二話、日常の再来
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冒険活動が終わり、エリート校の一部を間借りする形で通っていた。
そんな中、中庭でアラカらは食事をとっていた。
ベンチに座り、お弁当を開けて食べる。
「……おいしい」
そう呟いて、そっとウェルの頭を触れずに撫でる。
アラカは口数こそ減ったが善性は健在なのだろう、その所作には優しさが溢れており、故に彼女の周囲からは人が離れることはなかった。
「教えたらどんどん覚えるんですよ、ウェルは。
本当に筋がいいです」
「まあ、元々上流階級、の奴隷やってたし、当然なの」
菊地家ではお弁当を交代制で用意することになっていた。
菊池家で新たに養女になったウェルが、その日はお弁当を用意していたのだ。
「いつかはオリジナリティを、出す予定…なの…!」
「堅実ですね〜」
「……すてき」
ご飯を食べながら談話をする三名、その三名は容姿が整い、かつ二名は人外めいた特徴を持つ存在。
そして白銀の少女に至っては今、ネットで大人気の少女菊池アラカなのだから視線を集めることこの上ない。
「……明日は、私」
「アラカちゃんのお弁当…! あたり、なの…!」
「お嬢様のお弁当は基本が素朴で、そこはかとなくアダルトさを内包してますからね〜」
そこでアリヤがアラカのお弁当へと視線を向けて、首をかしげる。
「あれ…?」
「アリヤ、どうしたの…?」
「いやね、お嬢様のお弁当は私が特殊な盛り付けをしていたはずなんですが……おかしいですね」
アリヤの作るお弁当……それはキャラ弁というやつであり、見るとワクワクしてくるという悪戯心が溢れたものだった。
それゆえアリヤが細工したということは何かの絵柄が描かれているということでもあった。
【お嬢様に履いて欲しいパンツの柄】と言う手紙を、正道は開いてみていた。
アダルトな下着のキャラ弁がそこにはあった。
「…………」
「…………」
一方その頃、部下の目の前でお弁当を開く正道の姿があった。
鉄の権化みたいな存在の上司が、目の前でそんなイかれたお弁当を開いている。
「…………」
「…………」
パタン、とお弁当の蓋を置く音が聞こえた。
明るいはずの電灯が、機能してない気がしてならなかった。
「…………」
「…………」
「そ、その、噂の菊池さんの三人の愛娘の、えと……どの子かの、お手製弁当! す、すごく、個性…的、でなんか、うん、その……すごいですね!」
「…………………ああ」
「……………………すいません」
「……………………………ああ」
————部下、自律神経ぶっ壊れる寸前であった。
読んでくださりありがとうございます…!