駿河
___一ヶ月後。
駿河湾近郊にて。
次の繰り返しまでにできる限り情報を集めるため、俺は怪我を理由に前線を離れて隠居することにした。
とはいえ、闇雲に動けばその分体力が奪われて体調を崩したり怪我が悪化しかねない。
で、あれば。人の集まる場所でそれとなく収集するのが良いだろう、と俺は結論づけて景勝地___かつ怪異の報告が少ない場所___の喫茶店でアルバイトをして情報を集めることにした。
白を基調とした店内はテーブル席が二つとボックス席が一つ、そしてカウンター席が四つ程しかない。
すぐに雇って貰えたのは運が良かったが、観光地にあるにしてはこぢんまりとしているし、お世辞にも繁盛しているとは思えない。
早まっただろうか、と台布巾を片手に明り取りの天窓から燦燦と差し込む陽光に目を細めていると、ふと、外から足音が近付いて来るのが聞こえた。
「いらっしゃいませー・・・って、あ。」
ドアに取り付けられた鈴がチリンと軽やかな音色を店内に響かせ客の入店を知らせ、それに反射的に「いらっしゃいませ」の決まり文句を返した。が、入口に立っている青年の姿を見て、ただの客ではないことをすぐに悟った。
「お久しぶりです、平里さん。」
目元のほくろが特徴的な黒髪の青年は、そう言って翡翠色の目を細めた。
その顔がよく知った二人に似ていて、胸の奥が酷くザワついた。




