九話、破滅の悪夢
遅くなり、申し訳、ございません。
今日 もう一度 更新します 短いので
◆◆◆
ピタリ、と僕は立ち止まり背にいる二人へ声を出した。
「目を閉じて、耳を塞いで」
ウェルは速攻で目を瞑り耳を塞いだ。如月も遅れたが、ウェルに釣られて行う。
「あ、あの……菊池s」
「——静かに」
僕に対して問いかけをしようとする。しかしすぐに静止を促す。
けれどそれだと不満が溜まるだろう、とすぐに思い直し……如月さんのすぐ前へずい、と現れて。
「あので事情は説明する。その言葉で今は耐えてくれると嬉しい」
「え、あ……」
覗き込むように瞳を向けると酷く戸惑う如月さんがいた。
「(良い匂いッ! 可愛い! 美しッ!? 首輪えろ)」
何を考えているか分からないけれど、酷く興奮状態になってる如月さんへ
可能な限り安心するように声をかけた。
「————僕が守るから、ね?」
「————」
囁くように告げた。
「ひゃうっ! くぁ、わ、かりましたぁ…!」
顔を赤くして全力目と耳を塞ぐ如月さん
そして僕は前に向き直り——白い霊体と向き合う。
「……くねくね、かな」
その白いナニカの正体へ当たりをつけて——一歩——踏み出した———————
———— あ 子ky ————
赤g ————
————す いた
注射 針 ——
————刹那に。
僕は、一歩後退して……疲れた様子でその真相を掴んだ。
「……そう。見た人が発狂するのは、そういうこと、か」
額へ手を当て、はあ……と息を漏らす。
「(発動条件が〝五感のどれかでそれを明確に認識すること〟
条件が満たされれば自動的にソレが発動する)」
そして目を確かに開けて、その白い霊体の——
「(この子の……くねくねの、正体は)」
白い——霊体——の
「水子……その集合体だね」
————幼い、幼い女の子の正体を告げた。
この世に生まれる前に、死んだ赤子。総数で100はあるだろう。
霊体をこれでもかと敷き詰めたソレは異能を宿すに至った。
「? ふ、シぎ」
白い霊体の女児が声を漏らす。
その声は、どうしようもなく歪で、聞くものを不安に陥れる狂気が混ざっていた。
「私、タち 見た人 みんな、こわ、れた。
壊れナい、ふしぎ」
——これは相手を見ていない。
疑問系が分からない。
「みなか、ッた? おか、しい、な」
「いいや、見たよ」
表面では疑問系ではあるものの、その内で会話が完結しており、返答は微塵も期待していない。
この子は恐らく、今まで〝会話〟というのをしたことがないのだろう。
「3桁ほどの………水子の生前…死の瞬間を追体験させる。それが君の異能だね」
「…………」
クネクネは目を少しだけ見開き、あれれ?と言いたげに首を傾げる。
「あな、た……ひどく、怯えてる」
——会話が成り立たない。これはそういうモノだ。
会話などしたことがなく。言葉は母の子宮の中で聞き取れたものをなんとか繋げたものなのだろう。
「なんで、じぶ、ん……きり、捨ててる、の……?」
「…………さあ」
————不快。
「心配してくれるのは良いですが、踏み込みすぎないでいただけると助かります」
不快不快不快不快不快不快、目の前の不快な物質を殺せ排斥しろ今すぐ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。
「わたし、たち 自分、好き。
あなた、 自分、きラ、い……」
消せ、殺せ、奪え、首筋に牙を突き立て殺し尽くせ。
血を啜れ、奪え、奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え奪え。
「わたし、たち…ひとり、ぼっち。
あなた……ひとり、も、いない」
血を啜れ、喰い千切れ、その肉を引き裂け、ナイフを突き立てろ。
「あなた……貴女を、あい、して。
ひとり、ぼっち、に、なって……せめ、て」
「…………」
殺せ、殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。肉、牙で殺せ、殺せ、腐らせろ。肺に糞を詰め込み殺せ、殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。
「でも、あれ、わから、ない……まず、は、あいさない、と、むずか、しい?」
死ね、気持ち悪い、消えろ、殺せ、今すぐに。
「ぎゅー……」
「……え、と……?」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ苦しい消えろ触るな消えろ。やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて。
「むずか、しい……?」
気持ち悪い、腕が腐る、消えろ、殺せ、今すぐ、目の前から排斥して殺してしまえ。
「えと、えと……どうすれ、ば…いい、かな」
殺せ、今すぐ死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。
「……ごめん、ね」
吐きそう
。吐きそう、苦しい、消えて、お願い、死ね、殺せ、嫌だ、殺せ。
そうだ、殺せ、それでいい。殺せ、腕を振り上げた。あとは下げるだけ、殺せる殺せる殺せる殺せる殺せる殺せる。
「……………………」
いつの間にか、手にはナイフが握られていた。
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