【番外編】桐生ちゃん単独任務③
会議室の扉を開けると、ホワイトボードの前で一人の中年に差し掛かかった男性が手持ちぶたさに火のついていない紙巻煙草を指先でくるくると回していた。
「梶浦さん、ここ禁煙ですよ。」
「知ってるさ。だから火ィつけてないんだ。」
つかつかと歩み寄りながら私が注意すると、男性___梶浦刑事は無精髭を擦りながら気だるげに答えた。
「で、何か分かったのか?」
「まあ、多少は。犯行現場が二箇所に絞れましたから。」
そう返しながら胸ポケットに入れていた小型のボイスレコーダーを手渡すと、梶浦刑事は無造作にジャケットのポケットに突っ込んだ。そしてそのままポケットをゴソゴソと漁ると出鱈目な文字列の書かれた一枚のメモを差し出してきた。
「例のご遺体の検死結果だ。目を通しておいてくれ。」
「どうも。」
ウエストポーチから任務用の端末を取り出して文字列を打ち込むと、パパパッといくつかのウィンドウが開いた。画像、状態、そして霊感的な観点から見た分析結果。私はそれらに目を通して現在の必要な情報を整理することにした。
【事件について】
・怪異の仕業ではない
・呪殺=犯人が存在する
・被害者は無差別?
【被害者について】
・一週間前に参考人と一緒に古本屋へ行った
・二週間前には巡礼で日原の廃校へ行った
・遺体の目元に酷い隈がある
【呪いについて】
・首筋に特徴的な赤い斑点が浮き出てやがて死に至る
・被害者は呪いにかかってから死ぬまで一週間以上たっていた
「・・・情報が少ないわね。」
トントンと端末の画面をつつきながら私が呟くと、梶浦刑事は画面を覗き込みながら口を開いた。
「そんなら、足で稼ぐしかないだろうな。」
「やっぱり、そうですよね・・・」
結局頼れるは己の力か。私が落胆したようにため息を吐くと、梶浦刑事はケラケラと笑い声を上げて煙草を咥えた。
「車くらいなら出してやるよ。んで、どっちから調べるんだ?」
「・・・古本屋から調べます。近いし。」
「そうかい。・・・これで解決すると良いな。」
梶浦刑事は煙を吐くような仕草をして煙草を先程とは反対のポケットに突っ込んだ。




