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十話、クネクネ

ランキングに外れて、しまいました。


 読者様、    毎度、甘えるようで、情けないですが    たすけて    ください。



 お願いします。      この後、なんとか、ちょっと無理して




 もう一話ほど、     出します



 いつの間にか、手にはナイフが握られていた。


 ————できない。


 僕は、いつの間にか握り締めていたナイフを下げていた。


「(冷静になろう……)」


 目の前の少女を見た。水子の集合体である彼女は、一人にして複数の生命体だ。


 全員が、過去に生まれることなく死んだ子だ。そんな子が、必死の想いでこちらを愛そうと……不器用に、抱き締めてくれている。


 それがどんなに不快でも、その勇気を出してくれた彼女は、紛れもなく優しい子なのだろう…………ならば、手を差し伸べねばならないだろう。


「……お嬢さんたち、どうだろう?

 僕を愛してくれるというのなら、どうかお話を聞かせてくれないかな」

「……? おは、なし?」


 キョトンとするクネクネに、僕はそっと事情を話した。


「僕たちは、何故こんなところに君がいるのか、知りたくてきたんだ。

 ここはとても寒いし、いるだけでずぶ濡れになってしまうからね」


 空を見上げる。豪雨はまだ鳴り止まず、外気は肌を凍らす勢いで下がり続けている。


「……楔、なの」


 そこで初めて、クネクネは対話らしい対話に試みた。

 なんとか言葉を繋ぎ合わせて


「結界、維持……魔力、いル。

 それ、私たち、と他の、が、やらされる」


 ————やらされる。その言葉が、妙に耳に引っかかる。


 まるで本意ではないような、無理矢理やらされているような言葉選びだ。


「やらされる……ということは、何か理由があるのかな?」

「……消滅、する、の」


 ————消滅。それは死を経験している彼女たちからすれば、更に高異次元の何かなのだろう。

 それを記憶の隅に留めながら、話の続きを聞いた。


「遠い場所 いタ。

 連れて、来られた……結界、ないと、消滅する」


 ————消滅したくなければ結界を維持しろ。つまりはそう言うことらしい。


「……話してくれてありがとう」


 ニコリ、と笑んでから、ぽけを探り……たまたま入っていた飴を渡す。

 それを見つめているクネクネを、僕は置いて背を向けた。

 殺すのは流石に忍びない。


「あ、ああ、あの…」


 背を向けると、声が耳に届いた。

 振り返るとクネクネが、何かを言いたげにしていた。


「話、下手で、……さい。

 わぁらない、あっタ、と、おもう」


 話が下手、というのは彼女からの主観なのだろう。

 会話という経験自体、とても少ないだろうし、それは仕方のないことだろう。


「ううん、そんなことないよ」


 膝をおり、クネクネと同じ目線になってから告げた。


「言葉は伝えるための手段でしかないんだよ」


 目的は〝相手に話を伝える〟ことであり、それはしっかりと果たされた。

 なので何も下手なことなんてない。


「つまり、相手へと想いを伝えることが出来たのならば、言葉は言葉の価値たり得る。

 ————君の想いは伝わった、だから君の言葉には確かな力があったんだよ」


 ニコリ、と笑んでみる。頭に触れずに撫でる。

 するとクネクネは、頬が何故か赤くなった。どういう理屈だろう。


「あ、あの…」


「?」


 まだ何か言いたいことがあるらしく、指を弄りながら声を出した。


「、え、あ、と……えと」

「うん」


 緊張からか上手く声が出せないようだ。

 なのでそんな時は、ただ静かに頷いて言葉を待ってみる。


「……ついて、行って、いい? 体の、中……に入り、たい」

「うん、おいで」


 即答した。迷いは無かった、それを態度で示すと彼女らは、顔を明るくさせた。


 クネクネはそう言うと、光の粒子になり……そのまま空気に溶けるように見えた。



「…………」


 ————二の腕の肉が抉れ飛ぶ。


「…………」


 ざーーーーーーーーーーー。


 静寂の世界で、雨音だけが全てを浚い、全てを注ぐ……。

 誰も居ない世界で、僕は小さく、けれども大きく……その言葉を呟いた。


「……背負ったよ、大丈夫。決して忘れない」


 抉れ飛び、血が溢れる二の腕をしっかり掴んだ。



 そう呟いてから、僕は二人の元へ戻った。

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