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二十八話、裏の一幕

短いので、今日中に    もう一話     だします   なんとか

 その日の深夜、とあるビルの上でアラカの戦闘を眺めていた人がいた。

 四肢を再生させたアラカを思い出し、その一人————コードレスがポツリと呟いた。


「(羽化しましたか……)」


 コードレスは己の着けている義手と義足を見て——それを外して四肢を再生させた。


「そのようだね」

「…………」


 その背後で愉快そうに。嗜虐的な笑みを深めた黒衣の少女……怪異の元首魁がいた。


「……心を、勝手に読まないでください」

「ははは、すまんね。悪戯したくなったのだよ」


     さんはビルの手摺りに背を預け、目を閉じて風を感じる。


「しかし、あの子の歪みが表に出てきたな」

「……はい」


 菊池アラカ。その歪み切った価値観があった。

 そしてそれはコードレスも    さんも既に把握していた。


「何故あの子は、ああも〝外側から〟眺めているのだろうね。

 相手の勇気も、努力も、認めて、偉いと言って……その上で良くない欠点も上げて優しく理解をする」


 過去にアラカのジャージを破った子の勇気を認めた。

 テロリストの気持ちを汲んだ上で感謝を述べた。

 死想の歪んだ価値観を理解して手を差し伸べた。


「……まるで〝女神〟だよ。その視点全てがどうにも女神地味ている。

 アレは君の仕込みかね?」

「……………」


 女神————人間の遥か高みに視点が置かれている。

 その現象をもたらしたのはお前ではないか、と聞き返す    さんにコードレスは押し黙り。


「あの子は女神ではありません。

 ————あの子は天使です」


 それに対して、ポツリと零す。

 そしてその言葉は   さんの問いに対する首肯に他ならない。


     さんが笑みを微かに深める。


「天使、か。何をもって天使とした?」


「……可能性ですよ」


 長話になるだろう、とでも思ったのかコードレスは立ち上がり、自販機の方へ歩き出す。


「こんな話を知ってますか。

 ——宗教では神は完璧な存在だそうですよ」


 ちゃりん、ちゃりん。

 投げやりに伝え、自販機に硬貨を入れる。


「しかし神が完璧ならば、この世に憐れな存在はいない。

 皆が笑顔で無ければおかしい、道理が合わない。神が不幸な存在を生み出すわけがない」


 缶コーヒーを二つ買い……一つを    さんへ投げた。


「その時に奴らはこうしたそうです。

 ——そうだ、周りにいる天使の中の誰かが悪い事をしたに違いない」


 そうして一つの概念が生まれた。



「……堕天使、か」



 パシ……と缶コーヒーを受け取り……理解をした    さんが返した。


 かしゅ……と浅い音を立てて缶コーヒーを開ける。


「ありがと、だ」

「……どういたしまして、です」


 ……しばしの沈黙が流れる。

 そして重い口を先に開いたのは    さんだった。


「君はアラカくんをどうしたいのかな?」


「どう……とは」


 天使をモチーフにした存在に姿を変え、中身さえ変質させたという所業。

 しかしそれだけには限らない。


「君のしたことがあまりにも不可解なんだよ。

 その裏に見える真意、是非知りたい」


 愉快そうに笑んでいるのに、瞳の奥には狂気が潜んでいる。

 まるで悪魔が最上の供物を見つけたかのような視線を滲ませる。


「君があの子の噂が全て冤罪だと、そういう証拠を集めたこと。

 覚醒のための起爆剤(死想)の調整をしたこと。

 あの子の周囲の人間が、あの子を傷付けないように思考を調整したこと。

 ————あの子にペットの真似事をさせてること」


 その全ては、一体どこから来ている?

 と、悩ましげに問いかけて。


「なあ、これは俺の勘なのだが」


 缶コーヒーの口を傾けて、口を開いた。


「————君、生前にあの子と出会ってるだろ」

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