。新種は痛みに叫び声をあげながらも、足を止めずに一直線に駆けてきた。どんどん私と怪物の距離は縮まっていく。避けなきゃいけないのに足が固まって動けない。もらったペンダントを使わなきゃ、とも思うのに手は弓にくっついてしまったように離れてくれない。

まばらに生えている黒い毛の隙間から、黒く淀んだ金の瞳が覗いているのが見えた。遠くで二人が何か叫んでるのが聞こえる。

ゆっくりと揺れていく視界の中で私は、ただただその眼を眺めることしかできなかった。



ごめんなさい、やっぱり私は駄目な子だった。

どうせ何も変わらないんだ。

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