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五話、墓デート

サブタイトル思いつかなくて…


 大通りから外れて車一台ほどの道に入り、途中で右折すると大きな坂道がある。



 その坂道を進むと、寂れた小さな神社と…その対岸に、目的地がある。



「ここでよかったのですか」

「…はい、ここです」



 アラカと綴は雨の中…傘をさして、その場所を見た。




 墓場、ここ数年で墓の数は本当に多くなった。



「探してるものが、あるんです。

 きっとそれが、私の失った記憶に、関係ある、はずなんです」



 墓の隣にあった家族経営の喫茶店は怪異によって一家惨殺され、今は取り壊されるのを待つ廃屋となっていた。




「……」

「……」




 手を繋いで、墓道を歩く。



「…」

「…」



 傘の中で、お墓を一つ一つ見ながら…ただ歩く。



「…」

「…」



 ふと…アラカは立ち止まり…綴の手をぎゅっと…握る。




「ごめん…なさい」

「なにを、謝るのですか」



 綴は平静を保った風を装いながら、問いかける。



「…」



 アラカは綴の手を離して…



「…」



 綴の胸に、ぎゅ,と抱きついた。



「…」



 アラカは綴の胸に縋りつくように顔を埋めて…



「無力で、無価値で、ごめんなさい」




 消えそうなか細い声で、謝罪の意味を口にした。



「気付いていないふりをさせてしまってごめんなさい、わたしは、わたしは」



 ____みつけ、られなかった。

 と、告げる姿に綴はアラカがなにを言いたいのか朧げながら把握した。




「私はあの時、あなたに、言った」



 ____……こ、こには…向き合う、ために、来ました……。


 それはアラカが、綴の監禁を保留した時に告げた言葉。





「わたしは、このまち、に、向き合うために、かえってきた、と告げました」

「はい、そうですね」



 ____終わったら…その時、続き、を……お願いします。


 そう、続けたあの日の約束を思い出して






「____なにに?(・・・・)




 その真実を口にした。



「向き合うっ、て____なにに(・・・)…?」



 アラカの瞳が、右だけ赤く染まる。



「なにに、向き合うの…? アレら(・・・)はどうしようもない人達でした、と結論が出てる…」



 涙が溢れ出す。ぐちゃぐちゃになった情緒が耐えきれずに溢れ出す。



「なにに、むきあうの…?」



 繰り返すように、怒りでぐちゃぐちゃになった情緒のまま、ポツリと呟く。



「…」




「____わからない癖にふざけたこと抜かすなッッッ!!!」




 雨が____振り続ける____



「わたしは、私はッ!!!」


____



「私、は」



____



「私は…っ!! 向き合うって、そう言ったのに…!!

 向き合う事柄さえ知らずに!! 何もかも忘れて…現実から、逃げ出したんだッ…!!」




 懺悔、そうとしか言いようがない言葉。

 アラカは濡れることも気にせず、膝をつき、綴に懺悔するように続けた。




「時間停止の加護を撒き散らした……。

 黒猫の加護を使った夢魔の加護を借りた氷結の加護に螺旋迷宮、次元狼に機械神アラハバキ千変万化風雷蠍座商人祭壇に鏖殺の加護っ!! ぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶ使った!

 なのに見つけられなかったっっ!!」




 ドンッッ!!! と、拳を地面に叩きつける。地面に拳サイズの陥没ができる。



 アラカは己の〝行使できる加護の欠片〟を全て使い続けた。


 その上でアラカは探している〝ナニカ〟を見つけられなかった。



「原因は、わかってる…」




 拳を強く、強く握りしめる。平に爪が食い込んで、血がポタポタと垂れる。



「____肝心の記憶が、抜け落ちてるからだ…」



 菊池アラカが壊れた真実。

 菊池には、その記憶に大きな欠損がある。



 元家族の〝姿が認識できない〟という呪いを抱えるほどの精神疾患…。



「何にも分からないくせにッ!!

 何もかも記憶から溢したくせにッ!!

 家族を殺すという決断すら出来ずに!!!!

