二十二話、限界の予兆。
短いため、もう一度ほど更新します
今日中に どうにか
◆◆◆
数分後、テロリストは投降することを決めて今、外へ向かっている。
それでも生徒を治療する気は毛頭ないのか、血液を流してる人間を捨てている。
「誰、か……たすけ、て」
「(治療しないと……死ぬ、か)」
治療道具、生徒。その二つを前にアラカはただ無言で生徒の応急処置を行っていた。
ストレスの負荷にも何とか耐えながら包帯などを巻き、器用に結ぶ。
「菊池、さん……ありがとう……ございます」
本当は治療などしたくないのだろう。当然だ、自分を傷付けた人間を治療するなんていう奉仕は、あまりにも屈辱的で、ストレスでどうにかなりそうな負荷があるはずだ。
その証拠に。
——ぽろ、ぽろ。
「ぁ…っ、はぁ……っ……はぁ………゛……」
瞳がどういう原理か、真紅に染まり、息が荒れたまま、涙を流しながら。必死に治療しているのだ。
「………………」
「菊池、さん……」
怒りでどうにかなりそうな様子のアラカへ、生徒が声をかける。
「…………」
「僕なんて、いい…から。菊池さん、の」
それはアラカが怒りで限界ギリギリの状態であることを知っている上での発言なのだろうか。
いいや、知るわけがない。知っていればこんな言葉が出てこない。
既に踏んでしまった地雷の様な手遅れな心境。ただ足を退けるという動作だけで起動してしまう爆弾。それが今のアラカである。
「…………静かに、してください」
「ッ…………ご、ごめ…ん……」
腹の奥底から絞り出した様な声は、ただひたすらに殺意と憤怒に満ちたものだった。
今にも殺されてしまうのではないか。と思えるほどに激怒に満ちた声だった。
「で、でも」
しかし諦めず、と声を出そうとする負傷生徒。それは余りにもアラカの心中を察さない行動であり、当然の様に〝理性と本心の一線〟を踏み越え。
「これは菊池さんのためを思って」
————貴方のためを思ってなのよ!!
————この痛いのは全部貴方が間違えた罰なの。わかる?
「————」
「っ!?!?」
バリィィィィィンッ!! 瞬間、学校中の窓ガラスが轟音とともに弾け壊れる。
黒雷の異能が全てを殺し尽くす、と学校中にヒビを入れる。
「ぁ……」
「っ!!」
無言で瞳に殺意を満たし、怒りのまま、腕を振り上げて。
「…………」
小さく、力なく……手を振り下ろした。アラカの目の前には顔面蒼白になって何も言えずに心の折れた生徒がいた。
「…………」
擦り切れる様な声で、
「…………ごめんなさい、弁償は…します」
泣きそうで、声を震わしたまま、近くの生徒に治療の道具を手渡して、アラカは酷く疲れた様子でその部屋を後にした。
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