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五話、衝動



 ————ひぐっ、ひぐっ。



 アラカは静かなオフィスの、暖かい毛布の中に転移する。


 そこでは椅子に座っていた綴がおり、綴の腕の中で胸板に甘えた状態になっていた。



「あれ、社長。その毛布は……?」



 デスクの椅子に座る綴。その膝の上に丸まった毛布が座っていた。

 対面で膝の上に乗るそれは、それも愛らしいサイズでちょこんと乗っている。



「ああ、ペットが、少し……ね」



 ————ひぐっ、ひぐっ。


 毛布に包まれながら、綴に抱えられるアラカ。


 幼く、ボロボロの体と、ボロボロの心を優しく抱き留める綴に安心感を覚えながら涙に身体を震わせる。



 首輪に、銀髪に、獣耳に、壊れた身体に、壊れた心……その全てが庇護欲を掻き立てるものの、綴はいつものように平穏を装い受け止めていた。


「…………」



 いつもの何処かつかれた瞳で微笑んで。灰色の髪が微かに揺れる。



「さ、仕事を続けようか」



 片腕の毛布の中にアラカを抱えながらも綴は丁寧に仕事を続けていく。


 


 ————ひぐっ、ひぐっ。



 あたたかい毛布に包まれながら、消化不良の殺意がじわじわと、うちへ広がる。

 恐怖、男性に対する恐怖と殺意がじわじわと脳を侵していく。


 ————ひぐっ、ひぐっ……



「アラカくん、少し失礼しますね」



 ————ひぐっ……



 毛布ごと引き寄せられ、アラカの顔が綴の肩辺りに持ってこられる。



 ————っ……



 うなじが見えた、シャツの第一ボタンを外したのか、頸が見え、それを見たアラカは。



 ————ぶちっ。



「…………」



 牙を、突き立てた。



「……」



 殺意を叩きつける様に、誰かを害するという行動を取り続ける。頸を喰い殺す勢いで顎に力を込める。


「…………」



 肉を喰い千切り、捕食し。牙を突き立て続ける。




 ————…………



 殺 殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す————————————————








 すやすや、と穏やかに寝ているアラカを見て、綴は安堵した。


「(うん、殺意の発散は上手くいった様ですね。

  やはり殺意の発散は衝動的なものと相性がいい)」



 寝ている間に首輪があったら息も苦しいだろう。綴はそう思い首輪を緩めて


 ———首裏に〝花の紋章〟を見つけた。


「————」


 花の紋章。それは怪異の間では一体何を指しているのかは明白であった。


 怪異からは〝聖印〟と呼ばれる紋章はある派閥の怪異が全て持っているものであった。



「(ふふ、花の紋章、か。

 全く…)」



 花の紋章が首裏に刻まれており、それを見て微笑むと。



「(————聖女がちょっかいをかけやがったか)」



 ————激怒を露わにした。







 『可愛い英雄さんへ、良い返事をお待ちします♪』





 視界に浮かび上がる文字は魔力によるメッセージ。

 それは新たな事件を引き起こす、トリガーであった。

読んでくださりありがとうございます…!

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