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いと愛しき君たちへ  作者: おおよそもやし
【番外編】桐生ちゃん単独任務(随時更新)
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【番外編】桐生ちゃん単独任務④

東都駅ビルの一階、出入口から程遠い位置にその古本屋はあった。人もまばらな店内は大量の本が所狭しと並べられた本棚に収められており清潔に保たれているように見受けられるものの、お世辞にも繁盛しているようには見えない。

古本屋から少し離れた、チラシがベタベタと貼られている通路の円柱の陰から店内の様子を窺っていると、隣でそれを見ていた梶浦刑事が呆れたような声で話しかけてきた。


「なぁー、桐生さんよ。普通に入ればいいんじゃないか?」

「そりゃ・・・そうしたいのは山々なんですけど。もしここが呪術師の巣窟で、お客さん(民間人)が人質に取られたり巻き込まれたりしたら大変でしょう?」


人差し指をぴっと立ててそう説明すると、梶浦刑事は

「なるほど、そういう場合もあるか」とあっさりと引き下がった。


他の刑事や警察だったら、こういう時食い下がるのに。


意外そうな表情で梶浦刑事を見ていると、梶浦刑事は気まずそうな顔をした。


「なに?おじさん変なこと言ちゃった?」

「いえ・・・ただすんなり聞き入れてもらえたのが初めてだったもので・・・」

「あぁー・・・」


私がそう答えると、梶浦刑事は腑に落ちたように頷いた。


「おじさん達、平和ボケしてんのよ。物心ついた時にはもう結界があったから。だから効率を求めようとしてリスクに気付かないことが多いのね。」

「なるほど。」


怪異を見た事がないのなら、確かにそういう態度にもなるのかもしれない。・・・だからといって許容はできないけれど。


「ところで呪術師と異能者ってどう違うんだい?おじさん詳しくなくてさ」


何かを感じ取ったのか梶浦刑事は両手を胸の前で合わせてそう問いかけてきた。確かに一般人には違いが分かりづらいのかもしれない。


「えぇと・・・まず異能者、陰陽師と魔導師は『生まれつき霊力と魔力が備わっている人たちの呼称』だというのは知ってますよね?」

「おう。」

「それに対して呪術師は『後天的に怪異と同じ不浄の力で異能を扱えるようにした人たちの呼称』なんです。」

「へぇ・・・ってことは異能者と違って元々一般人だったってことか。しかも異能者ではないからデータベース登録されていない。」


「厄介だなぁ」と梶浦刑事は呟いて考え込むと、はたと私を見た。


「そういえばよ、異能者ってのは見えないものを見ることが出来る技術があるって聞いたんだが・・・それは使えないのかい?」

「『狐の窓』のことですか?やってみますね。」


私は両手で狐の頭を形作ると、向き合わせてパタパタと指を組んだ。そしてそのまま中を覗き込むと、古本屋の店内に黒いモヤが掛かっているのが確認できた。


「・・・いますね、間違いなく。」

「あらぁ。」


頬をヒクヒクとしながら私が言うと、梶浦刑事は「どうすっかな」と後頭部をガシガシと掻いて目を伏せた。


「・・・いっそおじさんが囮になろうか。」

「それは・・・」


確かにそっちの方が手っ取り早いのかもしれない。でも。


「それはダメです。危険すぎます。」


異能者ではない梶浦さん一人が危険に晒されるのは許せない。


私が首を横に振ると梶浦さんは「冗談だよ」と苦笑いを浮かべた。


「でも、そんならどうするんだい。・・・いっそ異能者として堂々と入れる方法でもあれば良いんだがなぁ・・・。」

「堂々と・・・」


その言葉を聞いた私は自分の服装を確認した。制服とは違う、白いノースリーブのワイシャツに黒いハイウエストのスカート。靴もいつも学校で履いているローファーではなく走りやすいスニーカーだ。


「梶浦さん、ひとつだけ方法を思いつきました。」

「へぇ。そりゃすごいな。どんな方法だい?」

「ですが・・・その前に問題があって。梶浦さん、ひとつだけ聞いてもいいですか?」

「おう。もちろん。」


「演技力に自信はおありですか?」

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