七話、怪異の派閥
短いため、 もう一度 更新します 今日中に
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その後、生徒たちは割り当てられた部屋にて待機となった。
生徒が待機している間、教員は会議をしていた。
赤子の姿造り、その存在を報告された学校側として取るべき方法は当然〝中止〟というものだった————だが、そうもいかない。
ざーーーーーざざっざーーーーーーー。
「だめだ、スマホ使えねえ。なんか電波でてねえわ。なんでやろ」
「電話も無理みたい。はー↑ 先生も家に連絡入れられないって嘆いてるわ」
豪雨。それは災害と呼ぶに相応しいレベルのものである。
何故か電波も届かない現状に生徒らは困惑していた。
一方その頃、アラカとウェルは割り振られた部屋にて作業をしていた。
「……接続」
〝手紙〟から、灰色の魔法陣が浮かび上がる。
「…………」
「…………」
——ピシ。パキィィン。
魔法陣にはビビが入り、空中で割れる。発動はしない。
「……やっぱり、か」
「…………」(こく)
「……念話が発動できない。家にあるものの引き寄せも不可で、隣の部屋のものは可能。
火を出したり、水を出したりはできる……となると」
「……外部と、遮断する結界が、ある、かな」
結界。そんなものは普通の人間では作り得ない——異能の所業。
「…………結界系の異能を持つ、怪異……か」
間違いなく、何かが起きている。そしてそれは怪異の仕業の可能性が高い。
そんな中で、ウェルは悩ましそうに人差し指の付け根を口元に添えていた。
「…………」
「? ウェル?」
アラカが問い掛けると、ウェルはぽつぽつと話を始めた。
「わから、ない、けど……一応、心当たり、ある」
「……聞かせて」
元々、怪異のコミュニティに所属していたウェル。
それゆえ、彼女は政府ですら知り得ていない怪異の情報さえ内包していた。
その正体をぽつり、と溢す。
「……怪異からは〝美術館〟と呼ばれてる、怪異がいる……
混沌派閥、の子」
————美術館。その名の響きからはどう言った怪異なのかはまるで想像できない。
「その子が心当たりとして浮かんだ理由は…?」
「……独特な、殺人手法、だよ」
殺人手法……つまりは赤ちゃんの姿造りといった殺人手法を得意とする怪異なのだろう。
「赤ちゃんの姿造り、に……セメントで固めた壁絵、とか…そう言った……〝芸術〟に仕上げる気質が、ある怪異」
窓の外、遠くの方で雷が落ちるのが見えた。
「江戸川乱歩、かな」
「うん……人間椅子のレベルのものは、たくさん、あったはず…だよ。
あ、でもd坂の殺人事件と、か鏡地獄の類の、ものは無かっ、たよ……」
D坂の殺人事件……明智小五郎という私立探偵が主人公のストーリー。真相がドン引き。
鏡地獄……病的なまでにレンズを好んだ奇人が狂する話だ。
「(……どうも、その作品の方向性に、何かがありそう)」
そう言った類はない、という言葉にアラカは何かがある、と見る……刹那に。
「あ、あのー」
割り込むように声を出した少女がいた。
——如月百合。アラカとウェルの同室になった女子生徒だ。
部屋割り振りの段階で、学校側の配慮によりアラカとウェルは〝あまり枠〟に移動させられていた。
その対応は問題ないし、むしろ好都合であったが……当然、都合よく〝二人だけの班〟なんてものが出来るわけもなく……結果として〝三人班〟となったのだ。
「……混沌派閥とか、って……? あっ、言いたくなければいいのだけど……」
それが彼女、如月百合だった。
特に聞かれても困るものでもないし、アラカはそのまま話した。
「怪異の中にある派閥の一つ、ですよ。
聖女派、理性派、過激派、混沌派があります」
「聖女派……なんか、優しそう」
軽く概要を説明するアラカに、如月は気になった派閥を話題に挙げる。
「「……………」」
「え? あ、の、なんで黙るの…。?」
アラカとウェルは全力で下の方を向いていた——その派閥かあ……と顔に書いてあった。
「聖女派は…………一番、危険、というか……ウェルも含めた怪異も、一番近づきたがらない派閥……なの」
「まあ……実際見たら、うん……」
あのアラカさえ言葉を濁すレベルに派閥。それにドン引きしながら如月は相槌を打ったー
「ええ……聖女なのに」
「リーダーが聖女、と呼ばれてる怪異だからそうなってるだけ。
聖女以外は精神が壊れてる獣しかいない……目と目が合えば怪異でもお構いなしで殺しにくる……」
——無法地帯。檻のない動物園。ポケッ◯モンスターからポ◯ット抜いた集団。といった風に噂されるレベルの怪異派閥であった。
「聖女は、精神、支配系の、異能、持ちらしくて……それ、で形を成してる、と、うわさ…」
つまり、聖女がいなければ正真正銘の無法地帯。といった情報に如月は更にドン引きする。
「え、えぇ………」
如月は引いたように声を漏らして……視界の端に白い何かが映ったのを見た。
「……?」
「どうしたのですか、如月さん」
不信に思うアラカに、如月は要領得ないまま今見えた何かのことを口に出す。
「あ、いえ……なんか、窓の外に……白い、人型の変なのが見えた気が、して」
「? 窓の外、に」
ざーざー。
「————」
——アラカは無言でカーテンを閉めた。
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