十五話、何故
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「」◆◆◆
翌日、朝起きてから旅館の布団の上で寝ていた二人がいた。
「……z……z……」
一人はアラカ。か細い腕と、たわわな胸に包まれながらすやすやと眠っている。
相変わらず傷だらけで、包帯まみれの体は庇護欲をそそられる。
「…………ん……」
そしてもう一方は灰色の髪を揺らして、アラカを胸の上に寝かせている。
————たわわなおっぱいの女性。
「……何か?」
「あの……なんで、え?」
アラカの下着を採取しにきたハンターを気配に女性が起き上がり、怪訝な瞳を上げる女性。
格好は男性用の半袖ワイシャツに、ネクタイ。そしてメンズスーツを羽織とする姿。
起き上がったことでぱさり……とスーツが落ちて。それをアラカの腹部にふわりと乗せた。
「あの、どなた、ですか……?」
灰色髪の美女。
「……女体化した私です。ドラゴンになるのを応用した技能で女になりました」
「どんどんなんでもありになって来ましたね」
————勿論、綴である。
「邪竜の加護、便利なの……」
「そこまで便利でもありませんよ。
魔力でメチャクチャ強引に捩じ伏せた結果です、そのためか身体の一部に鱗があったり、頭に角があって髪が盛り上がって大変なんですよ」
髪の一部に妙に盛り上がっている点があるのは、ツノを隠している故だろう。
「もし出来なかったら、女装して行動させられてたって言ったら……信じます?」
「あれ、この人目が死んでる」
その目は地獄の一歩手前で綱渡りを経験しているかのような疲労感に満ちていた。
「そういえば能力ってなんで綴さんは何個もあるんですか?」
「扱いとしては一つの能力ですよ」
「私の能力はニーベルングの指環をモデルにしたものですからね。
能力名〝邪竜〟から派生が来ているのですよ」
綴は立ち上がり、サイズのまるであっていないズボンをどうにかベルトで調整する。
「……?」
「そうですね……例えば〝火魔法〟という能力を宿した怪異がいたとしましょう。
その中に火の玉を出す力や、火の壁。果ては溶岩さえ顕現できます」
そして袖の長いスーツやシャツはそれを折り、ヘアピンを幾つか使って止めた。
「私の能力はそれを少し複雑なものになってる、というものです」
「なるほど……んで、なぜ今回女性になったのですか?」
「護衛任務でこの子の付き添いをするため、ですね。護衛対象がどうも女性らしくて……
それと同性の身体だとこの子も、余計な警戒せずに済むでしょう。
…………よし」
バサっ、とサイズの違うスーツの裾をマントのようにはためかせ、その身支度を終えた。
「そんな配慮も兼ねていたなんて……」
「まあ、後者は今気付いたんですけどね」
「いや草」
◆◆◆
身体が鉛のように、重くなってからどれほど経っただろう。
もう、身体は動かない。全然、動かない。
「…………よし、よし。
うん、同棲だとこれの嫌悪感も少なく済むみたいですね」
やさしい声 が、聞こえる。
まま……?
やさしい、こえ、あたたかい。ばぶみ、というのが、わかる気が、する。
わたし の 元 母さん、だった人————嫌だ、殺せ、今すぐ、然るべき報いと報復を。
あれ、何を、 いたい。 誰
誰 誰 だれ 誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰————殺せ。
「アラカ君」
強引に、唇、を 奪われた。
嗚呼……和らぐ、この殺意を和らぐ。でも、違う。
殺意は————殺意で殺意で、殺殺す殺殺殺殺殺殺殺殺。
「ええ、好きなだけ吸い殺しなさい。
好きなだけ殺して構いませんよ、殺され続けますから……ね?
君は今まで、死ぬほど歩き続けて来たのですから」
牙を突き立てて、殺し続ける。血が溢れる、違う。何か、違う。
あれ、わたしは、なんで。
————夏
————海
————ひま、わ… り。
————嬉しそうな、顔 ————■し■うな、顔
————■■■うな、顔 ————■■■■■、カ■
————■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。
見えない、思い出せない、何も、聞こえない。
音が、なにか、あった気がする。
人が、何か、複数人 二人 と 僕
3人じゃ ない 二人と 僕
ひま わ、 り
なに そ ■
————————誰か 助■
違う。
違う、違う。
助けなんて ない。
何故
違う 何故
何故 私は 助■を 救■
得られない、得てはならない。得ることは永劫に叶わない。絶対に、確実に、何故ー
何故 何故
それは ■■ だ から
読んでくださりありがとうございます…!




