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二十六話、怪異の胸

ありがとうございます……! 3名以上の方に評価を押していただきました……!



 感謝を込めて    今日中に、どうにかして   もう一話   更新、します

◆◆◆


「〝我が加護を以て刻む〟

   〝紡がれるは救済の鏖殺〟」


「!? な、にを……」


 ————寵愛の加護、それが確かな覚醒を魅せる。

 それは本家をなぞらず、ただただアラカの属性を謳い上げる。


「〝我が身に募る憎悪の嘆きよ〟

  〝全てが殺意で埋め尽くされる〟

   〝前が見えない、殺意で瞳が潰れて塗れる〟」


 善性を宿してしまった子に、これでもかというほどに痛みと傷を与えた。

 その果てに辿り着いたもの、それこそが少女の属性。


「っ!? これ、は……加護!?」

 瞬間、危険を感じた死想がバックステップで距離を取る。

 周囲に悪意に満ちた……黒い魔力が漂い始める。


 瓦礫が腐り、どろりと半液体状になって落ちる。

 もし、死想が近くにいれば……と考えるだけでゾッとする。


「〝全てが惨めで滑稽ならば〟

  〝何もいらない、総じて消えろ〟

   〝全てを殺してしまいたい〟」


 ドロリ、とアラカの肩が腐り落ちる。

 腐り、腐り、腐って、腐る。


 全てが死んでしまえ、という、どうしようもない破壊願望。

 復讐をしたくて、殺意のままに暴れたくて、どうしようも無い悪意。


 怒りことも、殺すことも、耐えることも、許すことも出来ないほどに追い詰められた少女は今、羽化をする。


「〝愚かで惨めな勇者を嗤え〟

  ————〝殺意の果てで、祝福を〟」


 歪に過ぎる、悪意に満ちた愛情。


 全てを殺したいという悪意の波と、気の狂うほどの善性。


 どこまで行ってもそれは変わらず、アラカという少女は今。ある一つの答えへ辿り着いた。


邪竜の君は悪意に嗤う(ファヴニール)


 アラカがまだ生きてるのはただの意地だ。

 死は逃避でしかない、と自分を痛め続けている……その果てに起こしたこの覚醒。


 それは紛れもなくアラカが掴み取ったものであり、左の瞳だけが真紅に染まり……その安定を示していた。


「……は……」


 黒い魔力が収縮する。瓦礫の上で、べちゃりと落ちているアラカの上半身に収集され続けて————変化はすぐに起きた。


 腕が再生を起こす。飛び出て地面に垂れていた大腸が、もう破片程度しか残っていない大腸が、足に、瞳に、焦げた手に。


「不死、の異能……ッ!!

 そう、か……お前、か……!!」


 アラカは身体の欠損を全て、修復せしめた。


 ——雨が止む。

 彼女を祝福する様に、太陽の光がアラカの周囲に点々と差し込む。


「……うん。これで、また歩き出せる」


 立ち上がり、己の腕を見る。

 ぐー、とパーを繰り返して動くと知る。


「少しだけ、借りるね」


 近くに落ちていた生徒の死体から、スカートを借りる。


「ブラウスの一部と、スカートに、素足なんて……少しだけ、変態っぽいかな」


 ぽつり、と零すように呟く。

 だが、すぐに死想を見て。


「————こ、ろ、してや゛る゛ーーーーッ!!」


 殺意に満ちた瞳でエネルギーブレードを横凪に振る死想と相対した。


「私を見下すな、弱いのはお前だッ!!

 傷付いた程度で何を、強者のフリしてんだ弱者ァ!!」


 怒りに満ちた声で、激怒しながら、その覚醒を殺そうとする死想。

 ただただ怒り狂い、ふざけるなふざけるなと叫び続けている。


 自分の方が強いから、自分の方が上だから。


「ちょっとそれっぽくなった程度で、雑魚が雑魚なのは変わりないんだよォーーー!!

 みんな、みんな、私を見るなァ(・・・・・・)ーーーッ!!」


 過去最大の手紙を撒き散らしながら。周囲一帯へと広がる。


「私は強い私は強い私は強いィーーーー!!

 私を土手で拾ったママは殺した!

 養育費と喚いて犯すパパも殺した!!

 後継者である事を盾に、私を、妊娠させたお兄様も、殺して、殺して、殺してやったんだよ!! あはははははは!!!」


 雷鳴を(手紙を)

 太陽を(手紙を)

 爆発を(手紙を)


 ありとあらゆる呪具(手紙)から、想像しゆる全ての破壊が溢れ出す。

 死想の力とはこういうものだ。


 ————無限の異能。

 手紙を通して、ありとあらゆる破壊の属性を宿す異能を放ち続ける力。


「強い、強い、強いんだよォーーーー!!

 誰も、誰も私を傷付けられないんだ!! 私は強い、私は強い、私は、私、は……!!」


 それを放ち、放ち、放ち。さながらアメリカのアクション映画のようなレーザーの網と、壊滅的な破壊を齎し続けた。


「妊娠、したら捨てられ、て……浮浪者、に……首を、絞められて、殺された……あんな、惨めな、ガキなんかじゃ……ないんだ……」


 拳を握りしめ、心の底からの悪意を絞り出すように呟く。

感想、ブクマ、評価、いいね。本当にありがとうございます…! 大変、モチベに繋がっております…

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