二十三話、美術館
「だから、何度も言ってるけど私はそんなn」
——ぶち。
「え……?」
風魔の頬に血が飛ぶ。
奇怪な音が出る。
生徒の一人が風魔を見てその残状に気絶する。
「な、に……? みんな、おどろい、た…顔…で…」
風魔は恐る恐る、視線を下へ…送る。
ゆっくり、ゆっくりと。
「……?」
向かいのテーブルの下、アラカの足が風魔の目には映る。
「……あ、か…?」
何か、赤い棒のような……その先が見えていた。
風魔の〝身体から伸びている〟ように見えた。
「え、これ、…」
風魔はその棒を注意深く見た。
何か見覚えのある形で、何かよく使っているような形で、そしてそれは。
「……〝手〟……?」
風魔は自分の腹部を見て見た。
————下腹部を〝腕が突き破ってきていた〟
「——————————————え?」
人間の腕、人間の腕、人間の腕。
それが下腹部から、子宮から、赤ちゃんを作る場所から〝突き破るように〟出てくるのだ。
「ぶち、ぶちぶち……♪」
「ひっ」
————女の声。
悪戯気に笑い、擬音を口にして、まるでオモチャで遊ぶように
「ぱーん♡」
下腹部が〝弾ける〟
肉片が周囲に飛び散り、血が近くの生徒のシューズにピッとこべりつく。
「…………」
「…………」
「…………」
はじめに遠くにいる生徒が、次にその生徒のすぐ近くにいた生徒が、そしてシューズに血がついた生徒が…………その血を呆然と眺めた。
————その血の飛んだ先を,決して誰も見れなかった。
「暴雨の魔城だなんて…………————ミュゼ、と呼んでほしいのだわ」
ころころと笑い、女は現れた。
血塗られたゴシックドレスで、血塗られた顔で、血塗られた指で。
ドレスの裾を摘み、淑女のように笑んで。指を少しだけ上げ……
「……お初にお目にかかります。
理性派 三英傑が一……怪異からは美術館、などと言われております」
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