 ()は何がしたいんだよ言ってみろよ!!!!!」




 腕に浮かんだ血管が、皮膚を突き破って弾け飛んだ。


 血液が今尚激怒に煮えたぎっていた。





「探さないと、いけない、さがさない、といけない、のに」



 まるで、何か…悪いことをしたと告白する子供のようで…



「私は、何かを確実に忘れている…何か、とても、忘れちゃいけない、ことを、忘れたんだ…っ!!」



 記憶が虫食いみたいに、ボロボロだ。

 


「ごめんなさい、ごめんなさい…っ…!! ごめんなさい、私はクズだ、わたしはごみだ、わたしは、わたしは、」



 瞳の奥にドス黒い赤が溢れ始める、言葉にできないただひたすら複雑な感情が渦巻く。



 膝立ちで綴の胸のシャツをグッと握る。





「私はなにを、わすれた…?」




 怒りで身体が震える。

 どうしようもない衝動に、今すぐ自分を殺したい。





「ヒントは最初からあったんだ…。

 認識阻害、五感に影響を及ぼすレベル精神障害、記憶の大部分の欠損…ぜんぶ、ぜんぶっ…!!」




 歯噛みする。歯を食いしばる。




「私は————何から逃げたの…?」




 向き合うことを思い出せず、並行世界からの使者の言葉で自覚するという不甲斐無さに、怒りが止まらない。






 血涙が、溢れ出す。


「私は…忘れちゃいけないことを忘れた……」




 アラカの片腕、片足の接合部が血みどろに染まり始める。




「忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない」



 身を捩り、震えだす。

 片目が潰れ、血涙が溢れる。





「ひとつ、ひとつ、おもいだした。

 そう、だ、このうで、うでは、うでは」



 腕が、付いてる箇所に強烈な違和感を覚えて、



「あの子にあげたものなのに……ッッッ!、

 どうして、どうしてここについている!?!?」



 その真実の断片を、一つだけ掴み。



「————返さないと」




 ぶち





「返さないと返さないと返さないと返さないと返さないと」





 ばき、ぱき、と何かが砕ける音が鳴り響き————アラカの心臓に、黒い剣が突き立てられる。



 ————黒く、黒く、想いが塗り潰れされる。




 殺意、悪意、敵意、嫉妬、衝動、ありとあらゆる黒い想いがぐちゃぐちゃに掻き混ぜられる。



「ぁ、  あ   ぁぁ、 」





 黒い魔力が渦としてアラカを包み、




「———— a





 気が狂うほどの慟哭。空間そのものを震撼させる産声があがる。



「~————■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!!」





 肉が血飛沫と、膨張と、破裂を繰り返しながら形成され続ける赤黒い〝血飛沫を撒き散らし続ける獣〟




 嗚呼、





 人は







 これを、




「あああああああああああああああああああざぁぁぁぁぁぁぁァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■゛■゛■゛■゛■゛■゛■゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!」




 ————英雄と呼んで、虐待し続けていたのか。


 暴走、暴走暴走暴走。



 ぶtっゆ、パァンッ、と、1秒ごと、イチコンマゴトに身体が壊れ再生し、壊れて再生を繰り返し続ける。



 破壊と再生で形状は歪に、ドス黒い魔力に覆われた身体は赤黒い〝人型の獣〟のような形状へと変化し始める。




「————————————————————————」




 音にすらならない絶死の咆哮、周囲一帯の空間を震わせ、大地がその異常極まる存在に帯電を繰り返す。




 近寄るだけで常人ならば感電死するだろう、それほどまでにこの存在は不安定で、世界に大きな大きなシミを残す。



「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!」







 デュリ゛ィィ゛ィ゛ィ゛ィィィィィッッッ!!!



「ぐっ、が、ぁっ……ッ」



 咆哮と同時に彼女の背から無数のエネルギーがビームのように、爆発し、鳴動を繰り返して周囲に莫大なる破壊を撒き散らし続ける。




 破壊、破壊、破壊、破壊、獣の背から溢れ出す大暴走と悍ましい域の光の放流。


 ありとあらゆる物質を破壊し続ける悪夢のような放流、だというのにその行動は〝周囲の物質を再生も同時にしている〟



 破壊した物質が次に瞬間には修正される。




 それはまるで、底の見えない地獄へと繋がる穴のような……悍ましさで。






 ————嗚呼、今日もまた————悪夢が始まる————

感想、ブクマ、評価、いいね。いつも本当にありがとうございます…! 大変、モチベに繋がっております…

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