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いと愛しき君たちへ  作者: おおよそもやし
前日譚:不揃いな式盤
10/79

莠梧ャ。隕夐?:遐エ螢雁屏蟄

轟音。


地響きとも、あるいは倒壊音とも判別つかないような音で私はハッと我に返った。

びっくりして、音の正体を探ろうと窓の外に目を向けた。けれどすっかり日が暮れて、外は真っ暗闇に包まれていて何も見えなかった。


逃げなきゃ。・・・でも、どこに?どうせこれからも良いことなんて、ないのに・・・・・・。


無意識にぎゅっと自分の体を抱き締めたところで、拘束具が外れていることに気が付いた。

あんなに頑丈だったのになんで外れているんだろう?知恵の輪みたいにうまいこと取れた、とか?

不思議に思って手首に目を向けると、腕にポツポツと黒っぽい斑点が浮かび上がっていた。もしかすると、拘束されてた間に鬱血してしまったのかもしれない。

暗くてよく見えないなぁ。近付ければもう少し見えるかな。

私はじっと目を凝らして、腕を顔の前に近付けた。


「・・・え、?」


()()は鬱血痕などではなかった。その部分だけ、まるで爬虫類___カブトトカゲとか___の鱗のようなものが出ていた。怖くなって、剥がそうと爪を突き立てると、バヅンッと頭に電流が流されたみたいに激痛が走った。


「・・・ッあ、?・・・いたい・・・」


痛みで指先が跳ねて、血が数滴飛んだ。鮮血は畳の上に点線を作ると、じんわりと黒く滲んでいった。とてもじゃなけど、剥がすことなんてこれじゃできない。それどころか、ジクジクと痛む傷の中から新しい鱗が覗いている。


「どうして・・・なんで!」


痺れたままの頭で、答えの返ってこない問いを叫んだ。

自分の変化が信じられなくて、背骨が氷柱になってしまったかのような鋭い寒気にガタガタと震えて、ぎゅうっと膝を抱え込んだ。まさか、私はこのまま蜥蜴にでもなってしまうのだろうか。


そんなのは嫌だ。だって、そんな風になってしまったら、きっと本当に取り返しがつかなくなってしまう。謝れてないのに___そう呟くと、なぜだか涙がボロボロと零れた。


どうしてだろう。あんなにアイツのことを嫌ってたくせに。どうして、今はアイツのことを考えているんだろう?


突き放したのは私なのに。何を期待してるの?

冷たい畳の隅で蹲って、怯えて震えることしかできない。そんな私がもう一度、なんて叶えられるわけが無いのに。アイツは前を向いて進める人だから、きっとこんな状況になっても怯えて何も出来ないなんてこと、ないんだろうな。


狭い座敷牢の、六畳一間がふと酷く空虚に感じた。きっと私のことを心配して、優しい言葉を向けてくれる人なんて誰もいない。私が、私のせいで、拒絶して、傷付けてきたから。

立て付けの悪い窓枠から、キィキィと吹き込む夜風が鱗の表面をなぞってゆく。肌寒さがやけに身に染みた。


私もアイツみたいに___アイツの代替品だって言うのならもっと___。


膝に顔を埋めながら今までのことを想った。こんなことになるなら、意地はらないで、あの時にちゃんと話していれば良かったんだ。


そしたら、今頃笑っていられたのかな。


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