二十六話、怪異の胸
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感謝を込めて 今日中に、どうにかして もう一話 更新、します
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「〝我が加護を以て刻む〟
〝紡がれるは救済の鏖殺〟」
「!? な、にを……」
————寵愛の加護、それが確かな覚醒を魅せる。
それは本家をなぞらず、ただただアラカの属性を謳い上げる。
「〝我が身に募る憎悪の嘆きよ〟
〝全てが殺意で埋め尽くされる〟
〝前が見えない、殺意で瞳が潰れて塗れる〟」
善性を宿してしまった子に、これでもかというほどに痛みと傷を与えた。
その果てに辿り着いたもの、それこそが少女の属性。
「っ!? これ、は……加護!?」
瞬間、危険を感じた死想がバックステップで距離を取る。
周囲に悪意に満ちた……黒い魔力が漂い始める。
瓦礫が腐り、どろりと半液体状になって落ちる。
もし、死想が近くにいれば……と考えるだけでゾッとする。
「〝全てが惨めで滑稽ならば〟
〝何もいらない、総じて消えろ〟
〝全てを殺してしまいたい〟」
ドロリ、とアラカの肩が腐り落ちる。
腐り、腐り、腐って、腐る。
全てが死んでしまえ、という、どうしようもない破壊願望。
復讐をしたくて、殺意のままに暴れたくて、どうしようも無い悪意。
怒りことも、殺すことも、耐えることも、許すことも出来ないほどに追い詰められた少女は今、羽化をする。
「〝愚かで惨めな勇者を嗤え〟
————〝殺意の果てで、祝福を〟」
歪に過ぎる、悪意に満ちた愛情。
全てを殺したいという悪意の波と、気の狂うほどの善性。
どこまで行ってもそれは変わらず、アラカという少女は今。ある一つの答えへ辿り着いた。
「邪竜の君は悪意に嗤う」
アラカがまだ生きてるのはただの意地だ。
死は逃避でしかない、と自分を痛め続けている……その果てに起こしたこの覚醒。
それは紛れもなくアラカが掴み取ったものであり、左の瞳だけが真紅に染まり……その安定を示していた。
「……は……」
黒い魔力が収縮する。瓦礫の上で、べちゃりと落ちているアラカの上半身に収集され続けて————変化はすぐに起きた。
腕が再生を起こす。飛び出て地面に垂れていた大腸が、もう破片程度しか残っていない大腸が、足に、瞳に、焦げた手に。
「不死、の異能……ッ!!
そう、か……お前、か……!!」
アラカは身体の欠損を全て、修復せしめた。
——雨が止む。
彼女を祝福する様に、太陽の光がアラカの周囲に点々と差し込む。
「……うん。これで、また歩き出せる」
立ち上がり、己の腕を見る。
ぐー、とパーを繰り返して動くと知る。
「少しだけ、借りるね」
近くに落ちていた生徒の死体から、スカートを借りる。
「ブラウスの一部と、スカートに、素足なんて……少しだけ、変態っぽいかな」
ぽつり、と零すように呟く。
だが、すぐに死想を見て。
「————こ、ろ、してや゛る゛ーーーーッ!!」
殺意に満ちた瞳でエネルギーブレードを横凪に振る死想と相対した。
「私を見下すな、弱いのはお前だッ!!
傷付いた程度で何を、強者のフリしてんだ弱者ァ!!」
怒りに満ちた声で、激怒しながら、その覚醒を殺そうとする死想。
ただただ怒り狂い、ふざけるなふざけるなと叫び続けている。
自分の方が強いから、自分の方が上だから。
「ちょっとそれっぽくなった程度で、雑魚が雑魚なのは変わりないんだよォーーー!!
みんな、みんな、私を見るなァーーーッ!!」
過去最大の手紙を撒き散らしながら。周囲一帯へと広がる。
「私は強い私は強い私は強いィーーーー!!
私を土手で拾ったママは殺した!
養育費と喚いて犯すパパも殺した!!
後継者である事を盾に、私を、妊娠させたお兄様も、殺して、殺して、殺してやったんだよ!! あはははははは!!!」
雷鳴を
太陽を
爆発を。
ありとあらゆる呪具から、想像しゆる全ての破壊が溢れ出す。
死想の力とはこういうものだ。
————無限の異能。
手紙を通して、ありとあらゆる破壊の属性を宿す異能を放ち続ける力。
「強い、強い、強いんだよォーーーー!!
誰も、誰も私を傷付けられないんだ!! 私は強い、私は強い、私は、私、は……!!」
それを放ち、放ち、放ち。さながらアメリカのアクション映画のようなレーザーの網と、壊滅的な破壊を齎し続けた。
「妊娠、したら捨てられ、て……浮浪者、に……首を、絞められて、殺された……あんな、惨めな、ガキなんかじゃ……ないんだ……」
拳を握りしめ、心の底からの悪意を絞り出すように呟く。
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