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四話、ファンクラブ

 山登りイベントを終え、昼食の時間となった。


 山の中腹ほどにある長閑な公園。そこで昼食を取り終えた生徒たちは自由に過ごしていた。


 遠くに綺麗な空が見えるそこで、アラカはというと。


「……すぅ…すぅ」


 近くの木を背にし、すやすやと休んでいた。

 その隣でウェルも眠っている〝ように〟見えた。


「…………ねれ、ない……」


 周囲に人がいる状況で眠れるほど、ウェルはまだ安定していなかった。

 なぜ寝れるのだろう、とアラカをチラ見する。


「……?」


 すると薄目を開き、アラカが微かに首を傾げる。


「(ああ……常に警戒しながら、寝てた、んだ…。

  もしくは〝寝てもすぐに起きれる〟ように、浅い眠りにしてるだけ、なんだ)」


 ウェルはそう気づいて、首を微かに振り…また休もうとした。


「……幸せそう、だな」

「休めるのが奇跡みたいなものらしいし……、そっとしとこうぜ」


 それを眺めるクラスメイトたち。

 彼らはアラカについて語り出す。


 学校のアイドルなど目じゃないほどの美少女だ。当然、話題にもなるし、同時に今や時の人でもあるのだ。


 あまり視線を送らないようにしようと決めていても、必然的に話題にしてしまうだろう。


「この世のN◯R要素、だいたい体験してるからねあの子。

 日常すらマトモに過ごすのも難しい精神病患者だ、とか聞いた……」


「精神病院に、入院とかしなくて大丈夫なのかな」


「真っ当に、それどころか滅私奉公の鑑みたいに働いていた中で周囲全てから痛め付けられるなんてのを味合わせたんだ。

 その上で精神病院とかしたら、周囲の都合で痛め付けすぎだろ。そんなの鬼畜外道の俺でもせんわ」


 はあ、と息を吐くクラスメイト。


「……なあ、このままいいのかな」

「何がだよ」


 クラスメイトの女子生徒の一人が声を出し、それに男子生徒の一人が相槌を打つ。


「ほら、菊池さん……クラスでも、基本何処か息苦しそうにしてるじゃん。

 加えて昔の知り合いとかに出会うと……トラウマとかで、あり得ないぐらい苦しんでる……」


 それは彼らが見た光景だ。そしてテレビでテロリストの事件が放送された時に至っては〝身体が破損し血がびちゃびちゃに溢れる〟なんていう映像が流れた。


 ————同学年の子とは思えないほどの地獄を歩き続けているのだ。


「……十数年間で出来た知り合い……全員、もう会話すらできないんだなって……。

 それどころか……近付くだけで、過去のトラウマがフラッシュバックするって……あんまりだよ」


 そんな状態、自分ならば耐えられない。と言葉を続けて女子生徒は告げた。


「仲良くは、たぶん出来ないと思うし……痛めつけるだけになると、思う。

 ならせめて、さ……周囲が無理に干渉しようとしない状況とか、作れないかな」


 そう、小さな声での呟きは周囲に広がった。





「……ファンクラブとか組織する?」




 その相槌か、男子生徒の呟きに全員の視線が集まった。


「…! それだ!」


 名案だ。と言わんばかりの声で——けれどもアラカを起こさないように配慮した声量で——女子生徒は告げた。


「じゃあファンクラブ会長は誰にしようか」

「お前」


 ………………………。


「…は?」

「お前」


 ………………………。


「お前が始めた……物語だろ」

「君覚えたカッコいい言葉とりあえず使いたがるよね」


 女子生徒はハア、と息を吐いてから…決意したような表情を浮かべる。


「まあ、いっか。そうだね……やるわ。なんとか人募ってみる」


「おう頑張れよ——如月」


 菊池アラカ、ファンクラブ会長——如月百合きさらぎゆり。ここに爆誕。


「(……インターネットに〝あの動画〟を流出させたことで……テロリスト事件起きたけど……うん、ファンクラブ会長……良い人いたら即、座を譲ろう)」



 尚、インターネットにアラカの過去を流出させたガチ恋勢である。



 彼女が副会長になり、三年の羽山アリヤが会長になったのは……冒険活動教室から帰ってきた翌日であった。

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