四話、異変
2022/6/18 13:40 追記:
更新通知でここに飛んでしまった方へ、ごめんなさい。
更新したのはキャラ紹介になります。
どうにか今日中に 一話出すので 許してください
「合わせろ、愚弟」
「え、義姉さ……?」
ドンっ、ウェルが肘鉄を喰らわせる。
「っ! …この肘鉄……間違いない……このクソ姉……ッ!」
ギリ、と朝凪がキレる、がそれでも現実の対処を優先したのだろう、ウェルの腰に手を回した。
「では会長、ご指名なので僕がエスコートしてきますね」
ウェルと朝凪の頭に血管が浮いていた。両者、普通にこの現状にキレている。
「何が悲しくて義姉の腰に手を回さねばいけないのか……」
「何が、悲しくて、愚弟に身体、触らせてる、のか……」
「っ、じゃ。じゃあ君」
「私はお慕いしてる方がございますので……その方と仲良くなります」
お慕いしてる方の下着をポケットで確かに握り締めながら、そう返したアリヤ。
彼女の意思の強さに介在できる隙間はなかった。
「じゃあ行きましょうか」
「ちょ、ちょ待てよ!
ボクが誘ってるんだぞ? というかお前らと仲良くしろってママから言われてんだよ! なあ、それぐらい察してくれよ」
皐はガシッと腕を掴む————アラカに。
「ひっ…!」
トラウマ、トラウマトラウマトラウマトラウマトラウマトラウマトラウマトラウマトラウマ。
「————」
アラカの視界には黒いウジが腕を這いずって無限に登り続けているように見えた。
「————————■」
糞を吐き、不快な臭いを撒き散らしながら腕を登り続けるウジの群れ。
「■■■■■■■■■ッ!」
声にならない声をあげて腕を振り払う、殺意、殺意殺意殺意殺意。
その場に満ちる殺意の渦、アリヤが、ウェルが、朝凪が、その殺意に思考を真っ白にさせた。
「————」
バチっ、バチッ、と黒い稲妻がアラカの周囲を走る。草が消滅する、空間が喰い殺される、次元に穴が開き始める。
その殺意に気付かない馬鹿が一人、下卑た脳味噌で擦り寄るようにアラカを見た。
「わあ、黒い雷じゃん、かっこいいね。ふふふ、ますます気に」
————しゅぼっ。
その瞬間、生徒会長の頭の。主に髪を黒い雷が過ぎった。
「——ひゅっ」
馬鹿は己の股間に大きな水溜まりを造りながら、けれども自分の身に何が起きたのか微塵も理解していなかった。
理解しないまま……頭を触る。
「……? 髪が、抜けて、ない……?」
手を見ても、何も変化がないことに気付く。手には何も付いていないのだから、そして上機嫌なまま、自分に都合のいい解釈をする。
「ふっ、君は優しいからボクを攻撃」
————次の瞬間、馬鹿の腕がぐちゃぐちゃに腐って地面にべちょっと落ちた。
「…えっ?」
————首筋に牙が突き立てられる。肉が千切れて潰れるほどの威力が込められた牙が、馬鹿の喉肉をズタズタに食い千切り続ける。
「ぁッ。?」
————ぎち゛ィ。
ぎゅい、と馬鹿の瞳が在らぬ方角へと向き意識がズタズタに壊れるのを覚えた。
喉の肉を喰い千切り、身体中をドロドロに溶かされて、馬鹿は初めて、自分が触れたのが〝特大の爆弾〟だと気付いた
「あは、あははははははははははは!」
狂った嗤い声を撒き散らす存在。
ウェルは「あーあ」と呟き、
アリヤは「爆弾を刺激するから…」と諦めたように息を吐く。
「あはははははははははははははははは! あははははははは」
【聖女ノ祈】
◆◆◆
「————!?!?」
馬鹿はその瞬間、自分の意識が覚醒したという〝異常事態〟に直面する、
首に触れる、するとどういうわけか肉が千切れずそこにしっかり存在していた。
「————」
————しゅぼっ。
聞き覚えのある不思議な音。馬鹿は顔を上げると、そこに、先ほど自分を喰い千切り殺し尽くしたアラカが立っており。
「————ぁ、ひっ…」
脳が真っ白になった。
————生徒会長の〝涼しくなった〟頭をウェルが蹴り飛ばした。
「いい加減、不快だ、から…黙れよ」
数メートル吹っ飛んだ馬鹿は草むらに頭から突っ込んで気絶する。
————馬鹿は死ななかった。
「お嬢様!」
「アラカちゃん、眷属印を使って、あのバカを呼べなの」
そしてすぐさま黒い稲妻を放つアラカへと呼びかけを行う。
それを辛うじて意識の隅に留めておきながら、殺害行動に入る寸前で。
「————つづり……ッ゛!」
胸に真紅の魔法陣を浮かび上がらせる————綴と魔力のパスが繋がる。
『状況は把握しました。こちらへ飛んできてください』