三十二話、ストレスゲージ
少し 文字数 少ないので もう一話、 書きます。
今日中、に
◆◆◆
遡ること十日前……アラカがウェルと戦闘をした日のことだ。
『テロリストが今、でてきました! 銃を持っておらず、全員が両手をあげています』
ニュースではその日、ある立て篭もり事件が騒がれていた。
今、話題の有名人が通っている学校の立て篭もりだというのだから通常のそれ以上に騒がれていた。
その彼女を取り上げない番組局などないほどの,有名人……壊れた英雄、菊池アラカ。
そしてその立て篭もり事件も終わりを迎え、テロリストが手錠をかけられて連行されていた。
『今の気持ちを一言! どうか』
マイクを必死に向けるスタッフに対してリーダー格の男が立ち止まる。
視線は遥か下を向いているのに、何処か救われたような……放心状態のまま、ポツリと呟いた。
『…………あの子は……天使だった…』
そう言ってから大人しく、落ち着いた様子で、リーダー格の男はパトカーに乗った。
『は、はい……今のは……?』
『え、えと! テロリストのリーダーが先ほど、自首しました。
周囲の状況は〜』
画面がスタジオに戻り、アナウンサーがほう……と色っぽい声を漏らす。
『……しかし、すごいですね。
菊池アラカくんは……子供とは思えないぐらい優しい声色でバブみを……』
バブみに目覚めたアナウンサー。プロの意地を忘れた敗北者が。
今の人間不信状態のアラカ自身は自己を他者に知られるのを酷く気分を害する。
ゆえにこのニュースはアラカからしたら敵意を剥き出しにしたくなるほどに不快なものだが、それでも衆目には強烈な印象を与えた————その次の映像込みで。
『現場の◯◯です! い、いま! 学校も校舎が破壊されています!!
中にはまだ数名の生徒がおり、菊池アラカくんもまだ出ていません!!』
学校の屋上での破壊、一秒ごとに切り刻まれる学校は————巨大なエネルギーブレードに破壊された。
ギリギリカメラが捕らえたのは、半身が焦げて死の寸前になるアラカであった。
『【AMSR】菊池アラカ、バブみボイス』
『肖像権の侵害やろこれ』
『なんかファンアートがポクシブで描かれまくってるんだが……』
『つかタグの女体化アラカってなんだよ』
当然、その存在は強烈なインパクトとして…ネットを中心にその存在が広がった。
————要約、アラカくん有名人。
それは順々と、加速し、肥大化していき……菊池アラカという存在を世界共通の存在にするのに、そこまでの時間は掛からないだろう。
◆◆◆
学校崩壊から二週間経過。
ある屋敷から、3名の美少女が出てきた。
三名とも、同じ制服に身を包んでいる。
スカーフの色からして二年生が二名、三年生が一名だった。
「初日から、お嬢様校とか……はぁー、憂鬱、なの」
二年生の女子……初登校のウェルは憂鬱そうに呟いた。
「仕方ないですよ。というか壊した本人……まあいいか。
校舎の修理費はお嬢様のポケットマネーで出せるとはいえ、修理には時間がかかりますからね」
現在、アラカたちの高校は瓦礫の山となっていた。
そしてその状況から会議を重ねて、一つの結論に至った。
それこそが〝近所の高校の敷地借りてそこで授業〟という方針であった。
「それ、でも…憂鬱、だよ。
ストレス、ゲージも増え、てきちゃうよ……」
「ストレスゲージって……」
「ストレスは,適度に発散すべきだよ。
もし厳しくなったら、以前言った方法をね」
「うん…!」
アラカの言葉に頷くウェル…かわいかった。
「一応、ウェルの〝手紙〟で精神状態の、数値化も、できる、の。
それで、チェックも、できるの」
ストレスの量を測ることができれば、どの時にストレスを発散できるかの基準ができる。
それを思い付き、ウェルは一つの提案をして〝手紙〟を一枚取り出した。
「精神の鑑定、なら……精神支配系の異能、だから……〝接続〟」
魔法陣が浮かび上がり、それは一枚の魔力製の板へと変わる。
そしてその板にストレスゲージが記されて、数値化をされていく。
「面白そうですね、私にも見せてください」
アリヤも心理テストの上位互換のようなものに興味をそそられたのかウェルの後ろから鑑定結果をみる。
アラカ ストレスゲージ:94
アリヤ ストレスゲージ:11
ウェル ストレスゲージ:67
【数値基準】
1〜20 日常、ストレスは浅い
21〜39 イライラしてる。
40〜49 何かするレベル。
50〜69 軽犯罪を今すぐにでも起こす。
70〜89 衝動的に殺人事件を起こすレベル。受け答え一つで殺される可能性が高いので危険。
90〜100 衝動的に猟奇殺人事件を犯す。手遅れに近く、会話一つで問答無用に無差別殺人をします。
「「…………」」
「…? どうか、した?」
アラカ ストレスゲージ:94
————94。
「「(94!?!?)」」
衝動的に人肉を喰い千切り、ノコギリでそこら中の人間を刻んで切り刻んで殺し続ける。
そんな可能性を常に秘めている重度の爆弾。
「…ウェルちゃん、これってストレス値の変動とかで偶然上がった……とかない?」
「え……知らない……精神系の異能、専門じゃ、ないから…」
手紙を経由して使用した異能。
「スゥー。ちなみにウェルさんって……その〝手紙〟、どこまで出来るの?
言いたくないなら、言わなくていいけど」
話題転換とでもいうかのように、ウェルの能力へ話を振った。
「あんま、言いたくない……異能の情報、は……怪異の弱点、みたいなもの、だから」
ウェルの能力
〝手紙〟
手紙を経由してありとあらゆる異能を使用できる。
しかし威力が全て2/3である。
対人間や、怪異との戦闘以外では非常に有用。
尚、使用できない異能もある。
「はあ……でも、まあ……弱点はある、て、ことだよ……だから、その情報で、満足、して」
どうにか言い回して相手を詐欺るウェル。しっかりと拒絶しても大丈夫な相手ではあるが、念のためである。
「そろそろ、見えてきたよ」
そこへアラカが指を刺す。
指を刺した方角には女生徒が華やかに挨拶する学園が、たしかに写っていた。
「ですが学校が直るまで……近くのお嬢様校に通うことになるとは……」
「はー、金持ち、不快不快……」
あまりの嫌悪に、アラカはふと興味をそそられてウェルへと問いかけた。
「? ウェルは、どうしてああいう学校が嫌いなの…?」
「金持ちの、空気が、ただただ不快…………知り合いいそうで不快だし……」
ポツリと溢した言葉は紛れもなく本音であった。
そしてそこで、アラカはウェルの生前を思い出した。
「(ウェル……確か、元々、名家の養子……なんだっけ。
……流石に。ウェルの知り合いになんて出会うわけがない、か)」
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