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プロローグ
軽薄な電子音が耳障りだった。
薄らと目を開けると、見知らぬ天井が見えた。何処だろうか、と起き上がろうとして、自分がベッドに固定されていることに気付いた。
エタノールのツンと鼻につく臭い、液体の滴る音。順当に考えれば病院なのだろうが、それなら足下の方に見える黒板は何なのだろう。
「あ、やっと目が覚めたのね。アンタ、一ヶ月も寝てたのよ。」
ふと、声がしたのでそちらに目線を向けた。輪郭がぼやけてよく見えなかったが、聞き覚えのある声だったので
「・・・桐生?」
と、心当たりのある名を呼びかけた。
「ええ。記憶に問題はなさそうね」
彼女は頷いて立ち上がると、カチャンと椅子を畳んで壁に立て掛けた。
「今、お、れは・・・?」
喉が引っ付いて上手く声が出せない。なんとか絞り出して問いかけると、彼女はゴソゴソとジャケットの胸ポケットを探った。そして小さなコンパクトを取り出すと、開いてこちらに向けた。
鏡の中の自分を見て俺は絶句した。
間違いない。
三週目の平里蓮だ。




