朝川渡り②
「・・・つまり私のことを憐れんでるってこと?」
「ちがっ・・・そんなつもりで言った訳じゃ」
「違わないでしょ!?」
数分後。私は神原と喧嘩していた。いや、神原が私の地雷を踏み抜いた。
「ただ、久山さんがこれから大変だろうから僕の家にしばらくいた方が良いんじゃないかなって思っただけで・・・僕らまだ子どもだし、金銭的にも・・・」
「だから衣食住アンタの家の世話になった方が良いって?同情しないでよ!」
なおもごもごもと言い淀みながら言い訳を重ねる神原の様子が、余計に私を苛立たせた。
確かにしばらくは大変かもしれないけれど、だからって神原に世話される理由にはならない。
私がなおも彼の提案を拒絶していると、痺れを切らしたように神原が問いかけた。
「じゃあ、さ、久山さんはこれからどうするつもりなの?」
「どうって・・・一般生の子達と同じように学生寮に入ってどうにかするしかないでしょ?」
何を当たり前のことを問うのか。そう感じた私は訝しげに神原を眺めた。
「他には?」
「え?」
「他に、方法は?」
「ないけど・・・?」
他の方法?一個人が、学生がどうにかできる方法なんて他にないのに?
不思議に思って首を傾げると、神原はわなわなと肩を震わせて「君は!」と叫んだ。
「なんでいつも一人で抱え込もうとするの!?」
いつも大人しい優等生の神原の、慟哭にも似た言葉に言葉を失った。
「なんで周りを頼らないの?君が思ってる以上に風早さんだって平里だって君のことが大事なのに」
もちろん僕だって、と付け足すと、神原は目尻に涙を溜めて俯いた。
___私が大事?彼らが?
「・・・ああ。戦力として、ってことね」
「・・・は、」
「スコアだけ見れば有望株だものね、私」
「違う・・・」
「違わないでしょ。私たちは異能者なんだから」
「違う!」
「何が違うのよ!戦わなきゃいけないから!戦力が欲しいから大事なんでしょ!?」
「そんな理由でここまで来るわけないよ!」
もはや最後は絶叫と呼ぶに相応しい本音のぶつけ合いだった。
本当は分かってる。でも、私は弱いから一線引かないと、保険をかけておかないと怖いの。
威嚇、咆哮。切望、渇望。
そんなレベルの、原始的な言葉とも呼べない音の羅列で言い争っていると、突然パンッと乾いた音が響き渡った。
「・・・お前ら何してんだ?」
その音の起点には、白金色の彼がいた。




