十二話、ダンジョンの奥底で。
短いので もう一話 出します
追記:ごめんなさい、限界です。 明日一日ほど、更新おやすみします
◆◆◆
豪雨の吹き荒れる山の、ある箇所に祭壇にようなものがあった。
透明な強化ガラスで造られたドームには、各種の花が揃えられていた。
ドームに入り、私——綴はカッパの頭を取った。
私はカッパを脱ぎ捨てて、そのドームの中心に膝をついている女を見た。
「……久しぶりだね、ミュゼ」
女は祈るように膝をついていた。
そしてその女こそが私が探していた怪異————ミュゼだ。
「?」
中央に座する女性が振り返す————一眼見ただけでわかる、怪異だ。
そしてその人物とは怪異たちから〝美術館〟と呼ばれる怪異でもあった。
「ああ、こんにちは。番外個体」
「今日は少しばかり、聞きたいことがあってきたんです」
聞きたいこと、というのは他でもない。アラカのことだ。
私はあの子の冒険活動の行き先を見て、その場所に心当たりがあったのだ。
「そんなことよりどう? どうかしら、この子」
「子宮と心臓以外を全て繰り抜いた死体…ですか」
見せつけるように、奥にある死体を見せる。
女性の死体だ。瞳を閉じて椅子に座っている————腹が開かれた状態で。
「そう、この子、可愛いでしょ。とっても、ね、あは、ふふふ」
死体には子宮と心臓以外の全ての臓器がなかった。肉は削ぎ抜かれて、血管は脇の内側に溶けた鉄で固められてる。
「可愛かったから、子宮と心臓を残して、全部、ぜーんぶっ。
臓器を引き摺り出してみたの。どう? どうかしら?」
無邪気な子供のような笑顔を浮かべて、私へ感想を求める。
「ここね、びらーんって、開くようになってるのよ。可愛い? 可愛いわよねえ?」
皮を広げてどうどう? と聞いてくるミュゼに対して、私はただ静かに。
「ミュゼ、君の支配区域にある学校のバスが通ったはずだ。何か心当たりはないかな」
「あー、例のあの子のことでここに来たのね」
合点したのかつまらなそうに頭を掻く。
「好きだから、とか?」
「はっ、まさか」
好き? 確かにそうかもしれない。だがコイツの言っている好きとは大きく意味が違う、勘違いされては困るのだがな。
「自分の所有物に他の人間の唾を付けさせるわけねえだろ」
あの子を敵を殺して仕舞えばいい。
あの子の記憶にあるものさえ私のものだ、全て、全て、奪い尽くしたい。それだけだ。
「はー↑ 少しは優しくなったかと思ったらこれよ」
「私たちはどこまで言っても害悪で邪悪な性根しか抱えない破綻者だ。
できないものをしようとしたとしても出来て猿真似だ。不快でしかない。
優しさや愛などは真っ当に育ったやつにやらせておけばいい」
肩をすくめてそう吐き捨てる。
「はあ……ならその子にもしっかり説明しておきなさいよね」
ミュゼは額に手を当てて息を吐きながら告げる。
「まあ、それなら安心なさい————既にターゲットよ」
黒い剣を取り出して。
「構えろ」
敵手に、牙を向けた。
「……殺し合い? 何? 〝弱体化してるでしょ〟、お前。そんなんで私に勝てんのかしら?」
「いいや——適度に弱らせておくだけさ。
まあいつもの試練の前準備、というやつさ」
勝つ気は無い。目的がそれである以上、今のままでも別に構わん。
「それに」
口角が歪に釣り上がる、ああダメだな。いつもの悪い癖だ。
「————誰が弱ってるって?」
「っ、おまえまさか!」
知ってるか? 女の子は弱ってる男の子に弱いらしいぞ。
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