隠せばより現る
「っていうか。怪異についての情報を集めかったんなら裏方回るか情報部行った方が良かったんじゃないっすか?」
俺の説明に松也はサイダーの最後のひとくちを啜り終えると、そう切り出してきた。
「それ、は・・・。それは・・・きっとそれじゃダメなんだ。」
テーブルの横に突っ立ったまま俺が首を横に振ると、松也は訝しげな視線を投げかけた。
「なんでですか?」
「それは・・・」
あの事を言っても良いのだろうか。・・・松也を巻き込んでも。
それに、そもそも信じてもらえるのか?
「・・・平里さん?」
「いや、その。えっと・・・」
・・・いや。西園寺に言われた通り、このまま言わなければ何も変わらない。それに、もしかしたら協力してくれるかもしれないだろ。
「・・・実は」
意を決して口を開いた直後、入店を知らせる鈴の音が静かな店内に鳴り響いた。
「おつかれさまでーす!」
「!・・・ああ、望月さん。お疲れ様です。」
「平里くんおっつかれー!・・・ってあれ、お客さんいたんだ。珍しー。」
「望月さん!」
「あっ、ごめんごめん!ごゆっくり~。」
どこか軽薄そうな雰囲気の漂う亜麻色の髪の女性は、にこやかにそう言って『関係者以外立ち入り禁止』と裏紙にマジックペンで書かれた札の貼ってある扉の部屋に入っていった。
「・・・・・・平里さん、今の方は・・・」
「・・・・・・・・・・・・店長だよ。」
「大丈夫なんですか?このお店。」
「さぁ・・・俺はバイトだからなんとも・・・」
「甲等級魔術師が何言ってんですか。」
「『元』だよ。」
「はいはい。」
望月さんの態度に色々と言いたげな松也から思いっきり顔を背けて窓の外へ目を向けた。
仕方ないだろ。態度がアレでも店長なんだから。
松也のじとっとした視線に心臓がきゅっとして胸に手を当てて深呼吸した。
本当に仕方ないんだ。だからその目で俺を見ないでくれ。
なおも突き刺さり続ける視線にダラダラと冷や汗をかきながらも耐えていると、勢いよく扉を開けて制服に着替えた望月さんが出てきた。
「お待たせー!じゃ、平里くんもう上がっていいよー。」
「あ、はい。・・・じゃあ古賀。俺はちょっと着替えてくるから・・・」
「分かりました。話の続きはその後にしましょっか。」
そう言った松也はにっこりと笑顔を浮かべながらも目の奥は笑っていなかった。
あー、これは面倒なやつだ。神原がよくやってたなコレ。
内心憂鬱になりながらも「そうだなー」と軽く返して先程望月さんの出てきたロッカー室に向かう。そしてドアノブに手をかけた時、ふと望月さんが声を掛けてきた。
「あ、そうだ。平里くん。」
「はい?」
「この間探してたやつ、見つかったから机の上に置いておいたよ。忘れないうちに持って帰りなー。」
「!・・・はい、ありがとうございます。忘れないように気を付けますね。」
俺は動揺を気取られないように、振り向いて笑顔で会釈して部屋の中へ飛び込んだ。
そしてロッカーの脇にある木製の円いティーテーブルの前へ行くと、机の上の紙袋・・・ではなく天板の下に張り付けられている紙片を抜き取った。
「・・・・・・。」
俺はメモの内容を確認して、そのまま紙袋の中のCDケースに挟み込んだ。
「・・・ま、確かめる価値はあるよな。」
そう呟いて、俺は何事もなかったかのように帰り支度を始めたのだった。




