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三話、エリート生徒会長



 昼食を終えて、風呂敷をぎゅっとアラカは締める。

 すると


「きゃー、会長素敵ーー!」

「剣道の大会でも素敵でした! あと少しで相手を倒せましたね!」

「この間のテストも点数が平均以下なのに一位なんて、本当完璧人間だわ〜」


「おいおい、可愛い小鳥たち、よしてくれないか」


 キラキラした様子の男が髪をふっと手で掻き分けて、女子生徒へとアピールするように告げた。


「————食べたくなっちゃうだろ⭐︎」


「「きゃーーーー」」

「キャーーーーーー」


 エリート校の生徒会長、キラキラとした雰囲気の青年だった。

 エリート校生徒会長は三人の女子生徒と、一人の男子生徒を従えていた。そして普通にセクハラだった。



 それを遠目に見ているウェルと、その口元を拭うアラカと、アラカのスカートの中をスマホで盗撮するアリヤ。


 そしてアリヤがスマホを見ると、次の授業の時間が迫っていることに気付いた。



「まあ、エリート校にはエリート校なりの価値観があるみたいですし私達は行きましょうか」



 アラカにスマホを強奪されてデータを消去されながら、アリヤはスカートをぽんぽんっと叩いた。



「やあそこにいるのは噂の三姉妹じゃないですか」


 そこで軽薄そうな声が三人へと掛かる。


 そこには先ほどの生徒会長らしき少年と、一人の男子生徒がいた。


「……三姉妹?」


「ああ、私は苗字は変わってませんけど一応書類では菊池家の養子なんですよ」


「なんかこの先、妹が更に増えそうなの……」


 声をかけてきた男性について微塵も興味がないのか、無意識に三人は別の話題を話していた。



「ええと、初めまして。すみませんが急いでおりますので、失礼します」


「ボクのこと、気になるかな」



 普通に時間が迫っているので立ち去ろうとしたら、そこを仁王立ちで阻まれる。


 爽やかな笑顔を浮かべている彼は気付かないのだろうか、その対応が悪手だということに。



「特に興味はありません。強いて気になる点があるとするなら男性不信が二人いるのでそれを察してくれるジェントルかどうかですね」


「遠回しに、失せるか、野蛮男の汚名をかぶるかの、二択出してるの草」


「……上手」



 アリヤが前に出てそう対応するも、それを聞いてわざとらしく少年は悲しそうな顔を浮かべる。



「男性不信なんだね……可哀想に」


「野蛮男の汚名被ったの、あれ」


 薄っぺらい顔だ。それは人間不信が特筆して怒りを覚える行動でもある。


「大丈夫、ボクは優しいから。信じて」


「出会って一分の人はちょっと……」


 そう告げると少年は子犬みたいな顔を浮かべる、ただただうざい。


 アリヤの脳天に血管が浮き出る、キレていた。


「信じてくれないの、かい……? このボクを?」


「そもそも知らん人をどう信じろと言うのでしょうか……」



 信じるなと告げてくれた綴ってやっぱり好きだなあ、とアラカの中で綴に対する好感度が上昇した。



「メラビアンの、法則、とか…?」

「ウェル、ヒントを与えないで」


 そのデリカシーの無さは相当のものだった。


「めら…?」


「会長、アルバート・メラビアンの解いた人間のコミュニケーションに影響する概念です」


 それを補佐するような声が、少年の後ろから響いた。

 それは少年の後ろにいた男子生徒の声であり、その言葉に少年は興味なさげにふーん、と相槌を打つとアラカらへ向き直った。



「へえ! 君たち、博識なんだね。

 ボクの側にいる人に相応しい」



 値踏みするような視線。不快感を滲ませる三名。アラカに関してはそれの耐性が無さすぎるため、二人以上に過剰に恐怖していた。


「そうだね。じゃあボク個人の凄いところを教えようか」


「聞いてない」


「貯金が50万ある。そして小遣いは毎日100万円だ」



 自慢げに語る少年を前に、その場の空気が凍る。



「小遣いそれで元孤児の私より貯金少ないの……?」←住み込みメイドで大学行けるお金は余裕で溜めてる


「ウェルより、も少ない」←最近〝手紙〟を正道経由で国に買い取ってもらいお金持ち。


「…………」←大富豪+世界を救える可能性を秘めた唯一存在。



 いい加減殺してしまおうかとアラカが拳を握り締めたその時。



「……会長、そろそろ、時間ですよ」


「なんだ、仕事か? そんなの朝凪がやってくれよ。

 ボクは彼女らの相手で忙しいんだ」



 補佐の男子生徒————朝凪鋼あさなぎこうが静止の声をかける。


 しかし少年は止まらない、朝凪を侮っているが故にその言葉を微塵も認めない。



「我が校の代表として彼女らと親睦を含めるべきだろ?

 我が校の代表といえば、首席のボクしかあるまい?」


「はあ、それなら向こうの高校に親睦を深めるイベントを提案してみては如何でしょうか。

 仲良くなれますよ、向こうの生徒会長(代表者)さんと」


 朝凪がそう告げるもやれやれ、と芝居がかった風で皐は息を吐く。


「それじゃあ違うんだよ。馬鹿だなお前は」


 人差し指でビシッと生理的嫌悪に震えるアラカを指す。


「あの子は菊池アラカだぞ? この世界で唯一、怪異に対して優位性を持ってるんだ。知らなかっただろう」


「いえ、ニュースで大々的に取り上げられてますので知ってます。

 そしてそれはかの高校の代表云々とはまた別問題です」


「そんなわけで、だ。

 このボク、皐財団の御曹司!

 皐スグルが彼女を優しく受け止めてやるのは当然のことだろう?」

「きm……いえ、そうですか」


 想像を超えたキモさを放つ皐にイライラゲージがどんどん上がる。


「皐財団って?」

「まあまあな金持ち。アラカちゃんの。貯金の一万分の一ぐらいは金、ある。

 伝手は割とある、ただたぶん、菊池のオッサンの方が、影響力高い」



 ウェルは元々そういう階級にいたため、幾らか詳しいのだろう。軽くだが説明してくれた。


 アラカという対怪異能力を有した存在。

 ウェルという怪異の保護者。

 日本怪異対策本部の長という立場。


 今や怪異の被害は世界を侵食しているのだ、その状態でこの立場の正道は本人はどうあれ、周囲からは一目置かれるだろう。


「けれど、高校の代表が親睦、だったの?

 確か」


 そこで面倒そうにウェルが息を吐く。


「ああ、そう! そうなんだよ。どうかな、このボクが君をエスコート」



「じゃあ、丁度いい……の」


 そしてウェルは皐の元へと歩き出した。


 それを皐は心底嬉しそうにし————ウェルはその隣を素通りした。


「ウェルは、こっちのほうが好み。

 タイプな、男に相手してもらった方が楽なの」


 ウェルは補佐の男……朝凪の腕を組んだ。


 皐が「へ?」と声を漏らす。



「————合わせろ、愚弟」

読んでくださりありがとうございます…!

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