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十一話、おふろ

おやすみ、なさい……

 豪雨の中、教師陣は結局何も決められずその場で待機ということになった。


 時間が少したち、生徒は大浴場での入浴をする時間となった。

 男子生徒が男湯で背中を流しながら、憂鬱そうな表情で今後のことを愚痴り始めた。


「はあ、これからどうなるんか…ね……」


 ——瞬間、入口の方を見て固まる。

 その様子に声をかけられた方は不思議そうに首を傾げて、同じく入口の方を見ようとした。


「あん? どうし、たぁ!?!?」


 ————男子の理想郷。混浴というものをご存知だろうか。

 男性と女性が同じ湯を入るというアレだ。


 簡潔に言おう——アラカが男湯に来た。


「…………」


 まさかのアラカ、男湯突入。

 全裸で、下腹部へ申し訳程度にタオルで抑え……胸部は湯気で隠れていた。ゆげえらい。


「ちょ、へあ!?」

「…………」


 無言で「はあ」と、大風呂の端へ視線を向けて息を吐いた。

 そして男子を無視して近くの備え付けの椅子へ座り、手にボディソープを取った。


「え、え、え、え」

「あの人何してんの!? ちょ、女子〜!?」

「元男なのは、分かるけど!!

 元男なのは、分かるけど!!!!」


 傷だらけでアザだらけの身体だが生粋の美ロリボディは男子高校生にはあまりにも刺激が強すぎた。風呂場なのに頑なに首輪を着けている様子から、警戒は一応している模様。


 すり、すり、かしゅ…………。

 泡を立てて、身体を洗う。


 それだけの動作なのに、男子が軒並み黙ってしまう。不思議だった。


「ちょ、アラカ=サン!? 何してるの!?」


 そこで乱入するウェル。脳味噌フル爆発だった。

 



「あ、良いところに。

 ————ウェル、洗ってあげるから来て」

「へぁ!?」

「お風呂嫌いは、わかるけれど洗わないと身体の隙に汚れが溜まる。

 汚れが溜まるとふとしたことで口の中に入る、それで風が起きる。だから綺麗にしようね」

「違うそうじゃない」


 衝撃的すぎる発言。違うそうじゃないという言葉を発したのはウェルだけだったが、そこにいる全員が同じことを思った。


「…………ぁ」

「……? ウェル、どうかした?」


 ウェルはそこで固まり、見てしまった、


 胸に、肩に、足に、ありとあらゆる箇所にアザや傷が刻まれていたのだ。


 不死なのに治らず、今もなお、痛そうに血が溢れてるものさえある。


「…………なんで、あんなに、傷だらけになっちゃったん、だろうな……」

「…………俺らのせいだろ」


「…………そっか」


 それに気付いた男子も、ただ痛ましそうな身体から、せめて……と、目を逸らした。


 ————尚、ウェル。


「(アラカちゃんの体、どすけべ、すぎる……!)」


 その真理が出された数分後、アラカの背中を手で触れるウェルの姿があった。


「マジでいるんで、先生連れてってください」

「ちょっと、こんなところに菊池さんがいるわけ……本当にいる!?」


 そこへ乱入する中村先生、疾風迅雷に早さでタオルをかけてガシッと掴んだ。


「菊池さん回収ーー!」


 そしてアラカは先生に回収されて女湯へ向かった。


「……僕は、男なのですが」

「元、でしょう」


 脱衣所でそう言われて、アラカは静かに目を瞑った。

 そして溜息を吐き。


「…………」


 アラカは諦めたように——目隠しを巻いた。


「そ、そこまで……」

「(音見でなんとか行けるかな……)」


 その後、アラカは女湯へと向かった。

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