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八話、あか

 ウェルと、別れた  直後の彼です


◆◆◆朝凪鋼視点



 何も見えない、分からない。



 今日、昔の誰かにあった気がする、分からない。




 分からない。視界が薄暗い、分からない。





 色素が見えない。何も見えない。視界の中で、なぜか赤以外の色が、見えない。


 ヒビが見える。



 ヒビが見える。視界の端に…ヒビが映る。

 口で言っても、分からないとは思うけれど、そうとしか言えない。





 まるでガラス玉にヒビが入っているような。


 ヒビの入ったガラス玉を、永遠に、ずっと…覗き続けてるような気分になる。








「————俺が、生きてる」



 手のひらを、見る。赤が出てる。

 命の証、ポケットから、ガラス玉を拾ってみる。




「……ヒビ、入ってる」



 ガラス玉には、ヒビが入っている。

 なんだ、このゴミ。消えちまえばいいのに。




「……」



 拳を握りしめる。赤がどんどん出てくる。



「……俺が、生きてる……」


 赤が、赤い、赤くて、赤い……あか、赤い、とても赤い。


 赤い、赤い……ずっと、あかい。




 ヒビの世界、あかい……


「————なんだ、それ」








 







 分からない、分からない、分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない————





「もういい加減死なせてくれ゛よ゛ぉぉぉおッッ!!」



 バン、と何かが壊れた音が聞こえる。目を向ける、ぶっ壊れた電柱と、それをぶっ壊す俺の手が見えた。



「あは、ははははは。壊れた、おれ、が」



 壊した、壊した。と嗤う。


 嗚呼、だかしかし。何だこれは。



「……?」





 ————なんでこんな、俺の腕が熱いんだ…?



「……………ああ」



 そうか、とても単純だ。




「壊れてるのって、俺の腕か……」



 世界がまともに認識される、腕から血が出てる。

 電柱には、ヒビが少しだけ入り……俺の腕から出たアカで赤く染まっていた。



 信号の、赤がうるさい。



 信号の赤だ。そうだ、この赤は信号の赤だ。




「ああ……信号が、色、ない…信号の、赤が……こっちに出たのか…そういう、ことか……」



 電柱から、赤いランプが滴り落ちている。


 俺が信号の色を変えたのだろうか、いいや……待っていたら、変わっていたのだろうか。





 分からない、頭が痛い。不快だ、気に食わない。



 ————もう何も、したくない。



「……かえろ」



 周囲の人が恐怖と、憐れみを向けている気がしたが、分からない。


 歩くのだ。



 精一杯、知り合いには、自分を騙してでも、自分を殺してでも……騙して、生きる。

読んでくださりありがとうございます…!

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